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あの味この味 区切り

2013年2月1日

にこにこバラ園株式会社

ネット展開で全国に

顧客を持つバラ専門農家

 

 

伊丹雅昭 代表取締役

 

 

■豊かな生活を求めて就農

 

──バラ農家(にこにこバラ園農場)を始められたきっかけは?

 

伊丹 私も家内も同じ会社の研究職で働いていまして、家族そろってデンマークのコペンハーゲンに赴任したことがありました。そこでの生活は、みんな贅沢をしているわけではないのですが、すごく豊かなんです。それで、帰国しても、もうごみごみしているところは嫌だ、田舎に出たいと家内は話していましたね。

 

私も、どうしてデンマークはあんなに豊かなんだろうと思いました。1970年ごろは日本の方が食料自給率も、エネルギー自給率も高かったんですよ。しかし、赴任したころには、デンマークは北海油田を掘り当ててエネルギー自給率も100㌫になっていたし、食料自給率もいまでは300㌫ぐらいあるんですね。一次産業がしっかりしていると困らない。あとは贅沢しなければいいだけだから、こんなにゆっくりした生活をしているのかと。そこで、私も農業をしてみようと思ったんです。

 

いろいろな人に会って、話してみると、コメだと5町歩、野菜でも1町歩ぐらいは必要だよと言われました。花だったら2反歩もあれば…ということだったので、花にしようと思いましてね。当時、バラは日持ちしないからあまり輸入されていませんでした。そこでバラにしたのです。

 

場所をいろいろ探していた中で、(須賀川市)長沼のバラ農家さんで作り方を教えてくれるという方がいらっしゃったので、須賀川に来ました。半年間師事して、作り方を覚えました。

 

しかし、後に輸送技術が発達して、4割ぐらいは入ってくるようになりました。福島県にも40軒ぐらいのバラ農家がいたのですが、いまは5軒ぐらいになってしまいました。

 

 

──商売として成り立たせるのは困難な状況にある中、どのような手法で取り組んでいるのでしょうか。

 

伊丹 最初は、農家として須賀川に来ましたから、農協に出荷していました。ところが、私が就農した年が一番良かったころだったんですね。それから毎年、単価で10円ぐらいずつ下がっていって、いまでは当時の半額以下になっているんですよ。それで、皆さんやめていきました。

 

そこで、自分で売らなければいけないと思いまして、ウェブを作って、ネット販売を始めました。インターネットがそれほど普及していないころだったので、ウェブを見てもらえるように、ミニコミ誌に広告を載せて、少しずつお客さんがつくようになりました。個人売りを始めたのは平成11年ごろからです。平成20年ごろには農協出荷より個人売りの売り上げの方が多くなり、翌年からは100㌫個人売りになりました。

 

 

──須賀川で生産して、お客さんは全国にいるわけですね。ネットで御社を選んでもらうには、値段や新鮮さなど、特色を出していかなければならないと思いますが。

 

伊丹 値段はお安くしています。夏場は1日1000本ぐらい花が咲くのですが、冬場は100本ぐらいしか咲きません。しかし、夏場はあまり売れないけれど、冬場は売れるんです。当初、自分で作ったものだけを売ろうとしていたころは、冬に(注文を)断っていたんです。でも、一度断ったお客さんはもう来ないんですね。断らないためには、仕入れてでも売るということが必要になったんです。夏場は100㌫売り切りたいから、冬場は仕入れてでも売ると腹を決めたので、平成20年にこの販売会社を作りました。

 

また、私もバラを見続けて15年たちますので、バラの良し悪しが分かります。そこで、ちょっと悪いバラは全部、風呂屋に持っていくんです。鬼怒川温泉などで買ってもらいまして、バラ風呂は割と人気があるようですね。これはペイするかしないかぐらいのところですので、あまり大きくはやっていませんが、そのように〝下流〟も確保しているので、(ネットショップでは)日持ちするバラを出すことが出来るのは当社の特徴かと思います。

 

 

 

■個人の嗜好をつかみ丁寧な対応

 

──昨年12月、須賀川牡丹園そばに店舗をオープンしました。

 

伊丹 私が直接運んでいた近場のお客さんもありましたが、結構頼まれるようになり、大変になってきてしまったんです。また、農場でも売っているのですが、すごい山の中なので道に迷われる方が多く、「二度と行けないわ」と言われるものですから、マチ中に店舗を開いたら買いに来てくれると思いましてね。

 

しかし、個人売りは大変なんです。特に花は嗜好品です。その人の好みに合った状態で売らなければいけないんですよ。そこで、当社ではカードで顧客管理をしているのです。どうしてそうするようにしたかといえば、例えば色の好みですね。東京などでは紫や茶色のシック系が好まれるのですが、大阪にそれを送ると、「こんな腐った色いらんわ」と言われるんです。(笑)  明るい色が好きな人とか、バラといったら赤という人とか、全部、個人をカルテにしているんです。日持ちするのがいい人もいれば、とにかくパーティーに持っていくために使う人は、日持ちよりも花が開いている方がいいんですよ。そういうことも加味して送らなければいけないので、大変なんです。でも、それだけ気を遣っていますので、リピーターは多いですね。

 

 

──これからの抱負を。

 

伊丹 花屋さんの平均ロス率は30㌫もあるんです。30㌫は捨てているんですね。たくさんの種類の花を扱うとロス率は高くなるので、うちはバラだけ、それも最終的には風呂に出すということでロス率はものすごく低くなっています。ですから、割と安く出せるんです。

 

バラはいままで高過ぎたと思うんです。店で腐らせてしまうことも多いので、とにかく回転を良くして、お安く、丈夫なバラを楽しんでもらえるように、まずみんなにバラを覚えてもらうところから始めたいと思っています。最近ではお風呂に出すだけではなくて、小さなアレンジメントにしたり小さな花束にしたりして、イベントに出店の誘いがあれば、そこで売るようにしているんです。大概完売します。バラはある程度安くすると売れるんだなというのは感じています。(聞き手・渡辺利彦)

 

 

 

伊丹雅昭 代表取締役略歴

 

昭和35年2月15日、大阪市生まれ。大阪大学工学部造船学科及び発酵工学科を卒業。外資系酵素関連企業に入社。東京都、千葉県、デンマーク・コペンハーゲン市なとで勤務後、平成10年1月に移住した須賀川市で就農し、バラ農家に。家族は夫人と2男2女。

 

 

 

■企業 DATA

 

設立:平成20年12月

所在地:須賀川市東作57-8

事業内容:生花及び花束・アレンジメントの販売

資本金:800万円

年商:1,500万円

従業員:5人

http://www.nicobara.com

 

(財界ふくしま2013年2月号掲載)


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