世界初の
ミードワインを発売
佐藤利也代表取締役社長
■順調な出だしとなったミードワイン
――昨年11月、マスターソムリエの高野豊さんと開発を進めてきた「Meed&Wine(ミードワイン)」が完成し、県内では福島市の中合福島店で販売が始まりました。蜂蜜の醸造酒「ミード」と白ワインをブレンドしたミードワインの販売は、世界でも初めてということで話題を集めていますね。
佐藤 もともと当社では、平成20年からミード「AIZU MEAD・美禄の森」を販売していました。原料には会津特産の「栃の花の蜂蜜」を使用し、現在では大手百貨店や高級レストランなどを中心に、全体の売り上げの4分の1を占める主力商品の一つとなっています。
今回発売したミードワインは、このミードと長野県産のナイアガラ白ワインをブレンドさせたもので、ミードの甘さと白ワインの酸味がうまく調和したフレッシュな香りと味わいが特徴です。そのため、一般的に甘みのあるミードは食前酒や食後のデザートワインのような飲み方になりますが、ミードワインは食中でも飲まれている方が多いようです。
現在、小売りについてはイオンさんだけに納めており、イオングループである中合各店やイオン店で販売させて頂いています。お陰様で評判も良く、発売から1カ月余りで1500本以上を売り上げるなど順調な出だしとなっています。
また、小売りはイオングループの専売となっていますが、当社から直接販売するのはその限りではありませんので、会津の温泉旅館や料飲店などでも売り上げを伸ばしているところです。
――ミードワインを開発した経緯をお聞かせください。
佐藤 ミードワインの開発は、昨年6月ごろから進めてきました。共同開発した高野さんとは、当社がミードの販売を始めた時からの付き合いで、当時からミードのことを高く評価してくださっていました。
ミードについては、品質には自信を持っていたのですが、高級な原料を使用しているため値段も高く、なかなか一般消費にはつながっていませんでした。そこで、高野さんにリーズナブルな価格で広く飲んでもらうにはどうしたらいいかと相談したところ、「白ワインとブレンドしたらどうか」と言われ、早速、白ワインとブレンドしてみたら大変おいしく、これはいけると―。
お世辞かもしれませんが、高野さんも「この1年で飲んだワインの中で1番か2番目ぐらいおいしい」と後押して頂き、試行錯誤の末、昨年11月に世界初のミードワインが完成しました。高野さんにはワイン会社を紹介して頂き、また彼はイオングループのアルコール部門の顧問を務めていたことから、懸念だった流通についてもイオンさんと話を進めることが出来ました。
■“オール福島”のミードワインを目指す
――ミードワインの今後の展望は?
佐藤 世界的に見てもミード自体珍しく、いま製造している会社は国内で6社、海外でも500社ぐらいしかありません。ましてミードワインは世界でオンリーワンの商品ですので、もっと多くの皆さんに届けていきたいですね。そのため、値段は1本375㍉㍑・1080円と、ある程度の量を見込んでの価格設定にしています。いまはイオングループの全国10店舗ほどで販売していますが、もちろんイオンさんの考えもありますけど、当社としては取り扱い店舗が増えていくことを期待しているところです。
そのほか、次のステップとしては赤ワインとのブレンドも考えています。赤と白のミードワインがセットとなれば、贈答品としてもいいですよね。また、いま県内ではワインの産地化を目指す動きがありますので、地元のワイン醸造所と連携した〝オール福島〟のミードワインを世界に発信していければと考えています。
――長年にわたり普通酒をメーンにしていましたが、近年ではミードや特定名称酒に力を入れ、売り上げを順調に伸ばしていますね。
佐藤 当社は本家の大和錦から昭和17年に分家した酒蔵です。法人化したのは30年になりますが、大和錦の第2工場から始まり、大和錦は地元向け、当社では東京向けに普通酒を製造していた経緯から、当初お得意先は東京の小売店1つしかありませんでした。
ただ、日本酒全体の消費低下もそうですが、特に普通酒の需要は年々落ち込み、このままでは先細りになることは自明でした。そのため、高付加価値、高級酒の経営に移行しようと考えていた矢先に、ちょうど㈲ハニー松本養蜂舎(本社・会津若松市、松本吉弘社長)さんからミードの製造依頼を受けたんですね。お話を頂いたのは確か平成13年ごろだったと思いますが、当時は梅酒がはやっていた時でしたから、面白いからやってみようと。開発には7年ぐらい掛かりましたけど、飲んでみて「これで勝負出来る」と確信しましたね。
また日本酒については、息子(健信氏)からの提案で、これまでの普通酒から純米酒などの特定名称酒に移行することにしました。息子が帰ってきたのは平成22年ですから、特定名称酒に取り組むようになったのはかなり遅い方だったと思います。現在、ミードは私、特定名称酒は息子が担当していて、お互い口は出していません。(笑)
日本酒もここ最近、評価を頂いているようで、普通酒の売り上げが減った分、県内での特定名称酒の売り上げは増えており、割合は全体の4割弱ぐらいまで特定名称酒が占めるようになってきました。
――今後の抱負を。
佐藤 今回のミードワインを通じて、原料のミードはもちろん日本酒の方にもいい影響が出てくることを期待しており、将来的には特定名称酒とミード酒・ミードワインの2本柱でやっていきたいですね。
ミードについては現在、国内外から委託製造の依頼も来ており、これまでの蜂蜜の発酵技術を生かして、そちらの事業も展開出来ればと思っています。更に、今後の需要を考えればいまの施設では間に合いませんですので、タンクの増設を含めて増産体制を構築していければと考えています。
(聞き手・斎藤 翔)
■佐藤利也代表取締役社長略歴
昭和33年4月21日、会津若松市生まれ。会津高校を卒業後、専修大学に入学。61年に婿養子として信子夫人と結婚し、同社に入社。義父の先代・善久氏の下で酒造りを学びながら、平成2年2月に現職に就任。現在、喜多方市内で父と夫人、1女と4人暮らし。趣味はゴルフ。公職では(一社)日本ミード協会専務理事を務める。
■企業 DATA
創業:昭和17年
事業内容:清酒・その他の醸造酒の製造
資本金:500万円
従業員数:4人
http://minenoyuki.com/
(財界ふくしま2017年3月号掲載)