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あの味この味 区切り

2012年5月1日

東開工業株式会社

現場第一主義の精神で 創立50周年を迎える

 

伊藤賢一代表取締役社長

 

■長い歴史に裏打ちされた高い技術力

 

――創業の経緯をお願いします。

 

伊藤 当社は昭和37年に創立され今年で50周年を迎えます。前身は大正9年に創立され水門扉、鉄骨、科学容器、水力発電に使われる水圧鉄管などの製缶作業を行っていた㈱福島製作所です。戦時中は海軍省、軍需省の共同管理によって軍工場に指定され、時流に従い東北船渠㈱福島工場として造船にも携わっていました。船舶は小名浜や塩釜に運ばれていました。
昭和30年にいったん企業閉鎖をして別の会社に吸収されていた時期もありましたが、機材や図面などを引き継ぎ資本、経営陣を一新して創立したのが現在の東開工業です。社名は東開クレテック㈱さんと同様に、当時の佐藤善一郎県知事から「東を開く」という意味でつけて頂きました。
現在は、東北のみならず関東から甲信越に掛け幅広い範囲で営業活動を行っています。主な業務は橋梁や水門、水圧鉄管等の設計から開発、製造、据付け工事、メンテナンスで、新幹線の橋脚補修や騒音対策のトンネル緩衝口の延長工事も行っております。

 

以前は公共事業や東京電力、東北電力からの受注がメーンでしたが、新規開拓にも力を入れており5年ほど前からJR東日本の仕事が増えてきました。いまでは公共事業と電力会社とJR東日本の受注の割合は1:1:1ぐらいになっていますね。

 

――長い年月で培ってきた溶接技術は県内外から高い評価を受けています。

 

伊藤 ここ最近、県内の企業がアーク溶接部門と半自動溶接部門で競い合う「福島県溶接技術競技会」において最優秀賞である県知事賞を頂いております。また「全国溶接技術競技会」に県代表として出場し優良賞を受賞するなど、当社の溶接技術は福島県でもトップクラスだと思っています。

 

――いま団塊世代の退職によって技術の喪失が危ぶまれています。

 

伊藤 活力ある人材の育成の考えの下、新入社員向けの教育部門を立ち上げ、設計者であった平塚隆前社長やベテラン社員が週に数回、講習会を開いて指導を行うなど技術の継承に取り組んでいます。なぜこういうことを行うようになったのかと言いますと、当社では不況の煽りを受け経営に苦しんだため新入社員を採らない時期がありました。その結果、社員の高齢化が進み会社に大きなしわ寄せが来るようになったからです。

 

そのことを反省して、たとえ景気が悪く苦しくても1人、2人は必ず新規採用をする方針にしました。若い人がいなければ技術の継承は出来ませんからね。ここ最近は毎年、社員を採用しております。

 

――公共事業が激減して事業を閉鎖する会社が相次ぐなど、ここ10数年は厳しい時代が続きましたが、どのように乗り切ったのでしょうか。

 

伊藤 社員一丸となり、3、4年掛けて給料と経費の削減をしました。社員には本当に苦労を掛けたなと思います。更に大型設備を導入して省力化を行うなど仕事の効率化と技術力の向上を図りました。

 

また、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の認証をいち早く取得し、「環境負荷の低減」や「環境事故の未然防止」を掲げて、資源の効率的な利用やペーパーレス化、環境に悪影響を及ぼす塗料を使用しないなど環境に配慮した経営を推進しました。環境保全をするしないによってお客様の見方が全然違いますね。こういった取り組みはコスト削減にもつながり経営の健全化に大きく寄与しました。

 

努力をした甲斐もあり、厳しいコストを要求されても利益を上げられる体制になることが出来ました。私は平成22年に社長に就任しましたが、そのころには収益のバランスが良くなっていました。20年前の老朽化した設備の更新を進め、我々にとっては心臓部であるレーザー切断機の取り換えが3月15日に決まり、さあこれから頑張るぞと思っていた矢先に震災が起きてしまったんです。それからは復旧作業に従事するので精いっぱいでしたね。

 

■東開工業だからこそ出来た復旧作業

 

――震災時はどのような対応をしてきたのでしょうか。

 

伊藤 幸いながら社員や工場に損害はなく、当日から阿武隈川に架かった水道管やダムの水門に設置している除塵機、新幹線の復旧作業を行うことが出来ました。その後は浜通りや新潟県の発電所、7月に起きた新潟・福島豪雨の被害を受けた会津地方の水力発電所の復旧作業を行い電力不足の改善に努めました。平成19年に起きた岩手・宮城内陸地震の際に宮城県の栗駒ダムを復旧したのですが、その時の経験が生きましたね。あの時に修復した設備は今回の震災では被害を受けなかったため、復旧作業には自信を持って当たることが出来たんです。

 

また、津波により浜通り海岸線の水門は軒並み破壊されましたが、自衛隊の要請もあり、こちらの復旧作業も行いました。津波が襲来した際に水門を閉じてしまったため、行方不明者の捜索のためには水門を開ける必要があったんです。電源が喪失している中、20㌔圏内では防護服を着るなど厳しい環境で作業に当たりましたね。

 

――今後の展望をお願いします。

 

伊藤 いまも復旧作業は続いており24、25年度は震災と集中豪雨の復旧作業がメーンになるだろうと思います。とりわけ電力不足の解消が喫緊の課題ですので、当分は水力発電所の復旧に注力していく考えです。そのため工場をフル回転して東北電力関連の製造をしております。

 

福島第一原発事故があったため、今後は自然エネルギーの需要の増加が見込まれています。新しい事業として、いままでに培った経験を生かせる水力発電を考えております。いま市内の業者と連携をして新潟県に小水力発電(河川や用水路などを利用して行う発電)を造っている最中です。

 

私が営業をしていたころは海外展開を考えていましたが、今後は国内に特化した経営を展開して行こうと思います。技術と品質の向上を行い社会から信頼される会社を目指していきます。

       (聞き手・斎藤 翔)

 

伊藤賢一代表取締役社長略歴

 

昭和25年2月16日、二本松市生まれ。43年二本松工業高校卒業後、同社設計部に入社。営業・生産本部長、専務を経て、平成22年8月、現職に就任。二本松市内で夫人、息子夫婦、孫1人の5人暮らし。趣味は剣道で、スポーツ少年団を立ち上げ団長を務めている。座右の銘は「ステップ・バイ・ステップ(地道に一歩一歩)」。

 

企業 DATA

 

設立:昭和37年3月21日
所在地:福島市佐倉下字観音堂11-3
事業内容:金属製品製造業(橋梁、水圧鉄管、水門、
除塵機、各種クレーンなど)
資本金:1億5,000万円
従業員:122人
http://tokai-k.alpha-cubic.jp/

 

(財界ふくしま2012年5月号掲載)

 


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