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あの味この味 区切り

2013年12月1日

株式会社エル・ダイニング

本場パスタとの出会いが
生んだいわき飲食業界の雄

 

庄司秀夫代表

 

■本場の味に感動し飲食店を創業

 

庄司 いわき市で5店舗の地中海風レストランを経営しています。店舗ごとにイメージは多少違いますが、どの店舗でも様々な層のお客様に喜んで頂ける洋風食堂のような店づくりを心掛けています。

 

――創業の経緯についてお話し願いますか。

 

庄司 大学卒業後の昭和54年にいわき市で「赤いトマト」という洋食店を創業しましたが、飲食業を始める原点となったのは、大学時代に銀座のイタリア料理店で友人が調理をしていまして、そこでボンゴレ・ビアンコを食べたことなんですよ。当時はスパゲティといえばナポリタンやミートソースしかない時代でしたから、こんなにおいしいものがあるのかと衝撃を受けました。この本格派イタリアンの味を何としてでもいわきに持って帰ろうと思い、技術もないのに茹で上げパスタの店を始めてしまったんです。

 

――料理の修業などはされなかったんですか。

 

庄司 学生のアルバイトの延長上のようなもので本格的な修業はせずに、見よう見まねでやることになりました。当時のいわき市はイタリア料理の認識も薄いですし、茹で上げパスタの店も初めてだったと思います。それでも物珍しさからか、たくさんのお客様からご贔屓にして頂きましたし、現在でも常連様から「赤いトマトに行ったよ」というお話を聞くことがあります。当時から常に本格派の味を心掛けてメニューを作っていましたし、それが現在につながっているものだと思っています。

 

――創業から32年と長い間店舗経営をされてきましたが、飲食業のニーズの変化や不況など苦労された点は?

 

庄司 私の原点は学生時代のパスタとの出会いですが、思いだけでは事業を継続することは出来ません。味にこだわろうとするほど収益性の面で壁に打ち当ることもありました。振り返ってみれば山あり谷ありの経営者人生だったと思います。何度、会社をやめようと思ったか分かりません。ある時期、食べていくのが精一杯だった時も数年間続いて、本気で飲食店をやめて別の事業をしようと思い詰めていました。飲食店が今後伸びることはないと思い、次の事業に切り替えるため店を2か月ほど休んだことがあったんです。振り返ればこの時期が一番つらかったと思いますね。

 

そんな時、メヒコ創業者の徳永徳明さんに相談したことがあったんですが、「食は大事な分野だ。衣食住とあるように人間が一番消費するのは食の分野だから、もう少し頑張ってみないか」と言われたんです。当時のメヒコは売り上げ100億円を目指して頑張っておられた時期ですし、飲食業の先輩である徳永さんに励まされたこともあって、店名も「エル・トマ」に改めて飲食業を再開することになりました。あの時の助言がなければ現在の私はなかったと思います。

 

店舗がここまで拡大出来たのは守りの経営に入らなかったことが大きいですね。時代の流れの中で、消費者ニーズを感じた時に「これだ!」と感じて出店してきました。当然、身内は大反対でしたが、失敗を恐れず前に進んできたことが、接客や調理など様々な技術の革新をもたらし、現在のスタッフとの出会いを与えてくれました。一番のポイントは人との出会いを与えてくれたことですかね。先の徳永さんもそうですし、ワシントンホテルやラトブに出店する時も、これまで続けてきた本格派の味わいを評価して頂ける人の出会いがあったからこそ、現在に至るまでの成功につながっていると強く感じます。

 

――平成24年には事業化し、5店舗を統括する㈱エル・ダイニングを創業することになります。

 

庄司 パパママ・ストアのままでは、私が病気になると、店は閉店しなければなりません。店舗には設備投資をしてお金も人材も使っていますから、店舗を組織化しみんなで助け合う体制を構築出来たのは、わが社の強みだと思っています。それぞれのチームが役割をきちんと果たしてくれるからこそ、ここまで業態を拡大することが出来たのでしょうね。
食を通じて地域の活性化を図る

 

――一昨年の東日本大震災によっていわき市は甚大な被害を受けましたが、店舗の状況はいかがでしたか。

 

庄司 震災当時はラトブの店舗にいましたが、本当に大きな地震を体験しました。店内にはまだ多数のお客様が残っていたので安全に外まで誘導しまして、お客様の安否を確認したあとは、すべての店舗で従業員と家族の安否確認を行いました。地震直後は電話がつながらなかったので、すべての店舗で安否確認が出来るまではかなりの時間を必要としました。

 

震災から1~2カ月は本格的な営業は出来なかったんですが、店舗が再開すると急速にお客様が戻りまして、売り上げにして全体で2~3割、店舗によっては5割のアップを記録することが出来ました。これは相双地区から避難されている方が来店するようになったことが大きいですね。避難生活の中で外食することは、離れて暮らす仲間と会える機会でもありますし、またとない楽しみでもあるのだと思います。現在でも営業に関して若干ながら影響はありますね。

 

――今後の展望については?

 

庄司 いわきは現在、震災のバブルにより活性化していますが、3~4年後には人口減少により非常に厳しい状況を迎えるでしょう。いわき市では特に顕著ですが、高齢化が進行し、65歳以上が人口の2割以上を占める超高齢化社会の到来によって飲食業も新たなステップに入ることになると思っています。

 

高齢化により核家族化が進み、独居世帯の増加が予想されていますが、デリバリーや持ち帰りなどに目を向けていきたいですね。提供する食事の内容も、低カロリー・低たんぱくでバランスの取れた健康食品を提案していくことになるでしょう。これから飲食業は転換期を迎えることになりますが、食を通じて健康長寿社会を支え、豊かで元気な地域社会を支えるお手伝いをしていきたいですね。(聞き手・丹野 育)

 

庄司秀夫代表略歴

昭和31年1月25日、いわき市生まれ。小名浜高校を卒業後、関東学院大学経済学部経営学科に進学し、卒業後の54年にエル・トマの前身となる洋食店「赤いトマト」をいわき市に創業。その後、平成12年に鹿島町にラ・パセオを、14年にいわきワシントンホテル内にラ・パリージャを、22年にいわき駅前ラトブ内にラ・パパを出店し、25年に法人化し㈱エル・ダイニングを創業。現在はいわき市で夫人、1女との3人暮らし。座右の銘は「温故知新」。

 

■企業 DATA

 

設立:昭和54年

 

所在地:いわき市鹿島町久保2-2-8

 

事業内容:地中海風レストランの経営・管理

 

資本金:500万円

 

従業員数:21人

 

(財界ふくしま2013年12月号掲載)


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