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あの味この味 区切り

2013年6月1日

福島ミドリ安全株式会社

環境戦略と再生可能エネルギー商品の
組み合わせで福島の復興を担う

 

白石昇央代表取締役社長

 

■緊急防災型「熱電供給システム」を提案

 

──御社はオフィスユニフォームの提案企画制作などを手掛け、平成20年には国連認証排出権(CER)付きカーボン・オフセットユニフォームを国内初受注するなど、環境分野にも力を入れてきました。南相馬市で「新エネルギー活用市民交流センター」建設が始まりましたが、事業開発及び木質バイオマスボイラーとスターリングエンジンを一体化した環境機器の導入にも携われたそうですね。

 

白石 環境事業に取り組むに当たって、一番大事なのは3・11東日本大震災の教訓です。災害時、原発も火発も大規模な電源は喪失するわけです。南相馬市では老人介護施設が被害を受けました。電源が全部喪失して、雪が降ってきたが暖が取れない。

 

冷暖房、給湯、電気がなく、更に交通手段もなかった。南海トラフ巨大地震という、より大きな災害が想定されていますが、電源回復までには1カ月ぐらい掛かるという話もあります。避難民は分散されるわけですから、分散したところでエネルギーの自給が出来なければ全く体をなしません。そこでまず我々としては、どういう対応が出来るのか、どういうものがあったら災害が大きくならなかったのかを考え、何かしらの燃料を使って小規模・自立・分散型の再生可能エネルギー施設の多拠点化を事業開発の目標にしました。

 

──南相馬市の事業では、木質バイオマスボイラーを熱源としたスターリングエンジンを稼働させることで緊急災害時の施設冷暖房、給湯、緊急電源の確保を可能にします。

 

白石 木はエネルギーであるという概念をもう一度考えさせると同時に、実は、木質バイオマスと一番相性がいいのは熱供給なんです。日本は既得権益であるガス会社や電力会社に遠慮して熱利用はしないのですが、世界は熱利用が7割、発電が3割程度です。環境先進国のスイス、オーストリア、ドイツも、木質バイオマスボイラーで木を燃やして地域熱供給をしています。熱といえば冷房と暖房と給湯なんですね。これを私は高齢化社会の三種の神器だと思っています。福島県には2000もの介護関連施設がありますが、そこは高齢化社会の拠点であり、最低限の医療設備もある。高齢化社会で必要なものは、24時間一定の冷暖房、緊急災害時には電源ですよね。

 

当社では、地中熱と太陽光発電・太陽熱、木質バイオマス熱利用と太陽光発電・太陽熱など、環境と目的に合ったエネルギー源を組み合わせた熱電供給システムを提案します。再生可能エネルギーの一番のメリットは、CO2削減という面もありますが、それよりも、コストが安いことです。一方で、電力会社は電気料金を引き上げますと言うばかりで、一切下がらないですよね。エネルギーのコンセプトが壊れて、福島県が壊れたのに、被災地の復興に、同じように火力か原発かという流れには、「ちょっと待ってください」と言いたい。復興というのだから、ビジネスの契機となるものを考えていかなければならないでしょう。地域熱電供給は、誰もがエネルギーの生産者になれる。これは産業創出でもあるんですよ。

 

ヨーロッパの場合は、コミュニティーセンターで電気と熱が作れます。売って儲けるのではなくて、緊急災害時に使える、自給するという発想なんです。

 

■福島と高知を結ぶ「高知県観光特使」に就任

 

─御社は23年から、環境省の制定した県別オフセット・クレジット(J‐VER)制度高知県第1号に認定された森林吸収によりクレジットを生成し、間伐材の一部はバイオマス発電用に販売する「龍馬の森」の経営を高知県などと共同実施しています。今年3月には高知県観光特使に就任されたそうですね。

 

白石 映画『県庁おもてなし課』のモデルにもなった高知県の観光振興部おもてなし課の所属になるのですが、尾崎正直高知県知事がなぜ私を観光特使にしたのかというと、この「龍馬の森」の取り組みがあります。福島と高知で環境の新しいモデルを見学するという森を生かした観光、環境ツーリズムをやろうと。森を生かして緊急災害に対応していく取り組みを、観光特使として開発してくれという意味もあるようです。

 

──今後の事業開発目標は?

 

白石 地域エネルギー会社というものを考えています。小規模・自立・分散型の熱と電気を供給する組織を作ろうとしています。これが多拠点化されれは、経済コストが下がって防災力がアップする。これこそが復興被災地が行う再生可能エネルギーです。メガソーラーだけだったら、どこでやっても同じです。地元にお金が落ちる、これが絶対に復興のエネルギーモデルですよ。
 電力はPPS(特定規模電気事業者)、グリーンPPS、電力会社などへ全量買取制度のFIT価格で販売する「地産外商」ビジネス収益モデル事業として活用し、熱は「地産地商」ビジネス収益モデル事業として活用する。その上で、PPS、グリーンPPSを地域エネルギー会社に収斂させ、再生可能エネルギー事業全般のワンストップサービス事業を具現化したい。
 また、セシウム米の燃料米への転化にも取り組んでみたいですね。多収穫稲を原料とした水田耕作によるバイオ燃料の生成で、新潟で成功した事例があります。

 

川内村で田植えが可能な水田のうち、今年、実際にコメを作るのはその4分の1だけで、ほかは作っても売れないから様子見です。水田は1年放って置くと、荒れてしまいます。ですから、農業生産者をエネルギー生産者に変えようと。コメから日本酒が造れるように、コメをエタノールに変えて、それをガソリンに混ぜるんです。技術的には成功していて、実際に新潟県内の16のガソリンスタンドで販売されています。

 

農家のおじいちゃんおばあちゃんが、これから新しい商売をするのは難しい。ですが、燃料用のコメなら安い、害虫に強い、場合によっては二毛作も出来る。農業では儲からないけれども、収穫した時にはエネルギーを作っていることで収入になります。東北のエネルギーを被災地が売って賄う。技術的にはいけるので、私の事業マインドとしてはここまで進めていきたい。(聞き手・渡辺利彦)

 

白石昇央代表取締役社長略歴

 

昭和39年6月29日、宮城県白石市生まれ。知的財産修士、地域政策科学修士。東京理科大学大学院、福島大学大学院修了。63年、㈱フジタに入社。同社退社後、空手修行で渡米。平成5年に全米空手道選手権で優勝し、帰国後、福島ミドリ安全㈱に入社。常務取締役を経て、21年4月から現職。

 

 

■企業 DATA

 

設立:昭和45年7月7日

 

所在地:郡山市桑野4-1-22

 

事業内容:ユニフォーム・安全衛生用品・環境商品の企画販売

 

資本金:3,000万円

 

年商:16億9,000万円

 

従業員:37人

 

http://www.f-midorianzen.co.jp/

 

(財界ふくしま2013年6月号掲載)


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