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あの味この味 区切り

2015年1月1日

有限会社福島路ビール

地元の農家とタッグを組んだ
フルーツビールで販路拡大

 

吉田重男 代表取締役

 

■震災を機に経営体質を変える

 

――まずは会社設立の経緯からお聞かせください。

 

吉田 ここにあるビール工場は、もともと別の会社が平成9年にオープンさせたもので、私はその会社の担当役員として立ち上げの時から携わっていました。ちょうど3年前に地ビールの製造免許が解禁され、当時はブームの兆しが見え始めたころだったんですね。しかし、バブルなどの影響から数年後には事業の見直しが掛かってしまい、結果的に地ビール事業は売却することになり、そのため、ほかのところに手放すのであればと、平成15年に事業を譲り受けたのがいまの会社になります。

 

そこから新たなスタートを切ったわけですが、売り上げは思いのほか順調に伸びていきました。これは自社ブランドの「福島路ビール」の売り上げが伸びたというよりも、OEM生産(他社ブランドの委託製造)が大きかったですね。事業を譲り受けた直後に、たまたま東京のアグネスビール㈱さんからお誘いを頂き、タンクなどの製造設備を拡充させ、数年のうちに地ビール業界の中でもトップクラスの生産量に増やすことが出来ました。

 

――そこまで受注を増やすことが出来たのはなぜでしょうか?

 

吉田 品質にこだわったのはもちろんですが、一つはほかの地ビール会社と比べて「ピルスナー」タイプの製造が多かったことが上げられると思います。ピルスナーとは、皆さんも飲み慣れている世界的に主流なビールで需要もあるのですが、地ビール業界ではあまり多くは造られていないんですね。なぜかというと、エールなどほかの種類のビールでは一般的に2、3週間ほどで出来るのですが、ピルスナーの場合だとその倍の5週間ぐらい掛かるように、手間と時間を必要とするからなんです。

 

そのため、ピルスナービールの受注はどんどん増えいき、業績も伸びていったのですが、一方で危機感も抱くようになりました。OEM生産が売り上げ全体の7割を超え、事業の大部分を占めるようになっており、リスク分散のためにも自社ブランドを伸ばしていく必要があったからです。そのため、山形大の大学院に通ってマーケティングを一から勉強するなど、自社ブランドに注力していこうとしたのですが、その矢先に東日本大震災と福島第一原発事故が起きてしまいました。

 

懸念していことは、まさに現実となりました。幸い工場の被害は免れたのですが、風評被害の影響からOEM生産は3分の1にまで減少し、賠償金などで何とか経営を維持することは出来ましたけど、自社ブランドの売り上げを伸ばすことが急務となりました。ただ、これを機会に外に積極的に営業に出るようになり、これまで市内の旅館などを中心とした販売網が一気に広がることになりました。最初は復興支援のイベントから始まり、現在は東京を中心に全国各地に営業を行っており、そこをきっかけに新たな販売先が生まれています。いまの生産量は震災前の70㌫ぐらいですが、製造比率は逆転しており、自社ブランドが7割、OEM生産は3割ぐらいです。ですので、震災前と比べても自社ブランドの売り上げは倍近く伸びています。

 

■農家支援の一助となるフルーツビールを開発

 

――中でも、県産品の桃やリンゴを生かしたフルーツビールが好調のようですね。

 

吉田 フルーツビールは、最初は普通のビールを造る手順で進めていき、ある程度発酵させた後に果汁を入れています。飲みやすく、女性を中心に人気を頂いていて、最近では全体の売り上げの4分の1がフルーツビールですね。

 

きっかけは、ある復興支援のイベントで伊達の果樹園農家の方と一緒になったことでした。その方も風評被害で困っていて、「今回は売れたからいいけど、普段は全く売れず捨てている」と嘆いていました。中でも形が不ぞろいで贈答品にはならない、いわゆるB級品が動かないと聞き、それで果物を使ったフルーツビールを思い付きました。

 

当社のフルーツビールは、果汁の比率がほかのメーカーから比べても3、4倍ほど高いと思います。氷を多く入れるのが一番手っ取り早く安く済むのですが、それでは納得する味には出来ませんし、農家の応援にもなりません。果物は農家から直接、大口で仕入れており、そのことが安定供給にもつながっています。現在でも新たな商品開発に取り組んでおり、先日には希少価値の高い黄金桃を使ったフルーツビールが完成しました。来年(平成27年)の初めころには販売を開始出来ればと考えています。

 

――10月17日、御社のフルーツビールが東経連ビジネスセンター〈仙台市、会長・宇部文雄(一社)東北経済連合会副会長〉の「マーケティング・知的財産事業化支援事業」に採択されました。

 

吉田 当社の弱みはまさに販売力でした。私たちはフルーツビールも含めて一つの“ビール”という括りで商売をしていたのですが、東経連さんからは、普通のビールとは違うものを造っているのだから、売り方も当然違ってくるはずと言われたのですね。

 

東経連さんとは事業の採択を受ける1年ほど前からアドバイスを頂いていて、今後は経営指導や補助金を通じて販路拡大に力を入れていきたいと考えています。現在、当社ではイベントを通じた販売が多く、卸や酒販店の比率が低いのですが、イベントでの販売は人員などの関係から限度があります。先日、スーパーマーケットとの取り引きも始まりましたが、こういった販売ルートを広げていければと思います。また、当社ではほかの地ビール会社と違って直営のレストランを持っていませんが、レストランでのビールの売り上げは相当大きいものがあります。そういった意味でも、将来的なレストラン経営も含めてまだまだ伸びしろがあると思っています。

 

また、好調のフルーツビールですが、果物は季節ものであるため、現在は通年での販売は出来ていません。ユーザーが飲みたい時に提供出来るように、果汁の保管や冷凍技術の向上を図り、更なる販路拡大に努めていければと考えています。
(聞き手・斎藤 翔)

 

■吉田重男代表取締役略歴

 

昭和22年10月1日、福島市生まれ。明治大学工学部を卒業後、市内の製作会社を経て、建設会社へ転職。同社で地ビール事業の立ち上げから携わり、平成15年に独立した。現在、市内で夫人と2人暮らし。趣味は旅行。

 

■企業 DATA

 

創業:平成15年

 

所在地:福島市荒井字横塚3-182

 

事業内容:ビールの製造販売

 

資本金:300万円

 

従業員:11人

 

http://www.f-beer.com/

 

(財界ふくしま2015年1月号掲載)


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