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あの味この味 区切り

2018年4月1日

福島鈑金工業株式会社

社員の貢献意欲を芽生えさせ
利益率を上げていく

 

戸川政実代表取締役社長

 

■図面のないオーダー品が特色

 

――まずは事業内容からお聞かせください。

 

佐戸川 現在、当社では部品製造などのモノづくりをされている企業に向けて、品質や安全、環境を改善するための板金製品の製造と取り付け、それに付随した電気制御、省力化装置、集塵・局所排気装置などを提供しています。具体的には、ゴム製品を成形する設備のゴムカスを受けるためのステンレス製の受け皿や、加工中の製品を次の工程に移動させるための製品棚のほか、コンベアや研磨機用の安全カバーなどを手掛けています。

 

ただ、こういった製品を造るだけでしたら同業者はごまんといるのですが、中でも当社が得意としているのが大量生産ではない「図面のないオーダー」になります。「製品がスムーズに流れるように改造したい」「有機溶剤が漂うからどうにかしたい」といった困りごとに対して、現場に直接伺ってその工場に合った一品のオーダー品を図面作成から製作、取り付けに至るまでワンストップで提供したり、修理する。

 

皆さん同じ製品を造っているわけではありませんから設備も多種多様であるため、サイズや形状など、お客様の用途に合わせて製作していきます。こういった図面のない段階から細かいオーダーに対応出来るところは意外と少なく、お陰様でいまは県北地方を中心に、高速道路沿いには北は宮城県の古川市近辺から南は天栄村まで、大手メーカーや町工場など様々なお客様とお取り引きさせて頂いているところです。

 

――日本のモノづくりを支える部品製造業を更に下支える会社ということでしょうか。

 

佐戸川 そうなりますね。皆さん古い設備を毎年きれいにメンテナンスしながらギリギリまで使い倒して頑張っているように、この「改善」の繰り返しが日本のモノづくりの強みなんです。いわば当社はこういった皆さんの「改善」をお手伝いする御用聞きのような存在だと思います。

 

また、社員が定年退職しても設備だけは残るわけですから、逆にお客様の方から「使い方が分からないから教えて欲しい」といった要望もあります。長年にわたりお客様とともに歩んできたことで、たとえ古い設備であってもその使い方やメンテンスなどのノウハウが蓄積されており、それがほかにはない強みになっています。

 

■月次決算を社員すべてに公開する

 

――職務能力に加え、人間的な成長を目指した社員教育にも力を入れているそうですね。

 

佐戸川 我々はモノづくりで終わるのではなく、お客様の困りごとを引き受ける業種ですから、資格取得はもちろん、お客様に寄り添い一緒になって考えて提案が出来る、技術力と人間性の両面を兼ね備えた社員を必要としています。そのため、打ち合わせから金額交渉、実際の製造・取り付けまで、一貫して一人の社員がこなすことが出来る「技術者」の育成に力を入れており、同業者の方から時々「お宅の職人さんは―」と言われることがあるのですが、いつも私は「うちは技術者です」と言うようにしているんです。

 

もちろん一気通貫で仕事をこなすのは社員にとってみれば大変なことです。ただ、お客様にとってみれば最後まで同じ担当だった方が話もしやすいですし、お客様との関係も出来やすい。当社では必ず給料日には1人1冊、本を渡して感想文を書くようにお願いしています。やはり、最低限の教養がないことにはお客様との話も出来ませんからね。また、月1回の研修会を設け、中小企業の成功事例を取り上げたビデオを鑑賞し、そこから自社に何が取り入れられるのかグループディスカッションをするなど、一人ひとりが考えて行動出来る「人としての成長」を目指しているところです。

 

もう一つ、社員教育の取り組みとして行っているのが、月次決算と年次決算を社員すべてに公開していることです。営業だけだったり、モノをつくったりだけですと、その原価が正しいかどうか見えませんよね。当社の場合、社員全員が一つ製品をつくるのにどれぐらいの時間、お金が掛かるのかを意識して金額の交渉をしています。製品をきちんと納めるだけでなく、なおかつ適正な利益の確保までを一つの仕事としてやっているんです。

 

このように月次決算を公開するようになったのは、2008年9月に起きたリーマンショックがきっかけでした。その前年には過去最高の売り上げを記録するなど業績も好調だったのですが、リーマンショックによって一気に仕事がなくなり、4割まで売り上げが落ちてしまったんです。当然、賞与を出せる状況ではなかったのですが、社員の間で「こんなに頑張っているのになぜ出ないのか」と疑心暗鬼が生まれてしまい、理由が分からないまま年を越すわけにはいかなかった。それで、なぜ賞与が出せないのか、実際の数字をもって危機感を共有してもらうため、経理を公開することにしたんですよ。

 

結局、福利厚生や退職金の積み立て、給与がある中で、月の経費がどれぐらいあるか分かると、なまじ、お客様に言われたから金額を下げましたとはいかなくなります。また、お客様と交渉事をする際、実際の数字を知っていると、非常に説得力のある提案が出来るんです。

 

現在も受注に対して個別に原価計算していて、自分がどれぐらい会社に貢献しているのか分かるようにしています。このことで一人ひとり貢献意欲が芽生え、実際に利益率は上がるようになりましたし、更には副次的な効果として、社員から経営に対して「ここがおかしい」という提案を受けるようになって、会社全体の改善にもつながっているんですね。

 

――最後に今後の抱負を。

 

佐戸川 新規開拓というより、まずは既存のお客様のケアを徹底し、その都度、改善や修理の提案を行っていきたい。また、当社は依頼があってから製作する受注型産業なんですが、いずれは自社ブランドを手掛けたいですね。まだ構想段階なんですが、福島鈑金といったらこれだと言われるような製品を開発したいと考えています。(斎藤 翔)

 

■佐戸川政実代表取締役社長略歴

 

昭和39年8月11日、福島市生まれ。福島東高校から東北学院大学経済学部を卒業。東京都の設備工事会社での勤務を経て、平成3年11月に同社に入社した。営業部長、専務取締役などを経て18年に現職に就任。現在、市内で両親と夫人、1男と5人暮らし。趣味は読書とトイレ掃除。公職では中小企業家同友会で福島地区会長を務める。

 

 

■企業 DATA

 

設立:昭和37年9月

 

所在地:福島市森合字道端2-2

 

事業内容:各種板金製品・製缶類の製造、安全・省力化装置の製造、搬送装置の製作施工、空調・換気・排煙・局所廃棄等各種ダウト工事

 

従業員:8人

 

資本金:1,000万円

 

http://www.fuku-ban.co.jp/

 

(財界ふくしま2018年4月号掲載)

 

 


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