地域医療の相談役として
「かかりつけ薬局」を目指す
志賀 誠代表取締役
■調剤薬局が地域医療の一翼を担う時代
――まずは創業の経緯からお聞かせください。
志賀 2010年に創業した比較的新しい会社です。
私は事業を立ち上げる以前は、医薬品卸売会社で営業職をしていました。出身は石川町で、仕事は主に郡山市内で活動していましたので、起業の時も家族との生活面も考えて、長く親しんだ郡山を拠点にスタートすることにしました。
サラリーマン時代は、病院・薬局に医薬品を販売する仕事でしたが、いまは薬局で購入する逆の仕事になりましたね。(笑)
――御社の業務内容を改めてお聞かせください。
志賀 あすなろ調剤薬局の屋号で、郡山市の堤下と富田に2店舗の調剤薬局を展開してます。
皆さんもご経験があると思いますが、病院で診察を受けて処方箋をもらい、薬局で調剤して薬を受け取る体制が一般化しています。医薬分業と言われていますが、薬の部分でより患者さんと深い関係が築けるかが、これからの事業展開のポイントだと思います。
患者さんに薬をお渡しする業務は、どの薬局も業務は大差はない中で、まず不調があったら最初に相談する「かかりつけ医」のような「かかりつけ薬局」の役割を目指していければと思います。
具体的に言えば、薬の飲み合せのアドバイスや、処方通り患者さんが薬を服用しているかのチェックなど、時には家族背景に留意しながらきめ細かい医療相談を受けれるような関係です。
というのも、医療機関との連携強化の一環として、地域ネットワークでの情報共有・健康相談への対応など、かかりつけ薬局が地域医療の中で、大きな一翼を担うことを国が推進しています。
その状況の中で、患者さんに私たちの薬局を選んでもらうには、先ほど述べたような患者さんからの信頼のが大切だと思っています。
そんな信頼を積み重ねる中で、新規店もチャンスがあれば増やしたいと考えています。新規開業医さんとペアで、お互い強い連携がとれる体制で事業を進められれば、地域に欠かせない「かかりつけ薬局」になれるのではないかと思っています。
――会社の強みはどのような点だとお考えですか?
志賀 患者さんはもちろんそうですが、医療機関も含めコミュニケーションが大切な業種です。そんな周囲との連携を円滑に行い、薬局を支えてくれているスタッフには感謝しています。震災直後もガソリンや医薬品が滞る中でも、一日も臨時休業することなく営業出来たのはスタッフのお陰です。
小回りが利く小さな会社の特性を生かして、一日に短い時間しか働けない家庭を持つ主婦などでも、フレキシブルに働ける環境を模索しています。また、薬剤師さんと一口に言っても、病院勤務やドラッグストア、医療メーカーなど職場が違えば業務内容は大きく違います。私どもの薬局では、調剤薬局の未経験の薬剤師さんでも、働いて頂いています。業界全体が慢性的な薬剤師の人員不足ということもありますが、業務経験のある薬剤師さんはどの薬局も求める人材です。しかしそれだけでは、人材不足で地域医療は回りません。調剤薬局の未経験者やブランクがある方でも、経験を積めるような環境にしていかなけれぱいけないと考えています。自社の強みであり宝である人材が、より働きやすい環境を目指していきたいと思います。
■子供にエールを送る放課後等デイサービスを
――現在、力を入れておられる業務はありますか?
志賀 昨年7月から新事業として、放課後等デイサービスを郡山市内に開所しました。
起業家の先輩に「会社を運営するには3年に一度は新事業を始めないと業績は伸びない」とアドバイスをもらっていたので、ほぼ3年ごとに調剤薬局の店舗を増やし、昨年に新事業を始めました。
放課後等デイサービスという施設は、一般にはまだ聞き慣れない施設かもしれませんね。2012年の児童福祉法改正で、不足していた障害児自立支援施設を増やすために設置された、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が放課後や長期休暇に通うことの出来る施設です。
対象は障害のある児童ですが、障害者手帳などがなくても専門家の意見書などを提出し、施設利用の必要が認められれば、受給者証が自治体から発行されます。取得することで通所の申し込みが出来、1割負担でサービスを受けることが出来ます。
現在、郡山市には28施設の放課後等デイサービスがあります。その中でも私どもは比較的新しい施設だと思います。ご両親が共働きなど、お子さんのお世話をする時間が取れないご家族の需要は高まっています。
子供たちは、身体的な障害から自閉症など多岐に及びます。私どもの強みは、保育士を5人、施設に配置して個々の子供たちに合わせたきめ細かい対応や、カリキュラムを準備している点です。
ただ通所して時間を過すだけでは、地域での施設の存在意義も薄まってしまいます。業務では日々の準備がとても大切で、例えばご家族から「ボタンはめ」の練習をして欲しいと要望があった場合などには、目標に向かって、楽しく続けられるように工夫しながら準備します。保育士ならではの知恵と子供たちとのかかわり方は、プロだなぁといつも感心します。
始まったばかりの事業ですが、子供たちやご家族が、楽しく通えて何かしらの達成感を持ち帰れる施設運営をしてくれているスタッフには、感謝しています。
――最後に今後の抱負を。
志賀 調剤薬局も放課後等デイサービスも、利用される方といい関係を深めていくことは、事業の根幹として同じだと思います。
いままでもそうですが、一人ひとりに沿ったサービスを地域で積み重ねていきたいですね。(聞き手・江藤 純)
■志賀 誠代表取締役略歴
昭和42年2月26日生まれ。学法石川高校から東北福祉大学を卒業。医薬品卸売会社に就職後、営業職一筋として活躍。平成22年に㈱げんきカンパニーを創業し、現在に至る。郡山市内在住で夫人と1男1女の4人暮らし。趣味はゴルフと、甲子園へ行くほどの高校野球と、W杯を控えるラグビーなどのスポーツ観戦。
■企業 DATA
設立:平成22年
事業内容:保険調剤薬局、放課後等デイサービス「あすえーる」の運営
資本金:300万円
従業員:17人
(財界ふくしま2018年7月号掲載)