新たなモデル施設
「健院エルキューブ」を国内外に発信
橋本弘幸代表取締役
■介護離職、育児離職ゼロを目指す
──御社の業務内容は?
橋本 当社は医療機器や医療材料といった病院の医師や看護師が使用する商品を卸しており、買う側の購買代理を行っています。また、病院では日用品も含めて様々な商品が使用され、病院が行う医療提供以外のサポートとして、売店やカフェ、レストランの運営も行っています。更には、在宅介護の方への介護用品のレンタルや販売も行っており、医療機関では不得意な部分のサポートを行うことで、トータル的な医療機関の質の向上に寄与します。
ほかに、「健院エルキューブ(LCUB)」の運営を行っており、健康を維持するために、集合住宅、デイサービス、訪問看護・介護、フィットネス、レストラン、保育園などを備えた施設を、郡山市と三春町の2カ所で展開しています。
医療用具の製造・販売もしており、県内から世界に販売出来る医療用具を開発しようと、約10年を掛けて「安心ひつじ」を開発し、今年2月ごろの販売を予定しています。
──エルキューブの運営を開始した経緯は?
橋本 1985年ごろ、将来2025年に日本は高齢者人口がピークを迎え、寝たきり高齢者が580万人になると予想されていました。更に高齢化が進む中で、2012年には団塊の世代が65歳になり、それまでに様々な医療や介護システムの改革が必要だと考えたのです。そのような中、1989年に「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(ゴールドプラン)が策定され、1990年から1999年に掛けて介護施設を全国に整備しようという動きがありました。当時私は、2025年という40年先に580万人分もの施設を整備することはあり得ないだろうと思いました。寝たきりの方が増えてしまっては、介護費用が膨らんでしまうため、健康へのシフトチェンジをしなくてはいけなくなるなと思ったのです。
健康へのシフトチェンジに向けて、病気の院が「病院」であるならば、健康の院は「健院」ということで健院エルキューブをつくりました。エルキューブ(LCUB)は、Local Comunity Unitcare Businessとして、様々な地域に合った仕組みをつくる必要性があります。高齢化がいまより進んだ時に、若い世代に負担を強いらず、補助金や税金ではなく、地域でお金が回る仕組みをつくることが必要だと考え、「Business」が入っています。
高齢者全体で寝たきりになってしまう方は約17㌫、残り83㌫は健康な高齢者です。つまり、健康な高齢者を増やすことで、社会保障費を増額しなくとも全額を補償出来るようになります。人間はまず健康であることが幸せですから、「健院」という発想でどうやって健康に出来るかを考え、見直ししていく意味も込めているのです。そして、健康の要素を「運動」「栄養」「休養」「教養」と定義し、それぞれのプロフェッショナルが健康をサポートしています。
また、福祉施設の場合、入居者の家族が訪れて、顔を見せてすぐに帰るケースが多いです。ですが、エルキューブの集合住宅に入居された方は、医療・介護サービスを受けることが出来、リハビリや運動などを行い、健康な食事をとって頂きながら、なおかつご家族との楽しい食事の時間を提供し、福祉施設ではなかなか見ることのない、家族の団欒にもつながっています。食事も地域の農産物を活用して提供しています。
──どんな方たちが入居していますか?
橋本 老若男女問わず、誰でも入居することが可能です。介護が必要な方や一人暮らしが不安な方、リハビリをしっかり受けたい方、健康づくりをしたい方など様々です。保育園もありますので、中には、東日本大震災後に3世代で入られた方もいます。福祉施設で3世代が入居出来るのも特徴ではないでしょうか。
また日本には、在宅介護で離職する家族が年間約10万人おり、仕事を辞めてしまっては生涯賃金が減り、その後、再就職も困難な状況になりがちです。当施設では福祉施設としての機能に加え保育園もありますので、介護離職や育児離職のゼロの会社を目指しています。しかし、中にはどうしても在宅で家族の面倒を見たいという方もいますので、当社では、介護ヘルパーの養成事業も行っており、集合住宅に入って頂き、ほかのヘルパーさんたちと交代しながら介護を行い、収入も得ることが出来ます。
■健康状態を管理する「安心ひつじ」
──「安心ひつじ」の特徴を。
橋本 睡眠中の心拍、呼吸、体動、臨床の4つを一度に計測出来る機能を搭載した体動センサーです。マットレスなどの寝具の下に敷いておき、検知したデータはネットワークを介してパソコンやスマートフォンで見ることが出来ます。ほかにも室内の温度・湿度・照明・臭いの検知や音声による声掛けなどがオプション機能となっています。
今後は病院や介護施設、在宅介護、ホテル、集合住宅一人暮らしの高齢者などで利用が見込まれています。24時間のデータが蓄積され、健康状態を管理出来ますので、孤独死問題や独居老人対策にも効果を発揮することが出来ます。
──今後の展望を。
橋本 フランチャイズ形式での展開、更には、エルキューブのような施設を浸透、発展させていきたいと考えており、実際に国内外から見学に訪れています。世界にもあまり例がなく、海外からエルキューブや「安心ひつじ」を使った施設を展開するオファーも頂いています。将来的に、海外でもエルキューブのような施設が展開され、入居者が互いに行き来し、日本でも海外でもサービスが受けられることで、より楽しい生活が送れるようになればと思っています。
そして、エルキューブの存在を知って頂くことが何より大切ですので、認知して頂ける取り組みも展開していきます。また人間にとって睡眠がとても重要で、睡眠が健康のバロメーターと考えており、今後は、睡眠の充実を図る機器の開発を含めた取り組みを目指していこうと考えています。
(聞き手・作間信裕)
■橋本弘幸代表取締役略歴
企業 DATA
設立:昭和62年
所在地:郡山市富久山町八山田字前林10-4
事業内容:多機能型賃貸総合住宅の運営、体動センサー「安心ひつじ」の製造販売、福祉用具の販売・レンタルなど
資本金:7,150万円
従業員数:445人
http://www.nji.co.jp
(財界ふくしま2017年2月号掲載)