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あの味この味 区切り

2015年3月1日

株式会社会津ラボ

会津の地をシリコンバレーに

 

久田雅之代表取締役

 

■「人類のための知識の前進」

 

──平成19年に起業された理由は?

 

久田 私自身、平成5年に開学した会津大学の第一期生です。わが恩師であり、初代学長の國井利泰先生は、「会津の地にIT産業を盛り上げていき、最終的には会津にシリコンバレーをつくる」というような夢を語られていました。シリコンバレーにはたくさんのIT企業が存在し、有名大学の博士を持った人たちが、自らの研究の成果から新しいものを世に送り出し、それが受け入れられることで、会社が成功していくという流れがあります。そのモデルをこれから会津に立ち上げていくことで、会津にシリコンバレーをつくるんだという指導を受けた私は、自らの専門性を生かした会社を立ち上げたいと考え、起業に至ったわけです。

 

──沿革についてお願いします。

 

久田 大学院修了後に入社した東京のITベンチャー企業は、ネットワークのセキュリティーを扱っていました。その後、金沢工業大学工学部情報工学科でもネットワークやセキュリティー関連の研究をしており、当時、ウェブアプリを通して個人情報が抜かれてしまうといった問題が、多発していました。しかし、それを防ぐソフトウェアの年間ライセンスが高額なため、なかなか中小企業には使えませんでした。そこで自分自身の専門性を生かし、安価で誰もが使えるシステムを目指す㈱NSTラボ(当時)という研究開発型のベンチャー企業から始まりました。起業した翌年、リーマンショックなどの影響で投資環境が悪化し、当初計画していた資金調達が出来なくなり、継続するのが難しくなってしまったんです。その後、iPhoneが発売されたことで、軸足をスマートフォンのソフトウェア開発に移し現在に至ります。

 

──現在の社名には地元「会津」が入っていますね。

 

久田 スマートフォン向けのソフトウェアを開発するようになって社名を変更したわけですが、会津にあるコンピュータサイエンスを専門とする会津大学の代表という意味も込めまして、「会津」という看板を背負って、日本全国、更には世界に向かっていこうという意味で名付けました。

 

──久田社長自身の土台というのは、会津大にあるんですね。

 

久田 私が通っていた当時、周りにいた先生は、世界でもトップクラスの人たちばかりでした。世界のトップクラスの下で研究し発表するので、当時見ていた景色は、必然的に世界の舞台という環境でした。

 

それは、会津大を離れ社会に出たことでより強く感じたわけですが、それ以上に國井先生の夢であった未来の会津の姿のために、世界に向かっていかなければならないなと感じるようになったんです。

 

──経営理念を教えてください。

 

久田 会津大学建学の理念でもある「to Advance Knowledge for Humanity」(人類のための知識の前進)を掲げています。特に、「for Humanity」については國井先生がとても強調していたことです。それは約100年前に全米大学協会が「to Advance Knowledge」をスローガンとして掲げ、知識を前進させましたが、結果的に戦争の技術が生まれ、人や地球を壊してしまったんです。そのスローガンに「for Humanity」を入れることで、目的が変わるわけです。そのため、私たちは常に人のために、社会のために役に立つものを考えています。

 

■会津産IT技術認定大賞受賞
──御社が開発されたスマートフォン向け女子会調整アプリ「Apoli」は、平成25年度会津産IT技術に認定され、大賞も受賞されました。また、「ご当地観光指さしナビ」は24年度同技術奨励賞などの評価を受けていますね。

 

久田 会津産ITについてはあまり認識されていない面もありますが、会津大学発のITベンチャー企業は会津にとても多く、レベルが高いため、その競争の中で認めてもらえたことはとても光栄に思います。また、評価されたことをアピールしていくことで、会津ブランドを構築する一部になれればいいですね。

 

「Apoli」は、小学館と共同開発した女子会を開くためのアプリです。一般的にスマートフォンを使えば使うほど、外に出なくなり、人と会わなくなるといわれていますが、スマートフォンを使って人が会うためにと開発し、使いやすさを優先したアプリになっています。

 

──「指さしナビ」は県内14市町村、更には県外でも導入されていますね。

 

久田 もともとは、土地勘がない人にとって地図だけのナビというのは分かりづらいというところに着目しました。ナビというのは、方角と距離がはっきりすれば成立するため、いろいろな機能が詰め込まれている高機能なアプリが多いんです。しかしこのアプリは、逆に機能を削ぎ落とすことで、キャラクターが向いている方向に歩いていくだけの、非常に使いやすく、可能性を秘めたものだと思います。今後は、どこの自治体を訪れても「指さしナビ」があるというぐらい広めることで、観光のプラットホームを全国に作っていきたいです。

 

──会社としての将来展望は?

 

久田 昨年11月に、東証一部上場企業の日本エンタープライズ㈱の子会社となりました。当社が会津の中だけでやっていては、外部に対する力が持てず、日本全国、更には世界に向けた仕事が出来にくい環境にあります。また、これまで開発に重きを置いてきたため、営業をしてきませんでしたし、これからも考えていません。そんな時、成功している会社にバックサポートしてもらい力になってもらおうと、我々の技術を認めて頂き、応援してくれる会社にグループ入りしたわけです。これは、会津から世界に発信していくための準備だと思っていて、何かしようとする以上は自分たちだけでは絶対に出来ませんので、いろいろな協力が必要になっていくと考えています。

 

これはスタートラインだと思っていて、今後は更に会社を拡大させ、最終的には國井先生が言う「会津にシリコンバレーをつくる」の実現に向けて、これから世界を目指すことへ挑戦していきます。(聞き手・作間信裕)

 

■久田雅之代表取締役略歴

 

昭和49年12月9日、愛知県常滑市生まれ。会津大学の第一期生として入学し、平成9年、同大コンピュータ理工学部コンピュータソフトウェア学科を卒業。11年、同大大学院コンピュータ理工学研究科博士前期課程修了、14年、同科博士後期課程修了。その後、東京のIT企業の研究所に就職し、15年に金沢工業大学工学部情報工学科の講師に就く。19年、現在の会社を起業。現在は夫人、子供と3人暮らし。趣味は夏場はゴルフ、冬場はスキー。

 

■企業DATA

 

設立:平成19年1月

 

所在地:会津若松市インター西53

 

事業内容:スマートフォン向けアプリケーションの開発

 

資本金:2,950万円

 

従業員数:24人

 

http://www.aizulab.com

 

(財界ふくしま2015年3月号掲載)

 


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