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あの味この味 区切り

2018年10月1日

有限会社エスク(E.S.Q)

パイプの「少量多品種」製造で
医療分野に技術力をアピール

 

高畠伸幸 代表取締役

 

■難しい要望を引き受けることで実績を作る

 

――まずは創業の経緯からお聞かせください。

 

高畠 もともとは、テレビに内蔵されているブラウン管部品を製造する東京の工場に勤務していたのですが、工場が福島に移転することになって、一家でこちらに居を移しました。

 

工場では製造部と開発部の責任者を兼務していましたが、事業が転換されることになってしまいました。その機会に会社を退職して、いままで培った技術を基に現在の会社を立ち上げたのが創業に至る経緯です。最初は従業員4人からスタートしました。

 

――御社の業務をお聞かせください。

 

高畠 様々な素材や形状の金属パイプの製造です。直径0・2㍉以下の世界最小径とされるパイプや、ステンレスをはじめとして、チタンなどのレアメタルを使ったパイプも製造しています。

 

具体的に使用されている製品は、自動車のブレーキや内視鏡などの医療機器など使用されています。内視鏡では、国内大手3社(オリンパス、富士フイルム、HOYA)が、当社の部品を使って頂いています。

 

また、血管などを拡張する網目で筒状の機具「ステント」の素材も製造しています。取引先も、国内の自動車・医療メーカーだけでなく、ヨーロッパ、アジア、アメリカなど世界に広がっています。

 

――会社の強みはどうのような点だとお考えですか?

 

高畠 私たちは大手のパイプ屋さんが断っていた素材や加工の難しい仕事を請け負ってきました。そこで当社の技術を知ってもらい、本番の製品受注に結び付けてきたのです。

 

お客様から持ち込まれたご相談に、最初からお断りしたことはありませんね。(笑)求められているものを作り出すための試行錯誤が、私たちにしか出来ない技術の蓄積につながっていると考えています。

 

そうして出来上がったものに納得してくださった実績が、お客様がお客様を呼び、国内外へ広がりを作ってくれたのだと思います。

 

中国の工場へ技術指導のために呼ばれて現場を見せてもらいましたが、大量生産の面では、日本の製造業に到底勝ち目はないと感じました。

 

私たちの目指すべきものは、いかに高い技術を駆使して幅広い依頼に対応出来るか「少量多品種」で勝負するかが、ポイントだと痛切に感じました。

 

海外のお客様とのつながりは、県の後押しでドイツで開かれる世界最大の医療機器の展示会に出展したことがきっかけです。

 

国内では大手メーカーさんとの取り引きもあって当社への評価は理解していたのですが、海外での評価は未知数でした。ですから社員にも「社長の道楽で、出展を3年続けさせてくれ」と頭を下げましたよ。(笑)1回お顔を合わすだけじゃ、関係が築けませんからね。

 

最初はパンフレットも手作りでお恥ずかしい内容の展示でしたが、それでも県の共同ブースで名刺の獲得数は当社が一番でした。

 

医療分野でも使用出来る精密な加工で、素材分野を問わないパイプ製造を少量多品種で引き受け、おまけに切断など二次加工も出来るパイプ屋は「世界中探しても、お前たちぐらいだ」と海外からも評価を頂き、自信につながりました。

 

■卓越した技術を生かせる医療分野へ挑戦し続ける

 

――現在、力を入れておられる業務はありますか?

 

高畠 医療機器の部品に特に力を入れています。今年の売上全体では医療分野が、約7割を占めるほどに成長しています。

 

医療分野に力を入れるきっかけとしては、リーマンショックがありました。以前は自動車部品や半導体の部品を製造していましたが、納入の催促があった翌日に突然の出荷停止ですからね。驚きしかありませんでした。

 

そんな苦い経験の中で分析してみると、医療分野は景気に左右されず一定の需要が求められていることが分かりました。そこから5カ年計画で、医用分野の売上を50㌫増にする目標を打ち出しました。

 

社員に言っていたのは「医療分野で飯を買って、おかずはほかの分野で買おう。おかずは特上ウナギになる時もあれば、生卵かもしれない」と。(笑)

 

もちろん、医療分野以外も私たちには大切な仕事です。お客様に求められる物を実現させる過程が大切なのです。もちろん失敗もあります。その中から当社だけしか持ち得ない大切な経験が生み出されると思っています。

 

私たちは、特段高額な精密加工機を使っているわけではありません。各従業員の経験や工夫が当社の財産なんです。多品種を扱うことは、私たちの強みを研鑽出来る貴重な機会なのです。

 

――最後に今後の抱負を。

 

高畠 これからも当社の強みになっている医療分野の開拓を更に進めて、海外でも当社を知ってもらいたいですね。

 

社員には「提示した値段が通るようにしよう」と言っています。私たちの技術が世界に唯一なら、それは可能ですよね。日本の製造業の生き残る道は、町工場の職人さんのような経験の中で磨かれた技術にあると思います。

 

私たちの世代にも責任があると思いますが、製造業はあまりにもマニュアル化され過ぎて「非認知能力」(人間として生きていく力)を育てることが出来ない環境になってしまっていると感じています。私が現場で働いていた若手の時に、職人さんの技術を機械化する過渡期の最後を経験出来たことは、とても幸運でしたし、人としても成長させてもらいました。そんな経験を若い技術者にも、体験出来る場があればいいと思います。

 

先ほど当社の製品例に挙げたステントも、人体に時間を掛けて同化する負担の少ないマグネシウムの機具が、海外で臨床実験されています。そんな医療が進化し続ける中だからこそ、ますます日本の職人が培った技術への需要が、海外でも高まると思っています。(聞き手・江藤 純)

 

■高畠伸幸代表取締役略歴

 

昭和34年2月13日、東京都生まれ。埼玉県立浦和工業高校卒業後、25歳でパイプ製造会社に勤務、製造部兼技術部の責任者の立場でパイプ製造のエキスパートとして辣腕を振るう。会社の事業転換を機に退職し、平成12年に㈲エスクを創業、現在に至る。西郷村在住で夫人と1男2女の5人暮らし。趣味はエレキギター。好きな音楽はハードロック。ストレス発散も兼ねて自宅やスタジオを借りて演奏する。

 

■企業 DATA

 

設立:平成12年

 

所在地:西白河郡矢吹町一本木162-3

 

事業内容:精密細管(電子・医療部品)の製造及び2次加工

 

資本金:1300万円

 

http://www.e-s-q.jp/

 

(財界ふくしま2018年10月号掲載)

 

 

 

 


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