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あの味この味 区切り

2017年9月4日

アシスト株式会社

“人ありき”の経営理念で
急成長を遂げる

 

大友弘之代表取締役

 

■長年安心して働ける警備会社を起業

 

――まずは事業内容からお聞かせください。

 

大友 交通誘導やイベント警備、施設警備などの総合警備業をメーンに、震災後は除染作業や地盤改良工事も請け負っています。現在は福島と仙台、郡山、会津若松、いわき、南相馬にある各事業所を拠点に営業を行っており、今年6月には宇都宮と東京にも事業所を登記したところです。

 

当社の強みは、各事業所の連携を生かした機動力のある応援体制を築いていることだと思います。業務管理をシステム化したことで、どの事業所がどれぐらいの稼働率なのか瞬時に分かる。そのため、仮に会津で突発的な依頼があっても、近隣の事業所から時間のロスなく隊員を確保することが可能になっているんです。

 

また、もう一つの強みとしては、お祭りなどの比較的大きなイベントの際、移動型AEDをサービスの一環として持ち込むようにしていることでしょうか。警備会社がAEDとそれを使える隊員を派遣することは、業界内でも珍しい取り組みだと思います。イベント主催者の中にはAEDを自ら用意するのが大変な方も多いので、我々のAEDを含めた警備サービスはお客様からも評価を頂いていますね。

 

――会社設立の経緯は?

 

大友 当社は平成21年、仙台で設立しました。もともと私は、18年まで仙台で牛タン屋などの飲食店を経営していたのですが、狂牛病問題の影響から業績が悪化したため店を畳む羽目になったんですね。もちろん、新しく何か起業しようとは思っていたのですが、当面はどこかで資金を稼がなければならず、それで足を踏み入れたのが警備業界だったんですよ。

 

ただ、福島県内のある警備会社に就職してはみたものの、労働環境が悪い上、ガソリン代は実費負担、雇用保険も入れないというところでして…。それで、最初は警備業には興味がなかったのですが、夢のある警備会社をつくろうと思って独立したのがいまの会社なんです。

 

――人の出入りが激しい業界の中、御社では特に福利厚生や給料面の充実に力を入れているそうですね。

 

大友 例えば、あるところでは所長クラスでも朝は7時出勤、夜は9時退勤で給料が月額25万円ほど。これでは将来設計を築くことが出来ず、安心して働けませんよね。

 

また、先ほど出入りが激しい業界と言われましたけど、中には人を使い捨てている会社もあるんですよ。ひどいケースでは、40歳ぐらいまで一生懸命働いても給料が高くなった途端、急な異動を命じられる。その時はもう家庭を持ってマイホームを持っているわけですので、安い給料の中では二重生活が出来ない。それで会社の命令に従うことが出来ず、辞めざるを得なくなるんです。

 

ですから、私がいま何を目指しているのかといえば、社員が安心して骨を埋められる会社です。これは決してきれいごとではなく、“人ありき”の警備業だからこそ、この業界でやっていけると思ったんです。

 

価格競争になれば我々のような小さい会社は立ち行かなくなるので、おのずとサービス面での勝負になる。そのサービスの根本となるのが、隊員一人ひとりの能力です。そのためには隊員教育に力を入れるとともに、社員待遇を良くし優秀な人材を確保しなければならならない。当社では異動はほとんどさせませんし、長く安心して働いてもらえるよう、こども手当をはじめ充実した福利厚生、給料体制を構築してきました。

 

昨年から新卒者の募集を始めたように、ようやく親御さんから見ても安心して子供を預けられる会社、独立した時の経営理念に近付いてきたのかなと思っています。

 

■地盤を固めつつ関東圏の進出を図る

 

大友 ただ設立当時は、資金がかつかつで大変でした。営業に行くにもガソリン代がなくて頭を悩ましたこともありましたね。(笑)

 

ようやく軌道に乗ったのが2年目に入ってから。前の会社にいた時から独立する気でいましたので、進んで営業先を回っては人脈作りに勤しんでいました。そのため、会社設立は仙台でしたけど、顧客に忘れられないうちに再び県内に戻って仕事を取っていったんですよ。また、社員の待遇面を改善したことで、前の会社にいたメンバーを中心に多くの人が会社に集まるようになったため、事業所を矢継ぎ早に立ち上げていくことが出来ました。

 

ただ、県内に各事業所はつくったものの、いわば種を蒔いている段階でしたので売り上げは寂しいものでしたよ。業績が安定し始めたのは震災後からで、復興事業により警備業務の仕事が急激に増えたほか、除染作業の下請けや地盤改良工事を手掛けるようになりました。現在は各事業所でも利益が出るようになり、県内の地盤強化を進めるとともに、更にそこから関東圏への進出を伺っているところです。

 

――今後の展望を伺います。

 

大友 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロや犯罪を未然に防止することが出来る監視カメラシステムの需要増加が見込まれています。そのため、当社でも監視カメラシステムの事業を手掛けていこうと考えており、先日、東京に事業所を設けたのもそのためです。

 

本業の警備業については、日本社会全体で人口減少が進む中、人材確保が一つのカギになると考えています。そのため、高齢者とともに、いま注目しているのが女性なんです。警備業界というと、どうしても男社会のイメージがありますからね。今後は労働環境の改善に努め、更にはシングルマザーが働きやすいようシフトの幅を広げたりと、女性がより活躍出来る会社を目指していきたいと考えています。

 

また、現在は太陽光発電機器の売電と施工メンテナンスを行っているところですが、将来的にはバイオマス発電への参入も考えています。このように、今後も警備業以外のところでも、情勢を読みタイミングを見極めながら様々な事業を展開していければと思っています。(聞き手・斎藤 翔)

 

 

 

■大友弘之代表取締役略歴

昭和45年11月16日、宮城県生まれ。高校中退後、板前、ダンサー、運送ドライバーなどを経て、平成12年に仙台市で牛タン屋を開業。18年に店を畳んだあと、福島県内の警備会社に勤務し、その後21年3月に独立した。現在、郡山市もに在住。趣味はキャンプ。

 

 

 

企業 DATA

 

設立:平成21年3月

 

所在地:福島市成川字仲ノ内10-1

 

事業内容:総合警備業、地盤改良工事、一般土木、除染事業、太陽光発電の設置・施工・管理。メンテナンス、塗装

 

資本金:5,000万円

 

従業員数:320人

 

http://www.assist-z.com

 

(財界ふくしま2017年9月号掲載)


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