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あの味この味 区切り

2016年9月5日

株式会社GNS

生産から飲食まで
一気通貫のモデルを確立する

 

廣田裕介 代表取締役

 

■自然食のエゴマに注目し、業績を拡大

 

――まずは業務内容から。
廣田 当社はエゴマをはじめとした食用油や穀物加工品の製造販売、製粉事業の3つを柱としています。基本的にすべての商品は有機栽培や無農薬・無化学肥料の農産物を原料としており、添加物は一切使用せず、昔ながらの伝統製法で作っているのが強みです。現在は東京の市場から全国に流通させるとともに、地元の道の駅やオンラインショップなどでの販売を行っており、業務用と小売りの割合は3:7ぐらいとなっています。

 

――御社で手掛ける、食の安全と健康、国産100㌫をコンセプトとした「たなつもの」ブランドが評判を集めています。

 

廣田 私は二本松市東和町でそばや米を取り扱う㈲木羽屋製粉の次男に生まれましたが、家業は兄が継ぐため、平成17年に同じ穀物の分野で新しい会社を立ち上げたのがいまの会社です。その際、もともと飲食業に興味を持っていたので、その母体となる「作る」ところから、「作る」といっても工場からではなく、畑に入って種を蒔くところから始めようと、「種のもの」という意味の「たなつもの」ブランドを立ち上げました。
まず始めたのは、自分の畑を持つとともに地元・東和町の農家と一緒に「阿武隈山麓グリーンファーム」という生産組合を設立したことでした。そして、食用油ではエゴマや菜種、穀物加工では五穀米の生産から始め、出来た農産物はすべて買い取るようにしたんです。やはり、生産者にとってモチベーションになるのは売れることですから、当社では消費者ニーズを生産者に伝え、契約する時に価格まで提示し、必ずお金を支払う仕組みをつくりました。我々の業態は、生産者が安定していなければ継続することは出来ません。そのため、バイヤーさんを生産現場に連れてきて生産者との関係を築くなど、買い手と作り手、我々加工業者との連携に一番力を入れることにしたんです。
農産物の中では、特に福島の特産品であるエゴマに力を入れましたね。エゴマはようやくここ数年でブームになりましたが、当時は全然認知度がなく、あまり売れなかった。ただ、エゴマに豊富に含まれているオメガ3脂肪酸は、血液中の脂質濃度を下げる働きに優れており、当時、欧米では大きな市場となっていました。ですので、日本でもいずれ健康ブームが来て、エゴマの需要が大きくなるという確信を持っていたんです。最初の数年は大変でしたが、徐々に自然食品として注目が集まり、平成22年には供給が足りないぐらいにまで需要が増え、設立当時3人だった組合員も200人を超えるにまで成長することが出来ました。
――原発事故の影響は?
廣田 自然食業界は特に健康リスクに敏感ですから、原発事故の影響は非常に大きく、売り上げは4割まで落ち込み、それに合わせて組合員も激減しました。それからは自分の会社もそうですが、福島の農と食をどう回復していくのか、頭はそればっかりでしたね。
ただ、放射線に汚染されたのは事実でしたので、流通させるにはまず科学的数値しかないと考え、検査機械を導入しすべての商品を検査することにしました。また、基準についても日本より厳しいウクライナ基準を指標とし、科学的な検査結果をウェブ上で公開してデータの見える化を実施するなど、安全性を立証する体制づくりに取り組みました。

 

■福島県産の飲食店で食と農を発信する

 

――原発事故後、地産地消をコンセプトとした飲食店や小売店をオープンしていますが、福島県産の安全性に懸念があった中、あえて店舗展開を進めたのは?
廣田 農業再生といっても、まずは県民が地元の農産物を消費しないことには根本的な解決にはつながりません。そこで「食べる」という観点から、地産地消の「たなつもの食堂」や「中華蕎麦こばや」などの飲食店、地元農家の農産物や自社商品を置いた小売り店「たなつもの屋」をオープンすることにしたんです。食材のほとんどは本県産のものを使用しており、店舗で料理として提供しながら地産地消と自然食の情報発信を目指しています。お陰様で売り上げは順調に伸びており、当社の理念が徐々に広まっていると感じています。
また、昨年11月にはドライ食品に着目した3つの新ブランドを立ち上げました。和食をイメージした「七右ヱ門」、洋食をイメージした「TANATSUMONO DINING」、福島の未来を切り拓くという思いから命名した「福島拓景」です。
「福島拓景」では地産地消の市場を開拓することを目指しています。商品には県産品を使用し、ドライフルーツ・野菜や桑の茶などの商品に鶴ヶ城やハワイアンズなどの県内名所のラベルを添え、今年7月から販売を始めました。現在は物産館やお土産などで取り扱っており、まだ始まったばかりですが、評判は上々ですね。このブランドを通して地元はもとより、県外、世界に向けて福島の食と農を発信していきたい。当面は1000万円の売り上げを目指し、いずれは事業の柱にしていければと考えています。
――最後に今後の抱負を。
廣田 これまで地元向けの展開に力を入れていきましたが、ここに来てようやく軌道に乗りつつあります。今後は首都圏にも展開出来ればと考えており、来年には東京に本県産の食材を使う飲食店を出したいと思います。また、新ブランドの流通もこれからですので、地元だけではなく、徐々に首都圏にも広げていければいいですね。
6次化商品は、作ることは出来ても流通に乗せることが難しい。売るためにはどうしたらいいのか、作り手側ももっと考えていかなければなりません。私は、原発事故に遭ったからこそ、生産・加工・流通・末端食を一気通貫した形で出来るモデルケースを確立したいと思っています。生産者が安定的な収入を得られれば後継者不足の解決にもつながります。そして当社の商品、飲食店を通じて福島のイメージを少しずつ変えていければと思っています。(聞き手・斎藤 翔)
 

 

 

廣田裕介代表取締役略歴

 

昭和53年10月31日、二本松市(旧東和町)生まれ。福島東高校、日本大学文理学部を卒業。東京都で参議院議員の私設秘書を務めたのち、福島市内のビルメンテナンス会社に勤務。平成17年に㈱GNSを設立し、25年から飲食店経営の㈱たなつもの代表取締役を務めている。趣味は食べ歩き。

 

 

■企業 DATA

 

創業:平成17年2月

 

所在地:二本松市安達ヶ原5丁目254-12

 

事業内容:食用油脂製造販売、穀物加工販売、自然調味料類販売、マクロビオティック・オーガニック商品製造販売

 

資本金:1,000万円

 

従業員数:22人

 

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(財界ふくしま2016年9月号掲載)


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