信頼と技術で
地域の環境保全を担える会社に
梅宮吉男 代表取締役
■業界の社会的地位向上に尽力し勲章受章
──平成25年秋の叙勲で旭日単光章を受章されました。感想をお願いします。
梅宮 昭和61年から県産業廃棄物協会の理事を務めていますが、もう最古参になってしまいました。しかし、まだまだこの業界での受章は少ないんですね。今回の叙勲は、私の生涯の中で一番うれしいことです。しかしそれ以上に、世の中にこの業界が認められたという証でもありますから、そのことの方がうれしいですね。
廃棄物処理業は川下の産業から、川上の産業へ鞍替えしなければいけません。我々は大量生産・大量消費社会の最終工程を担ってきたわけですが、資源循環型社会の中で、我々の業務は最終工程から最初の工程になる。廃棄物処理業から再生リサイクル業へとシフトしているということです。私たちの市民生活も含めて、社会スキームの中で廃棄物の循環・再生は、一日もおざなりに出来ない重要なテーマになっていることは間違いありません。
──創業は昭和53年、個人事業として始められたそうですね。
梅宮 40年前の創業時から比べれば、社会背景も変わっているし、当時は県に業務の申請をしても商売になるのは郡山といわきぐらいだろうともいわれていました。しかし、当時から通産官僚は日本の廃棄物を熱量換算して原子力発電3基分ありますというレポートを出していました。
当社のように廃棄物の収集運搬をやるために会社を設立したというのは少ないんです。建設現場から廃棄物が出るから、廃棄物処理法上、建設業者が収集運搬の許可を持たなければならなくて…といったところが多く、専業は少ないんです。
──御社の特色は?
梅宮 建設系とかオイル類とか、特化しているところも多いのですが、地方ではそれがなかなか難しい。スーパーとか病院とかコンビニなど一般廃棄物の事業系もやりながら、産業廃棄物も、どの種類もやれますよと。管理は大変です。しかし、それを全部やらなければ商売として成り立たないわけです。地方都市の難しさというか、量が少ないための難しさというかね。
──スタッフ一人ひとりの能力が高くなければ、様々な種類に対応することは出来ませんね。
梅宮 管理部門の困難度は高いと思いますね。統一化、基準化、標準化が難しい産業であることは間違いありません。現実的に環境に負荷を掛けない、お客も納得、業者も納得という方法としてどれをとるかというのは、一件ごとに検討していくしかないと思うんですね。ですから、私どもは、一社ごとに、一品目ごとに、どれが一番フィットするのか標準ルールを作っています。しかし、それでも安心は出来ない。一つのルールを作って、繰り返し反復して、定期的に検査をして、安全を維持していかなくてはいけません。
業界の置かれている立場が、世の中の求めているものにフィットしなければ産業として成り立ちません。商売とは、需要と供給がフィットすれば存続するわけですが、我々は世の中に何を提案すべきなのか。法的にも、循環型社会形成推進基本法まで出来て、大枠は出来たわけです。我々は排出者の立場に立つのか、業者の立場に立つのか、社会の立場に立つのか、地球の立場に立つのか。やはり、自然に負担を掛けないということをメーンに考えることが私たち業者の立場だと思います。きれいな空気と水と緑を後世に残さなければならないという使命感がなければ、ビジネスだけではやれない商売になってきたと思いますね。
──循環型社会の構築には、住民の意識の高さも必要ですね。
梅宮 人間は悲しい動物ですから、捨てるのが当たり前の生活をすれば、もう戻れません。時間が掛かると思うかもしれませんが、手っ取り早いのは、小中学生からの教育に取り入れることです。子供たちが循環型社会は当たり前と認識すれば、親も「そういうものか」となると思います。その当たり前が出来て初めて、私たちの出番ですよ。当たり前の品質をどう上げるか、継続性をどうするか、実務の中から新しい技術や新しい方法が出てきて、品質向上につながっていくと思うんですね。
■社会的使命感を持って地域一番店に
──ほかの産業に比べれば、業界としての歴史はまだ長いものではありません。
梅宮 私としてはまだまだ未熟な業界だと思います。社会的使命感を持って覚悟を決めて、それだけの熱意を持って、確実に業界を育成するんだ、社会的地位の向上、資質の向上のための取り組みをほかの業界の何倍もやって、世の中にしっかりした立ち位置を作るんだということは、おざなりに出来ないと思います。今後、循環業になるのか、再生業になるのか、業界そのものも変わるかもしれません。しかし、評価するのは、私ども以外の方です。
11月に千葉県野田市の廃油精製工場で爆発事故が起きました。たぶんガソリンが入ったのでしょう。そういうことが起きると、話が振り出し以下になってしまうんですね。安全操業と、確実に世の中に貢献出来るんだという誇りと、両方を提供出来なければいけません。黙々と仕事をして、金儲けが出来れば一人前という産業ではないことを、特に経営者は分からなければいけません。
廃棄物処理は、日本全部で統一規格を作ることは難しいと思うんです。各県単位ぐらいでしょうかね。廃棄物を使って、生ごみからメタンを発生させて、メタン発電で電気を作る、メタンを水素に変えてクリーンエネルギーを作る、そういった技術は確立されているわけです。エリアごとにそういうものをやっていくのであれば、日本の再構築に貢献するかもしれません。そのためにはいい人材がしっかり育って、産業として世の中にしっかり宣言出来る位置を目指さなければいけないと思います。
──御社の将来展望、抱負を。
梅宮 やはり、目指すのは地域一番店です。「ビルド商事さんなら」と、どなたにも言って頂ける、信頼される会社でありたいですね。技術も信用も伴う、地域の環境保全をしっかり担える会社が、目指すところだと思います。 (聞き手・渡辺利彦)
■梅宮吉男代表取締役略歴
昭和16年8月5日、西白河郡泉崎村生まれ。53年10月に同社を創業。56年4月に個人営業から法人組織に改組、ビルド商事㈱を設立し、現職に就任。公職では福島県産業廃棄物協会理事、同白河方部地域協議会長、白河地方リサイクルセンター専務理事などを務めている。平成22年に環境大臣表彰を受賞、25年に旭日単光章を受章。
■企業 DATA
創業:昭和53年10月
所在地:西白河郡西郷村大字米字連平13-13
事業内容:一般廃棄物及び産業廃棄物の収集運搬及び処理処分に関する事業ほか
資本金:1,000万円
従業員数:39人
(財界ふくしま2014年2月号掲載)