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あの味この味 区切り

2012年10月1日

有賀醸造合資会社

時代を見据えた酒蔵経営で
幻の「虎マッコリ」を醸造

 

有賀義裕 代表社員社長

 

■日本人に合うマッコリを開発

 

──創業は江戸末期だそうですね。

 

有賀 私で10代目になります。それ以前は釜子地区の庄屋であったことは間違いないのですが、(越後高田藩の)御用商人として、酒造りを命じられたのが始まりです。

 

かつては新潟や岩手から杜氏さんが来て仕込んでいたのですが、当社は早くから地元の杜氏さんにシフトを変えました。その後、地元の杜氏さんもリタイヤしたいということから、いまは結構多くなっていますけれども事業主が杜氏を務める体制を、30年近く前から始めました。またその時代に、酒造りが始まれば半年間は休みなくやらなければいけないという従来のシステムを、何とか工夫して日曜日は完全に休みにしました。

 

──そのような改革は、どのような考えから?

 

有賀 自分も休みたかったからですけど(笑)、私のおふくろなり、かみさんなりが三度三度の賄いを作らなければならないのは大変なことでしたので、何とか解決しょうと考えましてね。

 

また、最近といってももう20年ぐらいになりますが、マッコリを手掛けたことは一番大きいですね。きっかけは、上野あたりを歩いていて、韓国料理屋でマッコリを飲ませてもらったのです。非常においしくて、アルコールはそんなに高くはなく、発酵してプチプチとしていて酸味もあって、要するにごくごく飲めたのです。こういうものを日本酒でも出来ないかと考えていたところ、取引先から「韓国にマッコリという酒があって、日本の醸造元でも造れないか」というオファーがありまして。

 

ようやく安定した製品に仕上がったのが7、8年前。それまでは試行錯誤の連続でしたが、お陰様で「虎マッコリ」は看板商品になり、全体の売り上げの8割以上がマッコリに変わりましたね。

──「虎マッコリ」の特徴は?

 

有賀 原料がコメだけで、余分な添加物は一切使っていません。それから、完全な生で流通されているのが大きな特徴ですね。生で流通させることに関しては、加熱殺菌して酵母菌の発酵を止めれば日持ちもしますし、品質も安定するんです。しかし、飲み比べるとまるっきり違うお酒じゃないかと思われるぐらい、生の方がおいしい。そこで虎マッコリに関しては、代理店を通して料飲店などから事前に注文を頂きます。11時ごろパソコンに注文が入ってきて、その日に詰めてその日に出荷して、次の日にお客さんのところにクール便で届くという形をとっています。

 

生のマッコリをコメだけで日本の蔵元が造っているということは、ほかの酒類との差別化になっています。メディア関係も飛び付いて、一番最初の取材はNHKでした。影響はかなり大きかったですね。決して仕掛けたわけではありませんが、代理店のやり方が「ブランドを作ろう」ということで、問い合わせはたくさんあるのですが、やたらとは卸していなかったことから、逆にブランド化されて広まっていったところはありますかね。

 

──製品化まで長い時間が掛かりましたが、確信があったのでしょうか。

 

有賀 韓国にも何回か行って見てきましたし、日本に輸入されているマッコリもいろいろ飲んでいますけれども、どうしても甘みが強く、飲み飽きしてしまう。そこで、うちはコメだけで造って甘みは極力押さえると。販売店などからは「これではダメだ。もっと甘くしてください」と何度も言われましたけれども、頑なに「それでは絶対日本人には合わないから、いまのスタイルで行きましょう」と守りましたね。

 

うちのマッコリはアルコール度数8・5㌫で出荷しているのですが、いまの消費者の趣向は低アルコールになっていますよね。焼酎やハイボールなどは、氷を入れて水で割ると大体8㌫ぐらいのアルコール度数になり、飲んでいてもそんなに二日酔いすることはない。それが頭にあったので、これからは間違いなく低アルコールだよということと、自然の発酵の炭酸が中に含まれていますので発泡性がある炭酸系飲料でもある。低アルコールで炭酸飲料、これは若い人が取っ付きやすいだろうという思いがあって、将来的にも受けるのではないかと取り組んできました。

 

■「体験出来る酒蔵」が旧来の経営システムを変革

 

 

──東日本大震災の影響は?

 

有賀 風評は大きいですよね。昨年はマッコリの数量も落ちましたし、贈答品もかなり打撃を受けました。致し方ないなという思いはありましたが。

 

──一方で、地元農家の復興の役に立ちたいという思いから、冷やした夏野菜に合う夏限定の生酒を造られましたね。
有賀 7年ほど前、新しく社屋を建てた際に、酒造りが体験出来る酒蔵として小さい仕込みが出来る設備を設けました。一升瓶で200本前後しか出来ない設備ですが、逆に〝夏場に、しぼりたて〟といった非常に珍しい限定のお酒を製造販売出来るようにもなりました。ホームページにも体験出来る酒蔵と載せていますので、東京の旅行エージェントの方からの問い合わせも多くて、昨年よりは観光客も増えています。

 

もともと日本酒は、冬場に造って加熱殺菌して寝かせて、秋口から出荷していく。お金になるのは次の年ぐらいにならないと…という資金繰り的には足の長い商売なんです。ところが、マッコリに関しても2カ月ぐらいで出回りますし、体験酒蔵にしても、生でしぼりたての状態で皆さんの手元に行きますから、足が早い。資金回収が非常に早く、回転がいいですから、経営的にも楽になるという面もありますね。

──今後の夢や目標は?

有賀 マッコリばかりではなくて、別な商品も考えて、国内の消費は限られていますから、海外への輸出を考えた販売先の開発をしていかなければと考えています。販売先はやはり、コメ文化の中国を中心に東南アジアでしょうね。

 

マッコリについても、6次化商品など新しいタイプのものを考えているところです。その場合は、加熱殺菌して、スーパーなどにも置いてもらえるようなものにしたいなと思っています。(聞き手・渡辺利彦)

 

有賀義裕代表社員社長略歴

 

昭和28年9月12日、白河市(旧・東村)生まれ。白河高校から玉川大学農学部を卒業。広島県で2年間の修業後、帰郷し家業に就く。夫人、母、長男夫婦と孫2人、次男の8人暮らし。趣味は、1日4㌔ほどのウオーキング。

 

■企業 DATA

 

創業:安永3年(1774年)
所在地:白河市東釜子字本町96
事業内容:日本酒製造販売
資本金:300万円
年商:1億800万円
従業員:9人
http://arinokawa.net/

 

(財界ふくしま2012年10月号掲載)

 


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