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あの味この味 区切り

2012年2月1日

三春工業株式会社

改善する力を育て 高品質のオイルシールを生産

増子博保代表取締役社長

 

■積極的受注で信頼を得る

 

──創業の経緯から。

 

増子 自動車産業が成長する中で、オイルシールを供給する日本オイルシール工業㈱(現・NOK㈱)も業績を伸ばしていきました。そこで、工場を新設する際、コスト面からも地方に造って、農家をやりながら工場にも勤務出来るような形を考えたようです。三春町にNOKに勤めていた方がいらして、当社の国分佐市初代社長の奥さんの実家に「NOKの資本が入ってオイルシールを作る工場を造るのだが、地元に(工場経営する)誰かいないか」と話を持ってきたそうです。「いまは農家をやっているけれども、優秀な若者がいるよ」という話になって、国分が工場を始めることになりました。昭和48年5月にNOKの衛星企業として設立し、10月から操業しました。

 

その後、NOKの業績が伸びるのと一緒に、当社も工場を増築しながら大きくなって、更に白沢村(現・本宮市)にも工場を造りました。

 

──オイルシールとは?

 

増子 機械には必ず金属同士が接触しながら動く部分がありますから、それがスムーズに動くためには潤滑油が必要です。その潤滑油が漏れない働きをするのがオイルシールです。あらゆる機械に使われていますが、自動車関係のボリュームが圧倒的に大きいですね。NOK自体、オイルシールの国内シェアが75㌫ほどで、すべての自動車メーカーに入っています。世界的にも、もともとNOKに技術を提供したドイツのフロイデンベルグ社がありまして、フロイデンベルグ・NOKグループで世界シェアの50㌫といわれています。

 

また、トナーシールも手掛けていまして、キヤノンやリコーなどのプリンタやコピー機に入っているトナーが漏れないようにするものです。

 

──取引先は、NOKのみですか。

 

増子 直接仕事をもらっているのは、NOKだけです。製品をNOKに納めて、NOKを通じて自動車メーカー、家電メーカー、建設機械メーカーなどで使って頂いています。

 

──間もなく創業40周年を迎えますが、転機となった出来事などは?

 

増子 基本的にはどんどん需要が伸びていった会社です。NOKの需要が伸びて、衛星企業がもう仕事を受け切れないという中で、当社は同じように苦しい状況の中でも、品目を引き受けていきました。東北地区の衛星企業の中では一番早く、売り上げが大きくなった企業です。バブルがはじけたあたりから、落ち込んだ時期もありましたが、そういう時でも、「ほかの企業は断ったのを三春工業さんは断らなかったからね」と、NOKから仕事がもらえました。積極的に仕事を受け入れてきたことが当社の強みだと思います。

 

──当然、受け入れてもそれに応えられなければダメですから、そのための努力をされたわけですね。

 

増子 当社には、小さな改善を積み重ねていく力があると思っています。もらった当時は、すぐに黒字にはならない品目もあるんです。でも、それを自分たちの努力で改善して、生産性を上げて黒字にしていく。当社のような受注会社は、徹底的にコストを下げる、あるいは品質を良くすることが出来なければなりません。

 

──その改善力を培っていくためには、社員の意識が大切でしょう。

 

増子 成功体験があると改善が面白くなるんですね。問題解決出来るような人材を育てていくために、問題解決の手順を身に付けてもらうよう取り組んでいます。

 

まず、問題意識がないと問題も発見出来ません。第一段階は問題を見付ける力です。見付けたら暫定措置をする。次に、例えば何でA号機とB号機で不適合率(不良率)が違うのか、原因究明をする。原因が分かれば、解決は何とか出来るんです。原因を究明するポイントは、正常なものと異常なものを比較して違いを見付けることです。これを徹底的に話をしています。人が違う、機械が違う、材料がおかしいのではないか、方法が違うのではないか―。徹底して違いを見付ければ、必ず原因が潜んでいるはずだと。これが分かれば、たくさんのメンバーがいますから、みんなで意見を出し合って、恒久対策が出来る。問題を解決すれば、またうれしくなるんですね。改善力を更に伸ばして、みんなが原因究明出来るような会社にしていこうと取り組んでいます。

 

■補助金を活用し福利厚生の向上を

 

──様々な補助金を効果的に活用しているもの特色ですね。

 

増子 高齢者の継続雇用対策として継続雇用定着促進助成金を早い時期から利用しています。また、省エネによる環境改善への貢献と経費節減のために、総合的な電力削減プロジェクトを策定し、エネルギー使用合理化事業者支援補助金事業に採択されました。リーマンショックのあと、大変厳しい状況が続いたのですが、中小企業緊急雇用調整助成金を頂き、社員の雇用を守りました。今回の震災後も、同様の助成金を頂き、何とか切り抜いてきました。

 

平成23年4月1日から業務改善助成金というものも始まっているのですが、全国でも159件しかないそうです。幸いにも私は、福島労働局に勤める同級生から連絡があり、この制度を知りました。当社が福島県第1号だそうです。

 

社員の福利厚生を少しでも良くするため、補助金を出来る限り利用する努力をしています。中小企業には、政府の補助金を利用して、前向きに様々なことに取り組んでいくことも必要だと思います。

 

──今後の抱負を。

 

増子 海外企業と競走していかなければいけないわけですから、生産性を上げて、コストを下げていかなければいけないのは間違いありませんが、やはり、品質だと思います。そのためには、人のレベルアップ、仕組みづくり、機械化・道具化が3本の柱になると思っています。

 

また、当社としてはいま、本社工場と白沢工場に別れてしまっているために、物流や、管理者の行き来など非効率的なところがあります。2・5㌔の距離にありますので、3分ぐらいで行き来は出来るのですけれども、それでも同じ場所にあるのとは違うんですね。将来的には一つの工場に統合して、更に効率を上げていきたいなと思っています。

(聞き手・渡辺利彦)

 

増子博保代表取締役社長略歴

昭和33年3月5日、田村郡三春町生まれ。筑波大学社会工学類を卒業後、石油会社に勤務。平成5年、岳父が経営する三春工業㈱を承継するため帰郷。業務部長、取締役専務、取締役副社長を経て、14年から現職。三春町異業種交流会長も務める。趣味は読書など。

 

企業 DATA

設立:昭和48年5月22日

所在地:田村郡三春町大字七草木字槻木30

事業内容:NOKブランドのオイルシール、トナーシールの製造

資本金:1,000万円

従業員:224人

(財界ふくしま2012年2月号掲載)


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