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あの味この味 区切り

2016年5月1日

株式会社アストラ

ニッチな分野に進出し
自らの手で市場を切り拓く

 

一條浩孝 代表取締役

 

 

 

■業務用自動皮むき機で国内トップシェア

 

 

 

――現在、業務用の自動皮むき機の製造販売で国内トップシェアを誇りますが、まずは自動皮むき機の開発に至った経緯からお聞かせください。
一條 当社は平成3年に創業し、もともとは電子機器の組み立てを行う下請け企業でした。当時はまだバブルの余韻もあって業績も安定していたのですが、次第に中国などの海外勢に仕事を奪われるようになり、加えて12年ごろにはITバブルの崩壊が起こりました。そのため、不安定な下請けだけでは将来性がないと考え、そこから自社製品の開発にも取り組むようになったんです。初めのころは、豆腐製造の際に廃棄されていた「おから」を乾燥させて食用や資源にする機械をはじめ、いろいろと挑戦はしたものの、結論から言えばどれもうまくいきませんでした。
ただある時、実家に帰ったところ母が肩が痛めて苦しそうにしていたんです。私は伊達市梁川町の出身で、実家は干し柿の生産農家なんですが、母は「柿の皮をむく作業で痛めてしまった」と。柿の皮をむく際には、機械のレバー引いて柿を回転させ、もう片方の手に持ったピーラーで皮をむくという作業をするのですが、レバーは重く、それをずっと引っ張っていなければならないですから、お年寄りには大変な重労働だったんですね。それで、新しい機械を買おうとしたら、調べてみると20年前の機械がいまだに売られていた。
これでは母の負担軽減にはつながらない、それだったら自分で作ってみようと、平成16年に開発したのが「手動皮むき器KA-1」です。物心が付いたころから皮むき作業を手伝わされていたので、レバーの位置はここにあって、こういう姿勢でやれたら楽だろう…というのが身を持って分かっていましたから、1週間ぐらいで完成しましたね。構造も電気が通れば回転するという極々簡単なものでしたけど、これが地元のJA伊達みらい(現・JAふくしま未来)の方の目に留まり、JA伊達みらいを通して初年度で50台、同様に作ったヘタ取り機で160台ほど販売することが出来ました。これまで皮むき作業は、生産農家の頭痛の種でしたので、機械を小型化、電子式にし、誰でも楽に操作出来るようにしたのが、評価頂いたのだと思います。
――構造的にも簡易なものだったということですが、いままで類似した商品はなかったのでしょうか?
一條 驚かれるかもしれませんが、それがなかった。要するにあまりに注目されないニッチな市場だっため、競争相手がいなかったんですよ。
ただ、この製品は秋口しか売れませんから、これを本業にしようとは思っていませんでした。やっていけると確信したのが、19年に開発した「自動皮むき機KA-1200」の時になります。それまでは吸盤に柿をくっつけ、手作業で皮をむいていたのですが、これは自動で皮をむくことが出来、作業が大幅に省力化され全国的にヒットしました。干し柿の産地は全国にありますが、福島では蜂屋柿、山形県では紅柿と、それぞれ形が異なるため、その地域ごとに合った皮むき機が必要でした。ですから、当社ではどのような形でも自動的に刃が当たる機構を作り、どの種類の柿にも対応した皮むき機を製品化したんです。
それから、次第に下請けよりも自動皮むき機が全体のウエートを占めるようになり、20年に起きたリーマンショックを機に本業を自動皮むき機1本にしました。そもそもリーマンショックによって下請けの仕事自体がなくなったので、この機会に脱下請けをすることにしたんです。同じ年に発売した、ヘタも取り除ける「全自動皮むき機械FAP-2000」が好評だったことも大きな励みになりましたね。
また、機械が高度化したことでメンテナンスの必要性が生まれ、春の注文から秋に納入、そして冬に製品をお預かりしてメンテナンスするという1年のサイクルを築くことが出来たのも自信につながりました。
■皮むき作業は世界中にある
――原発事故によって現在、伊達地域の特産品「あんぽ柿」が加工自粛となっています。
一條 本県においては一端は売り上げ、メンテナンスともにゼロとなりましたが、既に県外に軸足が移っていたこともあって何とか乗り切ることが出来ました。特に全国一の生産規模を誇る長野県には支所を設けており、将来的には本社を製造・開発拠点、長野の支所をメンテナンス拠点にしていく方針です。
――最後に、今後の展望を。
一條 干し柿の自動皮むき機の市場は小さいですけれど、需要は確かにありました。自分の仕事を紹介した時に、それで需要はあるのかと心配されることがよくあるのですが、私はそれでいいと考えています。みんなが目に付かないからこそチャンスがあると思うからです。
現在、皮むき・ヘタ取りの自動化が進み、近年はこれらを一体で処理する全自動機が主体となっていますが、この要因は第一に担い手不足によります。また、干し柿のように果物や野菜は加工すれば格段に収益が上がりますので、TPPの影響も含めて加工機械の需要はますます高まっていくでしょう。
昨年9月には「電動ピーラー 瞬助」の販売を開発しました。この製品は、キウイやリンゴ、ジャガイモ、柑橘類などの野菜・果物に対応しており、ホテルや給食センターをはじめとした中規模以上の企業を対象としています。この分野もまだまだ手作業が多く、干し柿と同様にものすごい市場性が隠れていると感じていて、自らの手で新しい市場を開拓していきたい。いまは導入時期ですので、まずは国内のみならず、海外も含めてPRに力を入れていく。皮をむく仕事は世界中にありますが、ニッチな市場も世界中から集めれば大きなボリュームになりますからね。
現在、オレンジの外側だけでなく、中の房の皮まで取り除くことが出来る新たな製品を開発中で、ほぼめどが付きつつあります。こちらの製品も含めて、輸出も視野に更なる販路拡大に努めていきたいですね。(聞き手・斎藤 翔)

 

 

 

 

■一條浩孝代表取締役略歴

 

昭和35年3月10日、伊達市梁川町生まれ。福島農蚕高校(現・福島明成高校)、福島県農業短期大学を卒業後に就農した。59年に電子機器製造会社に勤務したあと、平成3年に同社を設立した。現在、市内で夫人と2人暮らし。趣味はゴルフ。

 

■企業 DATA

 

創業:平成3年

 

所在地: 福島市飯坂町平野字平田4-1

 

事業内容:農業用加工・省力化機器の開発、製造・販売

 

資本金:1,000万円

 

従業員数:18人

 

(財界ふくしま2016年5月号掲載)


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