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あの味この味 区切り

2014年5月1日

株式会社アグリテクノ

ニッチ市場を開拓し
利益を確実に積み上げていく

 

 

三品清重代表取締役社長

 

 

■6次化で相場に左右されない経営を

 

 

――現在、鶏卵事業に加え、食品加工や有機肥料の分野でも業績を伸ばしていますが、そもそも多分野に進出しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

 

三品 もともと当社は、昭和30年に父・重治が卵を孵化し雛を販売する「三品種鶏場」として開業し、その後、アメリカ産の海外種鶏を取り扱うようになってからは南東北一円に営業を広げていました。ただ、私が家業に就いた47年当時は、事業拡大のために設備投資をしようにも、どこの金融機関からも融資を受けられなかったんですね。卵には相場がいい時は儲かるけれど、悪い時には赤字になるくらい安くなるというエッグサイクルがあって、養鶏業は常に相場に左右されるとても不安定な業界だったんです。金融機関からすれば赤字が出るような会社にはお金を貸したがらないですよね。

 

そこで、相場に左右されない、安定した経営構造にするのにはどうしたらいいかと考えたわけです。卵の生産量を増やしても、単に山谷が激しくなるだけ。だったら、養鶏以外の事業にも展開して安定した利益を出していこうと、少しヒビが入ったような市場性のない卵を茶碗蒸しやプリンに加工して、首都圏のスーパーマーケットに出荷したり、畑にそのまま入れるだけであった鶏フンを醗酵させ、臭いのしない有機肥料として商品化したりと、いまでいう6次化を30年前に始めることにしたんです。

 

――そのような6次化の動きは、ほかの養鶏家にもあったのでしょうか?

 

三品 いまでも、当社のように食品加工に進出している養鶏家はほとんどいません。食品業界に参入しても大手メーカーが競争相手になりますから、なかなか着手しづらいのだろうと思います。大手と正面から当たっても当然勝負にならない。ですから、私たちは大手が入りづらいニッチ市場に進出することにしました。つまり自動化出来ない、手作り商品を始めたわけです。手作りですのでほかと比べて値段は高いのですが、それでも買って頂ける顧客は確実にいます。

 

一般的にジュースの賞味期限は長いため、大量生産し作り置きが出来るのですが、当社の商品は出来るだけ生の果肉ブロックを入れるようにしており、賞味期限は2、3週間と短い。そのため、製造には常に小刻みな調整が必要であり、非常に手間が掛かるのですが、だからこそ、大手がなかなか手を出せないニッチな市場となっています。

 

――通常のプリンと比べ約5倍もある大容量の「俺のプリン」が話題を呼んでいますね。

 

三品 プリンは何年も前から作っていましたけど、正直450㌘もある特大プリンが売れるのか分かりませんでした。ただ、以前にもほかの会社で「バケツプリン」という商品が出たことがあって、長続きはしませんでしたが、その話題性からヒットしたことがあったんですよ。そこで、バケツまではいかないまでも中間のジャンボプリンだったらどうだろうと、6年前にいまの「俺のプリン」の前身となる「うれしいプリン480」を開発しました。

 

当初は、一種の「チャレンジプリン」として考えていたのですが、発売から1カ月間は1日1万5000個と、こちらの予想を上回る売れ行きを記録しましたね。一体誰が買っているのだろうかと市場調査をしてみたところ、若い人ではなく50代の男性がメーンだったことが分かり、昨年には大手コンビニのPB商品として「俺のプリン」とリニューアルし、こちらも好評を頂いているところです。

 

■グローバルスキルがなければ海外勢と渡り合えない

 

――業界でもいち早くイタリア製の鶏舎を導入するなど、海外のノウハウを積極的に取り入れています。

 

三品 日本では養鶏や豚舎は遠くからも分かるくらい丸裸な状態で建てられているのですが、環境問題に敏感なヨーロッパでは、周辺に不快感を与えないように林の中で自然に溶け込むように立地されています。当社でも鶏舎の周りを植樹したり、鶏がストレスなく生活出来るようにゲージ内のスペースを広くとったりするなど、環境に配慮した生産体制に努めており、そうすることで従来の「汚い」というイメージが払拭され、消費者の安全安心を得ることが出来るのです。

 

また、人材育成についても幹部候補生には必ず海外に行かせるようにしており、海外でも商談出来るようなスタッフを育てています。毎年アメリカとヨーロッパで開催されている展示会に行き、そこで人と情報に触れてくる。とにかく世界を見て歩かないと、グローバルスキルは身に付かず、海外と渡り合うことは出来ませんからね。

 

やはり技術的にはアメリカ、ヨーロッパでは特にドイツとイタリアが進んでいますので、そういったところからいいものは積極的に取り入れていきたい。ただ、いまの日本の養鶏業は世界でもトップクラスですので、100㌫真似するのではなく、いかに日本式の養鶏を創り上げていくのかが大事だと思っています。

 

――今後の展望については?

 

三品 一昨年に買収した仙台のフクベイフーズという会社では、現在、卵や食肉の加工を行っていますが、いま仙台では牛タンブームが起きていますので、その分野にも力を入れていきたいと考えています。ただ、これまで当社は食品加工などに力を入れてきたため、ほかと比べて鶏の羽数を増やすのが遅れてしまっているのが現状です。そのため、現在の100万羽から5年後には150万羽、8年後には200万羽に増やしていく予定でいます。

 

また現在、生産した卵は量販店と加工用として大手食品メーカーに販売していますが、その一方で直販の分野にも力を入れていきたいと考えています。やはり直販ですと利益率は高い。今後は大手がやらないような、きめ細かな販売をしていかないと利益を取ることが難しくなっていくでしょう。値段よりも質や利便性を求めている顧客はたくさんいる。そういうところを増やしていきながら、利益を確実に積み上げていければと考えています。(聞き手・斎藤 翔)

 

■三品清重代表取締役社長略歴

 

昭和24年3月19日、伊達市梁川町生まれ。保原高校、明治大学農学部を経て、46年8月に同社に入社。52年に専務取締役に就任し、平成5年から現職に。現在、市内で夫人と2人暮らし。趣味はクラシックカーとギター。

 

■企業 DATA

 

創業:昭和30年

 

所在地:伊達市坂ノ下14-3

 

事業内容:鶏卵事業、食品加工事業、鶏糞肥料事業ほか

 

資本金:7,000万円

 

年商:60億円

 

http://www.agri-techno.co.jp/

 

(財界ふくしま2014年5月号掲載)


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