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あの味この味 区切り

2018年1月1日

相馬ガスホールディングス株式会社

次世代エネルギーとして
水素事業に積極的に進出

 

渋佐克之代表取締役社長

 

■24時間365日の〝駆け付け〟サービスを提供

 

――まずは事業内容からお聞かせください。

 

渋佐 当グループは南相馬市と相馬市、新地町においてガス・灯油・ガソリンなどのエネルギー生活サービスを提供しています。具体的には、親会社である相馬ガスホールディングス㈱を中心に、南相馬市においては都市ガス・簡易ガス・LPガスを供給する相馬ガス㈱、同じく南相馬市にあってガス灯油機器、太陽光発電などのエネルギー機器や住設機器の展示販売を行うとともに、器具修理、灯油配送、ガソリンスタンド、ダスキン等を展開する㈱エネルギー生活市場。そして、相馬市と新地町においてLPガス供給、灯油配送、ガソリンスタンドを運営する相馬市ガス㈱の4社で構成され、現在、都市ガスの3000軒とLPガスの約1万軒、合わせて1万3000軒のお客様に支えられながら事業に取り組んでいるところです。

 

創業は昭和35年12月、相双地方唯一の都市ガス会社「相馬ガス」として、旧原町市が出資した第3セクターとして始まりました。ただ、都市ガス事業を始めるには、まず地中にガス導管を設置するなどの相当な設備投資を必要としたため、初めの7年間は赤字続きで大変だったと聞いています。経営が安定し始めたのはLPガス事業を展開するようになってからです。LPガスは住宅にメーターを付けてガスボンベを運ぶものですから、都市ガスと比べ投資は圧倒的に少なく、採算が取りやすかった。そのため、LPガス事業を稼ぎ頭に徐々に営業先を広げていくことで原町市内はもちろん、昭和50年代には相馬市にも進出するようになったんです。その後、営業エリアの拡大や事業の展開に伴って新会社設立を進めてきましたが、事業の効率化を目的に平成22年、これまでの6社体制から相馬ガスホールディングスを親会社とするいまの4社体制に移行しました。

 

震災を経て現在は都市ガスにおける復興公営住宅の事業が功を奏し、業績は震災前の9割台にまで回復しています。ただ、住民帰還がある程度落ち着いたことで、LPガスについては頭打ち感があるのは否めません。そのため、昨年に避難指示が解除された小高区での事業拡大を進めるとともに、復興が進む双葉地域での営業再開についても検討を進めているところです。

 

――現在、相双地方の都市ガス、LPガス事業においてトップ企業にまで成長しました。

 

渋佐 ここまでお客様に支持されるようになったのは、やはり創業以来、「24時間365日」の〝駆け付け〟サービスを徹底したことが大きかったのではないでしょうか。こうしたサービスは当時でも大変珍しかったのですが、いまでも「24時間365日」〝受付〟というところはあるものの、当グループのような〝駆け付け〟とまでなると、まず滅多ありません。この業種は安全安心が重要なウエートを占めますので、電話1本ですぐ駆け付けられることは、サービス面において大きく先行出来ているのだと思っています。

 

もちろん、そのためには人員の確保が大事ですが、それ以上に重要なのが当番制のシステムです。そもそも都市ガスは寝ずの番をしなければならなかったため、すぐに駆け付けることが出来るよう、内勤のみならず外勤の当番制を設けるなど、いまにつながるノウハウを、創業時から蓄積することが出来たんです。

 

■新たに水素エネルギー事業を開始

 

――今年9月にはエネルギー生活市場の敷地内において、県内で2番目、民間では初となる「スマート水素ステーション」を開設するなど、新たに水素事業への進出を始めましたね。

 

渋佐 「水素ステーション」とは、燃料電池自動車にその燃料となる水素を充填する施設です。水素ステーションを大きく分けると「商用」と「自家用」があるのですが、当社は料金をとらない「自家用ステーション」であり、ホンダの「クラリティ」を所持し、当社の趣旨に賛同する法人の方に無料で使用してもらうものになっています。仕組みとしては、エネルギー生活市場の屋上に20㌔㍗の太陽光パネルがあり、そこで発電した電力を元に水素を1日1・5㌔製造し、最大19㌔の貯蔵が可能です。また、一度に2・5㌔の充填が出来、走行距離は約250~300㌔となっています。燃料電池自動車のメリットは、騒音が小さく非常に静かで、かつエネルギー効率が良く走行距離が長いこと。そして、水素の燃焼時には水と少量の窒素酸化物が排出されるだけで二酸化炭素排出量はゼロと、環境に非常にやさしいことが挙げられます。

 

私がこの会社に入ったのは平成5年になりますが、実はそのころから水素エネルギーには並々ならぬ思いを持っていました。入社後、資格取得の勉強をしていたところ、教科書の中で、燃料電池に水素を供給することで全く二酸化炭素を出さないシステムが近い将来に出来る、という記事が載っていたんです。私はその記事に大変心を惹かれまして、以降、社内では次世代エネルギーとして水素の導入のことばかり言っていたんですよね。(笑)

 

具体的な動きになったのは震災後からです。原発事故によって再生可能エネルギーが注目されるようになり、ここがチャンスだと水素事業を始めることにしたんです。

 

――最後に今後の展望を。

 

渋佐 水素エネルギーについては、いまの都市ガスやLPガスのように住宅に水素を供給するなど、いずれは事業の柱の一つにしていきたい。ただ、現状では水素それ自体の製造コストが高く、いまだ実験段階ですから、技術やコスト面での進捗を見ながら事業化していきたいと考えています。今回の水素ステーションは、技術面のスキルアップや、水素自体の認知を広めていくための先行投資です。燃料電池自動車をはじめとした水素関連産業は成長産業であり、住宅水素については2020年ぐらいまでには事業化されると言われています。当社としてもそれに乗り遅れないよう、実験段階から積極的にかかわっていきく。そして近い将来、本格的な商用ステーションを開設出来ればと考えています。

(聞き手・斎藤 翔)

 

 

■渋佐克之代表取締役社長略歴

昭和34年9月11日、南相馬市生まれ。原町高校から慶應義塾大学法学部に入学。平成5年に現・㈱エネルギー生活市場に入社した。その後、相馬ガス㈱の常務取締役、取締役副社長などを経て18年に代表取締役社長に就任。22年に㈱相馬ガスホールディングス代表取締役に就いた。現在、南相馬市内で夫人と2人暮らし。趣味はカラオケ、映画鑑賞。公職では県公安委員長、原町商工会議所副会頭などを務める。

 

 

■企業 DATA

 

創業:昭和35年12月28日

 

所在地:南相馬市原町区青葉町2丁目3

 

事業内容:都市ガス・簡易ガス・LPガス販売、ガス灯油機器・太陽光発電などのエネルギー機器及び住設機器の展示販売、灯油配送、ガソリンスタンド運営など

 

従業員数:80人(グループ全体)

 

資本金:9,500万円

 

(財界ふくしま2018年1月号掲載)


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