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あの味この味 区切り

2017年10月1日

株式会社北日本ボーリング

特許技術「自然放射能探査」で
地下水・温泉を掘り当てる

 

北原 賢代表取締役

 

■事前調査を徹底し顧客の側に立った仕事を

 

──まずは地下水や温泉開発などを手掛ける御社の特色から。

 

北原 新潟市水道局に勤務していた父親(北原五郎会長)が昭和38年に起業しました。当社は地下から上がってくる自然放射能を「自然放射能探査装置」で計測し、地下水や温泉源があるかどうかを事前に調べているのが特徴です。

 

通常、事前調査はよほどのことがない限り行われないのですが、当社の場合はお客さんから仕事を頂いた時に自然放射能探査技術を使って事前調査を行い、水が出る地点なのかどうか把握してからでなければ掘削しません。調査によって水が出ないと判断した時には、お客さんに「水は出ませんよ。掘っても無駄ですよ」と提案します。

 

商売として、これがいいのかどうかという面はあるでしょうが、お客さんにとっては、お金を投資しても(地下水や温泉が出ず)無駄になることもあるわけです。ただ掘って、結果として何も出なくてもお金がもらえるということも、契約の仕方によってはあるのですが、それではもらいにくいものがあります。調査をして、間違いなく出ますよと伝えてから掘削をするという、お客さんの側に立った仕事の仕方をしてきたから、当社は今日まで続いているのではないかと思っています。

 

──井戸掘りや温泉堀りといった事業のほか、どのような業務を手掛けていますか。

 

北原 地質調査や水源調査、井戸の設計など水に関係する設計業務も行っています。それから、水処理の工事も行っています。例えば掘削しても、場所によっては水質が悪いところもあります。水道水質の基準に適合しない時には、浄水設備を入れて浄水するわけです。

 

──長年にわたりさく井工事を手掛けている中で、近年の傾向は?

 

北原 企業さんの中には、水道料金が上がってきているので水道を使っていくとコストが合わないということから、地下水に転換していくところがあります。当社でも精密機器製造企業や大学、病院などから依頼を受けて井戸を掘り、浄水して水を提供しています。工業用水に地下水を使ってコストを削減したり、大学も少子化により競争が激しくなる中で固定費の削減として水に着目したりしているようです。

 

──自然界にある放射線を測定して地盤を調査する御社の技法が、6年半前の原発事故によって一度は全く使えなくなりました。その後の新装置開発までの経緯を。

 

北原 3・11後、三春町で調査をしていたら、(原発事故で大気中に放射性物質が放出されたことによって)針が振り切れてしまって、全然使い物にならなくなってしまったんです。それまで全国300カ所以上の調査をしてきました。札幌から北九州まで全国各地の「自然係数の蓄積」データを持っていたのですが、その財産をすべて失ってしまったわけです。一時は廃業しようかとも思いましたよ。東京電力の補償金をもらい、そしてふくしま復興特別資金を借りて、大量の放射線が放出された汚染地域でも測定可能な新しい探査装置の開発を始めました。約2年掛けて、平成24年12月に完成しました。
現在、実務を行いながらデータの蓄積をしているところです。新装置で調査をし、その調査結果を基に井戸を掘っていますが、(原発事故の)影響なく調査が出来ていまして、効果も上がっています。震災後、葛尾村などでも井戸を掘りましたが、自然の放射線強度が上がるところに井戸を掘ると、間違いなく水が出てきます。新装置の有用性が確認されたといえるのではないでしょうか。

 

■独自技術を災害対策や再エネに生かしたい

 

──浜通りの水源復旧のほか、新装置を生かして昨年、相馬市で温泉掘削工事も手掛けられました。

 

北原 相馬市小泉高池地内に温泉が湧出しました。いままで温泉湧出が不可能とされていた地域です。当社の自然放射能探査を実施して温泉掘削工事位置を決定し、当社が温泉掘削工事を行い、お陰様で温度及び湧出量ともに満足頂ける結果を得ることが出来ました。泉質はナトリウム―塩化物温泉で、現在、「天宝の湯」と命名されて温泉施設も完成し、たくさんのお客様でにぎわっています。

 

──水処理の事業では、ヒ素の浄水処理を試験してきました。

 

北原 昨年、会津地方の当社試験プラントで、鉄バクテリアを利用した生物処理法により、自然の地質由来のヒ素の浄水処理に成功しました。当初のヒ素濃度は、0・03~0・04㍉㌘/㍑でしたが、浄水後は0・001㍉㌘/㍑となり、ヒ素の基準値0・01㍉㌘/㍑の10分の1にすることが出来ました。高価な膜濾過方式を採用しなくても、生物の自然浄化作用を利用して、難しいヒ素の浄水処理を経済的に行うことが出来ます。日本でも、ヒ素を浄水して水道水として供給されているところがありますが、今後は水が乏しい地域でも、安全で経済的な浄水が可能となり、給水地域が増加するものと期待しています。

 

──最後に、今後の展望を。

 

北原 当社の技術を生かして、取り組んでみたいと思っているものが2つあります。まずは「活断層による地震災害対策」です。当社の自然放射能探査手法を適用して、効率的にハザードマップの作成などを行いたい。例えば、市町村単位の断層破砕帯の分布マップを作成し、どの市町村のどの構造物が断層上にあるかを把握し、建物の耐震化はもちろんのこと、避難場所や避難経路の確認など地震対策、減債対策について貢献していきたいですね。ただし、これには地方自治体の協力が必要です。いざという時のために、ぜひ検討して頂きたいですね。

 

そして「再生可能エネルギー」の分野で、地中熱ヒートポンプの効率的な設置箇所の選定には、当社の探査技術を生かすことが出来ると思っています。断層破砕帯においては、深度が浅くても地下水温度が上昇しやすいんです。この性質を地中熱エネルギーに利用したい。地中熱ポテンシャルマップに加えて、高温地下水地域マップの作成を手掛け、経費削減などに貢献したいと思っています。

(聞き手・渡辺利彦)

 

■北原 賢代表取締役略歴

昭和37年6月21日、二本松市生まれ。県立福島高校、日本大学理工学部土木工学科を卒業後、60年4月、家業に就いた。平成元年、専務取締役に就任し、6年から現職に。32歳の時、科学技術分野では最難関の国家資格である技術士試験に合格し、現在は技術士(建設部門、総合技術監理部門)を取得している。現在、郡山市内で夫人、息子3人と暮らしている。趣味は読書で、最近は多様な分野の本を読むことにしている。

 

 

 

■企業 DATA

 

創業:昭和38年2月

 

所在地:郡山市小原田4丁目4-6

 

事業内容:建設コンサルタント業、特殊調査の実施及び研究、地質調査業、水源コンサルタント、土木設計

 

資本金:2,000万円

 

従業員数:10人

 

(財界ふくしま2017年10月号掲載)

 

 


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