ドローンスクールから
地域の活性化につなげていく
樋山秀樹代表取締役
■猪苗代にドローンスクールを開校
――産業用の小型無人機「ドローン」の操縦士を育成する「ドローンスクールジャパン会津猪苗代校」が5月19日、猪苗代町千代田に開校しました。
樋山 このたび、「ドローンスクールジャパン」を全国に展開している㈱スカイロボット(東京都、貝應大介社長)とフランチャイズ契約を結び、国土交通省が認定する管理団体(一社)ドローン操縦士協会(DPA=ディーパ、東京都、小林一郎理事長)の県内初の公認校として、本校を開校しました。
ドローンに関しては平成27年12月の法改正以降、「夜間飛行」「目視外飛行」「人・建物30㍍以内での飛行」などにおいて飛行規制が掛かるようになり、これらの条件で飛行するには、あらかじめ国土交通省から承認を受けなければなりません。そして、承認申請には「10時間以上の飛行経験」といった条件が必要になるため、本校ではそれに合わせた操縦技術、更には4Kハイビジョンカメラや赤外線カメラの撮影、空撮技術といったドローンビジネスに関連する様々な技術も習得出来る実技訓練とともに、航空法や電波法などの各種法律を学べる講習を行っているところです。
――スクールの講習内容は?
樋山 現在、「体験コース」「フライトコース」「ビジネスコース」の3つのカリキュラムを用意しています。
「体験コース」とは、産業用ドローンがどういうものか実際に体験出来る90分のコースのことで、インストラクターによる初心者向けのドローン操縦訓練や、空撮テクニックに関するカウンセリング・アドバイス等を行っています。また、現状でドローンを自由に飛ばせるエリアは限られていますので、本施設を利用して個人スキルを磨きたい方にもこちらのコースを利用頂いています。
「フライトコース」は、円移動や四角移動といったドローン操縦の基本的な技術を2日間で習得出来るコースです。また、同じく2日間となる「ビジネスコース」では、8の字旋回や赤外線カメラの撮影をはじめ産業用ドローン操縦士に必要な20種類の技術を習得することが出来るようになっています。実際に国交省に申請することが出来るのはこちらの「ビジネスコース」であり、受講は「フライトコース」を受けた方、もしくは操縦経験が10時間以上の方が対象となります。
――開校から約2カ月が経ちましたが、現状はいかがでしょうか?
樋山 お陰様で建築業や設備業の方を中心に、毎日のように問い合わせや申し込みが来ており、エリアとしては会津よりも中通りと浜通りからのお客様が多いですね。
ほかのスクールに比べても、本校ではドローンを飛ばせる時間は多く、また、受講生最大3人につき1人のインストラクターのため、マンツーマンに近い指導が行えるなど、講習内容が充実しているのも強みだと思っています。
■地方においてこそドローンの需要はある
――もともと御社は測量業を営んでいる会社ですが、今回、ドローンスクールの開校に至ったきっかけは何だったのでしょうか?
樋山 当社は会津若松市で平成3年に創業し、これまで測量・設計業務、施工管理などを行ってきました。ただ、近年は公共事業の減少や少子高齢化による深刻な人手不足、それに伴う人件費の高騰など、業界を取り巻く状況は悪化の一途を辿っており、特に我々のような地方の小さな会社ではこのまま行けばジリ貧になるという危機感を持っていました。そのため、何か新しい分野に挑戦しようと考えていたところ、将来性を感じたのがドローンなんですね。
測量業においてはドローンの空撮を活用することで、いまだ試行段階ではあるものの、それでも大幅な工期短縮とコスト削減につながります。そこで、震災直後ぐらいから会社にドローンを導入しようと考え始め、実際に導入したのが昨年暮れのことです。その際、社員がスカイロボットが運営する東京の「ドローンスクールジャパン」で研修したのをきっかけに、ドローン導入と同時にドローンスクールの開校も検討し始めました。
両者をセットで考えたのは、一つはスクールを通してドローンの最新の技術や法律等の情報が得られ、本業の測量にも生かすことが出来ると考えたからです。また、当社も東京で研修したように、地方にドローンスクールが少ない現状において、地元にドローンの文化が広まれば、地域経済の活性化にもつながっていけるのではという社会貢献的な意味合いもありました。
――最後に今後の展望を。
樋山 ドローンは建設や測量、物流、農業など、様々な分野での活用を期待することが出来ます。そして、中央よりも人口減少が進み、人手不足が深刻化している地方においてこそ、ドローンの可能性は秘められていると思っています。
当社が今回、猪苗代にドローンスクールを開校したのは、会津と中通りの両地域からアクセス出来ること、そして、ここが農業地帯であり、猪苗代湖や磐梯山などの観光資源が豊富にあることが決め手となりました。
ドローンの需要は、その地域ごとにより特色が顕著になっていくでしょう。そのため、現在は農薬散布などの農業用ドローンに可能性を感じているところなんですね。いまは企業のお客様がメーンとなっていますが、今後は「農業コース」を整備していくなど、将来的に地域の農家の方がドローンを学びに来てもらえるようしていきたいと考えています。
2020年までに産業用ドローンの操縦士は14万人が必要になるとも言われています。本校ではその担い手となる操縦士を育ていくとともに、県内はもとより、近隣県からも広く受講生を呼び込んでいきたい。将来的には観光の一つとして、県内外から多くの観光客が訪れ、マチの活性化につながっていければいいですね。
そして、本業の測量業においても、本校とドローンの技術を相互に共有しながら、更に発展することが出来ればと思っています。(聞き手・斎藤 翔)
■樋山秀樹代表取締役略歴
和29年7月8日、会津若松市生まれ。東北測量専門学校を卒業後、市内の測量会社での勤務のあと、平成3年に同社を設立した。現在、市内で夫人と2人暮らし。趣味はウオーキングとヨガ。公職では、福島県中小企業家同友会の会津エリア長、会津若松商工会議所議員を務める。
企業 DATA
創業:平成3年1月
所在地:会津若松市行仁町11-7
事業内容:造測量設計・調査業務、施工管理業務、許認可申請業務、地質調査業務
資本金:500万円
従業員数:23人
http://www.nanshin.aizu.or.jp/
(財界ふくしま2017年8月号掲載)