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あの味この味 区切り

2016年12月26日

ローヤル油機株式会社

多品種少量・小ロット販売で
ニッチな市場を開拓

 

 

佐藤忠義代表取締役

 

 

 

 

■独自のビジネスモデルで業績を拡大

 

 

――まずは御社の事業内容からお願いします。

 

 

佐藤 産業機械に必要な潤滑油・グリースを取り扱う専門商社として、中小企業から上場企業、研究機関まで全国3200社のお客様と取り引きさせて頂いています。市場ニーズに合わせて多品種少量・小ロット販売に特化し、メーカーから仕入れた商品を販売するほか、大手企業と連携した新商品の開発や、どの商品が合っているのか、どう使ったらいいかといったお客様に最適な商品を提案するコンサルティング販売にも力を入れています。

 

 

当社は昭和43年、私一人で立ち上げました。当時、ここいわき市四倉町は活気があって、セメント工場をはじめとした多くの製造工場や四倉港の漁船など、潤滑油の需要は非常に高かったのですが、町内には潤滑油を専門で取り扱う会社はほとんどなく、あってもガソリンスタンドぐらいでした。また、そのガソリンスタンドにしても時代とともに潤滑油を取り扱うところは少なくなっていたんです。

 

 

私はもともと東京の資材会社に勤めていたのですが、長男だったためいずれは親の面倒を見なくてはと帰郷したのが、ちょうどそのころです。その際、極東オイル㈱の営業所に勤めていた父から、「極東オイルは海をやっているから、何もやることがないならお前は陸をやってみれば」と言われ、同社の代理店として始めたんですね。社名の「ローヤル」は、お客様に尽くすという意味で「loyalty(忠誠心)」から名付けました。

 

 

初めは極東オイルの潤滑油だけを取り扱っていたのですが、知識と経験を積むに連れ、ほかのメーカー品も取り扱うようになり、市内の製造会社を中心に徐々に販売先を広げていきました。また、東京電力㈱福島第一、第二原子力発電所と取り引きするようになったのも大きな転機になりましたね。発電所で使われる機械は、必ずどのメーカーのオイルでどれぐらいの量を使用するかなど細かい指示があるため、それに伴い、仕入れ先をどんどん開拓していくことが出来たんです。

 

 

――多品種少量・小ロット販売に特化したビジネスモデルを構築し、震災後も順調に業績を伸ばしていますね。グリースの少量販売を始めたのが平成11年のことだそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?

 

 

佐藤 当初、第一、第二原発に20㌔の大きな缶を納めていたのですが、実際に現場で使ってみると、缶から少し取っただけでメンテナンスが終わってしまい、あとは大量のグリースが余ってしまっていました。一度使えば当分使わなくなりますから、処分するにしろ、置いておくにしろ扱いに困る。そのため、先方からも「持って帰ってくれ」と言われて困り果てていたところ、ちょうどグリースをプラスチック製のジャバラに詰めた商品が出始めたんですね。

 

 

当時、メーカーでは1本400㌘、20本1セットで販売しており、これはいいと持って行ったのですが、それでも「2、3本しか使わない」と言われ、仕方がなく、それをバラして販売したところ大変好評だったんですよ。

 

 

また、インターネットの影響も大きかったですね。当社では同じ平成11年に業界ではいち早くホームページを開設し、そこで独自に作成した国内外メーカーの潤滑油・グリース機能の比較情報を掲載することにしたんです。当時、こういった情報をホームページに載せているところはほとんどありませんでしたので、開設からアクセス数は急増し、そこでグリースの少量・小ロット販売を告知したところ、全国から多くの注文を頂くようになりました。更には、メーカーで詰めていないものについても問い合わせが来るようになったため、協力会社にメーカーから購入した缶をジャバラに詰めてもらい、それを販売するようにしたんです。

 

 

現在、自社で少量・小ロット化した商品の売り上げは伸びており、最近ではメーカーと共同開発した自社ブランド「ローヤルグリース」の販売も好調ですね。

 

 

■少量・小ロット販売はニッチな市場だった

 

 

――平成26年には、その独自のビジネスモデルが評価され、中小企業庁の「がんばる中小企業300社」にも選ばれています。

 

 

佐藤 ホームセンターなどには売っていない専門的な潤滑油は、中小企業にとっては多量なものが多いんです。しかし、少量・小ロットの需要はあるものの、当社が現在のビジネスを始めた当時、そういった販売を行う同業者は全国でもほとんどいませんでしたし、大量生産を行うメーカーとしてもなかなか手が出しづらい分野でした。そういった誰も手を出していないニッチな市場を開拓していったことが評価されたのだと思っています。

 

 

――多品種少量・小ロット販売のメリットは?

 

 

佐藤 メーカー品をただ右から左に流しては利益も生まれませんが、メーカーとお客様の間に立ち、一手間掛けることで利益を上げられることが出来るんですね。更には、ニッチな分野ですから競争も激しくなく、多品種少量・小ロットの方が利益率は高いんです。

 

 

また、3000社を超える多くのお客様と取り引きさせて頂くことで、市場ニーズをいち早く吸い上げ、他社に先駆けて少量・小ロットの商品を販売することが出来る。そのほか、震災によって双葉郡を中心に売り上げの3分1が失われましたが、幅広く取り引きをさせて頂いたことでリスク分散も出来た。これは当社の大きな強みだと思っています。

 

 

――今後の展望をお聞かせください。

 

 

佐藤 どんな機械にも潤滑油・グリースは必要不可欠であり、これからも需要は伸びてくると思っています。現在、250社、8500種の商品を取り扱っていますが、それらのノウハウを生かし、今後も古い機械から最先端の機器まであらゆる産業機械に必要な潤滑剤を安定的に供給していきたいですね。

 

 

事業拡大を図るため、現在は人材の確保や事業所の移転なども考えており、更なる飛躍を目指しています。(聞き手・斎藤 翔)

 

 

■佐藤忠義代表取締役略歴

 

 

和17年3月25日、いわき市四倉町生まれ。磐城高校から高崎経済大学経済学部を卒業後、39年に東京都のティアック㈱に入社。43年に帰郷し、同社を設立した。現在、いわき市内で夫人と2人暮らし。趣味はサイクリング。

 

 

■企業 DATA

設立:昭和43年4月

所在地:いわき市四倉町上仁井田字家ノ前107-4

事業内容:各種機械の潤滑油・グリースの販売

資本金:1,000万円

従業員数:9人

http://www.loyal-grease.jp/

 

(財界ふくしま2017年1月号掲載)


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