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あの味この味 区切り

2016年12月26日

株式会社シンク

会津の地から
IT都市モデルを

 

 

上野文彦代表取締役社長

 

 

■起業のきっかけとなった國井学長の言葉

 

 

――会津大学発のベンチャー企業として、同大在学中の平成10年に設立されましたが、まずは起業の経緯からお聞かせください。

 
 
上野 私は千葉県の生まれですが、父がソフトウェア関係の仕事に就いていたことや、両親とも実家が会津だったこともあり、進学先は自然と会津大を選びました。ただ、平成5年に会津大の第一期生として入学した当時は、自ら会社を起こそうとは全く考えておらず、卒業後は地元に戻ってどこかの企業に就職しようぐらいの気持ちだったんです。
 
 
ではなぜ起業したのかというと、一つは初代の國井利秦学長の影響です。國井学長は常々「ベンチャー企業を起こせ」と、学生に対して勉強しろではなく、自分で会社を起こしてお金を稼げと話されていました。いまでこそ当たり前の話ですが、ベンチャーという概念が根付いていなかった当時、その話を聞いた時は大変驚きましたし、大きな動機付けとなりました。
 
 
もう一つは、地域社会の会津大への期待です。会津の皆さんとはアルバイトやイベントなどを通じて触れ合う機会が多く、その中でITという新しい産業を会津に根付かせて欲しいという話をたくさんの方から頂いたことで、次第にその期待に応えたいと思うようになっていったんです。また、大学で技術が身に着くに連れ、自分たちでもベンチャーを起こせるという思いを持った友人が、周りにたくさんいたのも大きかったですね。
 
 
初めは友人らとパソコンの家庭教師をしていたのですが、その後、教え先の企業から見積もりや積算ソフトの依頼を受けるようになり、次第にソフトウェア開発に比重が移っていきました。そして、平成10年1月に法人化したのが当社の創業になります。現在は主に会津地域の自治体や、建設・製造業などの民間企業、病院に向けて、システムのソフトウェア開発を行っています。また、東京の大手IT企業やベンチャー企業からの依頼で大規模システムの共同開発も手掛けており、会津と県外でほぼ半々ぐらいの割合となっています。
 
 
――学生の中では一番早いベンチャー企業となりましたが、設立当時、苦労された点はありましたか?
 
 
上野 それは〝学生〟だったことですね。学業と二足の草鞋を履くことは、学生にとって大変負担が大きいことでしたし、また信用の面においても、学生が企業の根幹にかかわるシステムを開発することは、高いハードルとなっていました。そのため、設立から数年のうちに、それまで学生アルバイトが中心だった体制を見直し、正社員のみとしたんです。会津地域のベンチャー企業の中では、たぶん当社だけが学生アルバイトを雇っていないと思います。もちろん会津大の卒業生は入社しているのですが、お客様・会社・学生すべてにおいてデメリットが大きいと、あきらめることにしました。
 
 
■注目される情報の横軸の連携
 
 
――御社の強みは?
上野 自治体向けのシステムについて非常に高いレベルの技術力と行政ノウハウを持っていることだと思います。
 
 
システムは、法律にかかわるセキュリティーが重視される「基幹系」と、その例外の「情報系」の2つに分けられるのですが、会津若松市では住基ネットと税の管理システムの「基幹系」のほか、情報メール配信サービス「あいべあ」などの「情報系」双方のサービスを提供しています。また、会津美里町では住基ネットと税の管理システム、財務会計システムに加え、40を超えるサブシステムにも対応させて頂いており、この経験は他社にはない強みとなっています。
 
 
――最後に将来の展望をお聞かせください。
 
 
上野 当社の特徴は、お客様が地元会津において集中していることだと思います。例えば、会津のバスや鉄道などの交通インフラは、基幹システムすべてを当社で提供させて頂いている状況です。そうした中、いま目標としているのが地域でナンバーワンになることですが、これは単にシェア率で一番になるというものではありません。
 
 
情報システムの利用が広く市民生活や企業活動に浸透している「情報化社会」において、これからの時代、情報の横軸の「伝達」の重要性が高まっていきます。例えば、何か事故に遭った時に、自分の過去の病歴や診療データが搬送先に瞬時に伝わることが出来れば、助かる確率は上がりますよね。こういった人をより豊かに出来る情報の横連携は、いまの技術でも十分出来得る、かつまだ実現出来ていない分野なんです。
 
 
そして、この横連携というのは、東京ではまず起こり得ません。自治体の規模が大きく、大手企業が競合する東京においては、一つの政策に絞ることが出来ず、連携が進まないからです。
 
 
一方で規模の小さい地方では、官民学の連携や実証事業がしやすく、大きな可能性を秘めていると思っています。ですから、先ほどのナンバーワンになるというのは、一つの会社で様々なデータを管理するという意味なんですよ。横軸の連携といっても、自治体のデータは扱えるけど、他社が管理している病院のデータは扱えませんでは意味がありませんからね。
もちろん、セキュリティーとプライバシー、守秘義務を完全に守ることが大前提になりますが、その上で情報の横連携を進めることで、ITを利活用した様々なサービス、システムを提供していきたいと思っています。それがひいては会津を先進的ITモデル都市にし、もっと言えば会津から新しい未来像をつくり、全国に広めていきたい。
 
 

私は、会津から本気で国興しをしようと思っています。そのため、いま各自治体への営業や電子カルテの開発にも力を入れているところですが、今後もより多くの、幅広い分野のお客様にサービスを提供していければと思っています。会津は可能性を持った地域なのは間違いありませんので、IT先進地の実現に向けてまだまだ挑戦を続けていきたいですね。(聞き手・斎藤 翔)

 
 

■上野文彦代表取締役社長略歴

昭和48年6月28日、千葉県八千代市生まれ。平成5年、会津大学の開学とともに入学し、在学中の10年1月、同社を設立した。現在、会津若松市内で夫人と2人暮らし。趣味はクラシック音楽鑑賞。

 

 
 
■企業DATA

設立:平成10年1月

所在地:会津若松市インター西105

事業内容:ソフトウェア開発、ITインフラ整備・構築、システム運用・保守、ICTのプロモーション

資本金:3,250万円

従業員数:79人

http://www.sync.co.jp

(財界ふくしま2016年12月号掲載)


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