〝心を一つ〟に高品質な
ものづくり企業であり続ける
塩田金次郎 代表取締役
■受注量は11年で約3倍に増加
塩田 24歳の時に㈲塩田工業を石川町鹿ノ坂地内で創業し、昭和53年に現在の場所に本社社屋と第一工場を建設・移転、56年に第二工場を建設、平成3年に塩田工業㈱としました。弊社は家族を含め3人でテープレコーダーのヘッドの製造から始まりました。その後、昭和50年ごろからテープレコーダーの組み立てを開始しましたが、市場への新規参入や価格競争が激化し陰りが見えてきたこともあって、57年ごろからシャープ㈱のビデオデッキの本体の組み立てを開始しました。平成に入ると人件費の安い海外での製造に移行していき、京セラ㈱のPHSや天馬㈱のコピー機の組み立てを手掛け、平成11年から現在行っているエアーポンプとパソコン用OAコードの組み立て、検査を始めました。 エアーポンプは主に化粧品の容器に使用されているのですが、最近では中国人の「爆買い」に代表されるように日本製の化粧品需要が世界的に高まっている背景から受注量も増えてきており、開始当時の約3倍になっています。
──創業時から現在までの歴史を振り返って頂いての思いは?
塩田 縁があってテープレコーダーのヘッドの組み立ての話を頂いたのがきっかけで会社が始まりました。創業当時は弱電ブームもあって、弊社のような会社が多く起業していましたが、同時期に創業した会社のほとんどは存在していません。しかし、弊社は時代が移り変わる中でも生き残ってくることが出来ました。様々な失敗もありましたが、失敗を経験と捉え、その経験の上に会社が成り立ってくることが出来たのだといまは感じています。今後も失敗を恐れずに、成功を積み重ねていきたいと思います。
また、経営者として、従業員を抱える立場でもありますので、時代のニーズに対応しながら、会社の将来を左右する状況下における決断をしてきたことでいまがあるのではないかと感じています。
──平坦な道のりではなかったわけですね。
塩田 最初から利益が生まれる仕事というのはほとんどありません。これだと思うことを社員と輪になって続けていくこと、あるいは我慢をすることで、いつかは必ず芽が出ます。そのためには、消費者に喜ばれるものをつくり続けなければならないのではないでしょうか。そして、従業員とともにやってきてよかったと思える日がきっと来ます。最終的な決断を下す経営者は孤独な立場でもありますが、従業員あっての経営者でもありますので、包み隠さずに、伝えるべきことをしっかりと伝えて、一丸となって進んでいかなければならないと思っています。
──経営理念について伺います。
塩田 製造業である弊社は、1日の生産計画を着実に遂行し、社員相互の融和と信頼の中で、常に製品の品質と技術の研鑽に努め、生産性の向上を図っています。大切なのは、消費者に選ばれる高品質な、品質第一の製品を生産していくことです。
更には、利潤を追求し、従業員に還元していかなければなりません。前述通り、現在の仕事に至るまでには時代の変遷とともに様々な仕事を手掛けてきましたが、この間、取引先や従業員、地域の方々に大変ご支援を頂き、感謝しております。今後も、社員一同〝心を一つ〟にし、技術力の向上に努め、会社を発展させていきたいと考えています。
また、会社の命である従業員とのコミュニケーションも大切にしており、従業員の意見に耳を傾け、反映させることで、働きやすい職場環境づくりにも取り組んでいます。年2回のレクリエーションや毎年の研修旅行なども実施し、社員同士がふれ合う機会を増やしています。
──石川地方の雇用を支える優良企業の一つでもあります。
塩田 地元には高校が2校(県立石川高、学法石川高)ありますので、地元の高校生も積極的に採用してきています。これまでは、首都圏を中心に県外での就職を希望する学生が多かったのですが、最近は地元での就職を希望する学生が増えてきていると感じています。しかし、地元には働く場が少ないため、地元に就職を希望する学生を応援する意味でも、毎年の採用を続けています。そのため、若者が多い職場であると同時に、若者の雇用で地域の活性化にもつながればと思っています。地元企業として地域の人口増加などに向けたマチづくりの一翼を担えるよう、行政との連携も図りながら、地域へ貢献していきます。
「『NOトラブル・NOクレーム』100日作戦」実施
──製品の特長や生産体制について伺います。
塩田 明確な検査基準の下での品質検査を徹底しており、様々な注文にも柔軟に対応しながら、効率を図りつつ、高性能な製品をつくり上げるよう努めています。そのため、常に技術の研鑽をしていかなければなりません。弊社の技術が詰まった製品を見て頂いてメーカーなどから注文を受けるため、まずは我々の製品や会社を客観的に考え、どのように評価をして頂けるかを分析しています。ただつくるだけではなく、つくったあとの実績の評価を理解することで品質の向上に生かされます。
実際には、約11年前から「『NOトラブル・NOクレーム』100日作戦」を実施しており、トラブルやクレームをなくすために毎回、目標を掲げて社員全員で取り組んでおり、現在で39回を数えます。
──今後の展望を。
塩田 本社社屋の裏に新しい工場の建設を視野に入れており、現在ある2つの工場を合わせた機能とすることで、作業効率や経費削減を図っていきたいと考えています。
人材育成にも取り組まなければなりません。優秀な人材の確保も大切ですが、人材育成には力を入れており、現在、月2回、スキルアップのための勉強会を実施しています。ものづくりは「心」であると考えていますので、人間性も養いながら技術面の向上に努めていきたいと思います。今後も品質を最優先し、社員が心を一つに高品質な〝ものづくり企業〟であり続けたいと思います。 (聞き手・作間信裕)
■企業 DATA
創業:昭和47年5月
所在地:石川郡石川町大字形見字道橋81
事業内容:エアーポンプの組立・検査、パソコン
用OAコードの組立・検査
資本金:1,000万円
従業員数:47人
(財界ふくしま2016年10月号掲載)