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あの味この味 区切り

2016年4月1日

東北工業建設株式会社

浪江の復興と、提案型営業で
中通りでの基盤づくり

 

戸川 聡 代表取締役社長

 

■経営の構造転換が奏功した時に震災が…

 

 

――浪江町に本社を構え、工場や店舗などの民間受注や住宅建築を主体にしてきました。

 

 
戸川 震災前は民間建築と公共事業、そして土木工事がメーンでした。2010年から2011年に掛けては国の施策で公共工事が多かったのですが、先を見据えれば公共事業の目減りは避けられません。企業力をつけるために住宅事業部を立ち上げ、ハウスメーカーとフランチャイズ契約を結んで本格化した矢先でした。

 

 
――自社所有地を店舗にしたデベロッパー事業にも進出していました。

 

 
戸川 建設不況の打開策です。本社があった浪江町役場の向かいを造成してコンビニ、レストラン、お菓子屋さん、美容室、クリーニング店、携帯ショップのテナントが埋まっていたんですね。
決算では本業を不動産業の賃貸収入がカバーしてくれて、経営上は賃貸収入という収益の土台に本業の利益を積み重ねていける仕組みが出来ました。でも、当時は建設業界が厳しかったから事情を知らない知人と会うと「潰れたの?」とも言われましたよ。(笑)震災前の建設業は構造不況で縮小傾向でしたから、業界の誰しもが経営体力が落ちて本当にギリギリまで来てましたからね。

 

 
――震災と原発事故からどのように事業再開に至ったのですか?

 

 
戸川 私の家族は会津に避難し、その後はさいたま市に移りました。会津にいる時に避難先での当座の生活をするにも社員が困るだろうと思い、給与を前月ベースで振り込みました。その後は、社員の雇用や給料の相談に何度も大宮のハローワークに通ったのですが、あのころはまだ休業補償の制度も固まっていなかったですね。

 

 
当社の会長は当時、浪江町建設協同組合の組合長で、約15億円の浪江町地域スポーツセンターの体育館工事引き渡しが震災の10日後に控えていた。工事はストップしても、JVとしては一緒に竣工目前まで仕事をした業者さんにお金を払わなくてはいけない。何度も役所と交渉して、工事代金の清算に奔走しました。

 

 
会社は休業状態にしましたが、ご遺体の捜索などは休業しているから行けませんとは言えない。我々の使命として、社員に声を掛けて集まってもらいました。法的には休業申請をしているのだけれども、家が心配なので屋根の修繕や雨漏りを補修してもらいたいという依頼も多く寄せられましたからね。

 

 
当面は地元発注の工事は望めない状況にあって、福島市は復旧関係の仕事が動き出して業者が不足していたので、手伝って欲しいという要請を頂きました。震災後の5月に福島市の大手建設会社の資材置き場の一角にプレハブ事務所を構えて会社を再開しました。

 

 
■本業に関連した事業提案で、民間営業を推進する

 

 
――避難指示により、築き上げた営業基盤と顧客を失いました。

 

戸川 本来ならば育ててもらった地元の復旧に力を尽くしたいですよ。福島市で仕事をしている分には支障がないが、徐々に浪江に通い始めるようになりました。朝早くから福島市を出発して往復3時間の現場作業になるので、移動面ではいまだに苦労しています。
地元の建設業で構成する浪江町復興事業協同組合が国や県、町の仕事を請けた大手企業の共同受注の窓口となり、例えば、請戸小学校やマリンパークに集積したガレキを処分する前工程の選別などをしています。環境省の災害廃棄物の減容化施設などにも作業員を出しています。浪江町では復旧の姿が住民の目に見えるような補修や解体工事も増えました。
また、当社の場合、葛尾村で役場や村営住宅のなど過去に施工した物件を改修して帰還が可能な環境を整えています。そうした経緯もあって、最近では、中通りの仕事に手が回らない状況になりました。

 

――福島市に事務所を構えていますが、今後の事業展開については?

 

戸川 ここに構えたのは2012年の6、7月ごろですが、やはり通い仕事がネックですね。技術者は残ったのですが、32人いた社員も減っています。放射能のことは福島市の方も理解があるのだけれど、「欲しいな」と思う人も、通いとなるともっと条件のいいところで働きます。もったいないですよ。浪江が本社というのは変わらない思いですが、ほとんどの社員が福島市で暮らしてます。福島事業所も将来は福島支社にするなどして今後も置こうと思っています。

 

ただ、実績がない当社が福島市で行政の入札に参加してもすぐに受注は難しいし時間も要するでしょう。しかし、この中通りで元請けになる気持ちがないと、社員の雇用と生活を守れない。浪江で民間の誘致企業などを手掛けた強みを生かして、福島市でも民間の営業展開をしていきます。

 

飛び込み営業では相手にされないので、何か提案出来るビジネスがないかと実は去年の11月から環境衛生事業をスタートしました。ガロンボトルも対応しているのですが、一般的な水道水を特殊電解方式により電気分解して水素水を生成する「水素水サーバー」と電解水衛生環境システム「守る水」の提供です。これは㈱テックコーポレーションの正規販売店となっています。

 

水素水サーバーの法人営業展開から、中通りの企業さんとのつながりをつくっていきたいと思っています。電解水に関しては洗浄能力の高いアルカリ水と除菌や脱臭機能の高い酸性水の生成が出来ますので、食品工場などで利用されています。工業製品ではなく水による除菌効果なので、衛生品でありながら環境負荷も低い点に私も共感しました。千葉県の介護施設を視察したのですが、リネンや食事、居室内などで用途に応じてアルカリ水と酸性水を使っていたのが非常に印象的でした。

 

本業である建設業に関連した様々な提案をして、民間の競争に揉まれながら企業力をつけていく方針です。この先も福島市をはじめ、中通りでもだんだんと仕事が展開出来るように常にアンテナを広げ、本業の基盤の再構築とともに新たな事業の柱を育てる必要がありますからね。(聞き手・板倉 崇)

 

 

 

 

 

■戸川 聡代表取締役社長略歴
昭和47年1月27日、双葉郡浪江町生まれ。双葉高校から日本大学工学部を卒業後に入社。その後は常磐開発㈱に出向し、平成11年に帰郷して専務取締役に就任。浪江青年会議所理事長を務めた。24年10月に社長に就き、浪江町復興事業協同組合の専務理事も務めている。現在は福島市に自宅を構え、夫人と2男と暮らす。趣味は旅行、グルメ。

 

 

■企業 DATA

 

創業:昭和44年5月

 

所在地:本社/双葉郡浪江町大字藤橋字原59-1   福島事務所/福島市御山字検田58-1

 

事業内容:建設、不動産賃貸、環境衛生、産業廃棄物運搬処理

 

資本金:2,000万円

 

従業員数:20人

 

(財界ふくしま2016年4月号掲載)

 

 

 


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