メーカーに縛られず
最適な太陽光発電を提案
酒井勝行代表取締役
■農業+売電の農地活用にも着目
──建設設備を手掛けてきましたが、近年では、太陽光発電にもより力を入れ、10数メーカーの代理店を取得されました。
酒井 当社が扱い始めた14年ぐらい前は、そもそも(金額の)高いものでもありましたし、メーカーも積極的にアピールしていた商品ではなかったように思います。
当社の営業も、しつこく何回も行くことはしません。当然、訪問販売もしていません。しかし、太陽光発電を設置したい方は、(決断が)早いんですよ。当社でも、現場に行って、見積もりを出して、契約…といったように大体、3回ぐらいのやりとりで決めて頂くことが多いですね。当社が地元に配るチラシなどにも、ほとんど金額は載せていません。例えば、「皆さん原発は反対だと言うけれども、それに替わるエネルギーはありますか」と疑問を問い掛けるようなチラシとか、(太陽光発電の効果に)気が付いた方が導入する事例が多々ありますから、押し売りのようなものは考えていません。
当社ではよく比較表などを提示するのですが、例えば住宅で月々1万円の電気代が掛かっていれば、年間で12万円、10年間では120万円になってしまいます。電力会社には申しわけありませんが、いままで通り電力会社に払っていけば、何も残らない120万円です。しかし、太陽電池を付けることによって、その120万円のうちの7割ぐらいは賄えるはずなんです。(太陽光発電を)設置するという投資が終われば、あとは(電気代が)掛からないことになるわけです。売電するとお金が入ってくるわけですから、それをローンに回して頂くと。しかし、「電気代も払って、太陽光発電の設置代も払ってではやれないよ」と誤解されている方も多いので、よく理解して頂いて、検討して頂きたいと思いますね。
──複数のメーカーの代理店であることが御社の特色かと思いますが。
酒井 屋根や土地の面積に合わせて、それに見合ったメーカーを紹介させて頂いています。また、事業用においては、他社が提案してくる海外メーカーとの引き合いもあります。我々も海外メーカーを扱っていないわけではありません。しかし、日本にはしっかりしたメーカーが多く、劣化試験を通したメーカーであることをお伝えして、お客様に判断頂いています。海外には経営難で苦しんでいるメーカーも結構あるんです。日本から撤退してしまうと何の保証も付けられない。当社ではメーカー保証も付けていますが、民間の保険会社にも入って頂いています。
──東日本大震災と原発事故によって、再生可能エネルギーがより注目されるようになりましたが、どのような反応を感じていますか。
酒井 興味を持たれている方は多々増えていると思います。農林水産省が4月にソーラーシェアリングについて発表しました。農地の上に支柱を立てて太陽光発電で売電し、同時に農業も行うというその取り組みについて、特に最近、問い合わせが増えています。既に、経済産業省が太陽光発電協会を通して、福島実証モデルとして南相馬市でソーラーシェアリングのモデル事業に取り組んでいます。私どもも南相馬市で、ビニールハウスの上に太陽光発電を付けるという事業に参加し、間もなくお披露目となります。
福島の農業は風評被害に遭っていますが、農業を続けながら、上空を生かして発電も行うというこの仕組みを、これからはお勧めしたいなと思っています。
■電池で災害から家を守る
──いま御社では、太陽光発電と建築設備の業務との比率は、どのぐらいになっていますか。
酒井 9対1ぐらいだと思います。県内ではJAの仕事などもやらせて頂いているので、組合員が(太陽光発電を)やりたいんだけどといった紹介や、銀行からの紹介などが多いんです。建設会社に売り込むといったことはしていません。また、東京や関西方面など他方部から工事施工を頼まれることも多くて、着工は10月ぐらいになるかもしれませんが、メガソーラーの施工依頼も受けています。
──太陽光発電を扱う企業はたくさんある中で、御社に全国から依頼があるのはなぜでしょうか。
酒井 聞いてみると、太陽光発電協会からの紹介ですとか、メーカーからの紹介も多いようです。先ほどの南相馬市のビニールハウスでのソーラーシェアリングの仕事も、ソーラーフロンティア㈱から依頼を受けて工事をしたんです。
──それは、メーカーから信頼されている証でもあると思います。ご自身では、どのような取り組みが評価されてきているとお感じですか。
酒井 太陽光発電も、いきなり大きなものは出来ませんので、住宅用のものから始まり、徐々に大きな仕事を手掛けるようになっていった実績だと思います。
また、屋根の上だと打ち付けるタイプが多いのですが、永久磁石の架台を使ってみたり、内容に合わせて、様々な設置方式を使ってきました。普通の販売店だと、メーカーに勧められたものだけをセットで持っていこうとするので、合わないものがあったりするんです。パネルメーカーとはもともとつながりがありましたが、最近は架台メーカーとのつながりも濃くしていまして、「あの場所の場合、こういう架台を採用すれば負担が掛からないよ」などとお客様に提案したり、場所に合わせて、架台メーカーに独自の架台を作って頂いたり、オリジナル性を持った仕事も多いですね。
──今後の展望は?
酒井 住宅に関しては、自分たちの家は自分で守るといった考え方で、今年の夏ぐらいから蓄電池を勧めています。誰かに守ってもらう時代は終わって、災害があっても自分の家は(停電もせず)しっかりしているよというような家づくりが大事だと思います。新築工事の場合はハウスメーカーがスマートハウスなどといって、そういった提案をしていますが、既築住宅は我々、地域に密着した会社が進めていかなければならないのではと思っています。太陽光というよりも蓄電池という流れが、この5年から10年は進むのではないかと思います。 (聞き手・渡辺利彦)
酒井勝行代表取締役略歴
昭和43年7月4日、白河市生まれ。建築設備商社勤務から建築設備会社専務を経て、27歳で㈱ブレインを創業。市内の自宅に夫人、父母との4人暮らし。平成23年8月に福島県太陽光発電協同組合を設立し、理事長に就任。
■企業 DATA
設立:平成9年2月21日
所在地:白河市八竜神70-2
事業内容:太陽光発電システム・蓄電池・燃料電池・LED照明・オール電化販売施工保守・増改築リフォーム工事ほか
資本金:3,500万円
従業員数:12人
(財界ふくしま2013年10月号掲載)