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あの味この味 区切り

2013年5月1日

株式会社アクアマリンパークウェアハウス

津波からの再起を果たした
小名浜観光の雄

 

鈴木泰弘代表取締役社長

 

■人生の縮図を味わった東日本大震災

 

―現在の事業内容は?

 

鈴木 いわき市で食をテーマとした商業施設「小名浜美食ホテル」の運営を事業の柱としています。そのほかにも直営店事業の飲食部門で和食・イタリア料理店を、物販部門で食料品・土産品・婦人衣料雑貨などを扱い、外食事業で冷凍食品を製造・販売しています。

 

――創業についてお話し願えますか。

 

鈴木 平成12年に発足した小名浜の市民や企業など各種団体で構成された「小名浜まちづくり市民会議」では、市や県と連携してアクアマリンパークの整備など、小名浜港の再開発事業に取り組んできました。そこで小名浜港の一角に残った倉庫群の再開発が進められることになったんですが、同団体の事務局で倉庫再開発事業のキーとなる商業施設の企画・立案を担当した縁もあり、18年に倉庫を改修した商業施設「小名浜美食ホテル」の管理運営会社として創業しました。20年のオープン後は、住民によるイベントの誘致や、施設への出店もすべて地元企業にして、地域へのサービス徹底を目指した活動を行っています。初年度には約75万人の来場者を集めるなど順調なスタートを切ることが出来ました。

 

――アクアマリンふくしまやいわき・ら・らミュウと並ぶ小名浜の観光名所となった小名浜美食ホテルですが、23年に発生した東日本大震災によって一時休業を余儀なくさました。震災当時のお話を伺えますか。

 

鈴木 3月11日の震災発生時は、ちょうどアイドルタイム(ランチタイム終了後の時間)だったこともあり、従業員と何組かのお客様だけでした。震災発生とともに、海のそばの立地ですから津波の危険性もあるので、避難マニュアル通り建物の2階に避難しました。

 

その後、目の前に海上保安庁の事務所があるんですが、海保の方が鬼気迫る声で「大津波です。すぐに逃げてください」と案内をしてくれました。ものすごい勢いでの避難指示だったので、すぐに建屋を全部戸閉まりしてお客様を避難させました。それが1回目の津波の時ですね。避難場所には小名浜第二小学校が指定されていましたので、社員みんなで集合しました。避難が完了した20分後に一発目の津波が来ていましたが、その前の時点で、地震の影響によりアクアマリンパーク周辺は地割れや液状化現象でひどい状況でした。

 

当日はマチ中まで津波が来まして、もう施設には入れない状態でした。後から聞いた話では夜に来た津波が一番ひどかったらしく、この周辺は壊滅的状況になりましたね。小名浜美食ホテルの建屋も全壊しました。工事費だけではないですから、厳密な計算は出来ませんが、5億円ほどの損害を今回の震災で受けましたね。

 

■地域と連携してともに成長する企業に

 

――9カ月後の12月17日には再オープンを果たすことになりますが、再開までの道筋はどのようなものだったのでしょうか。

 

鈴木 当時は4月20日の小名浜美食ホテル創業記念日に向けて、周年祭やキャンペーン企画を作っていたんですが、津波で全部ダメになってしまいました。しかしそのまま待っているだけでは何も始まらないので、4月20日に小名浜のタウモンール「リスポ」の中に仮店舗「小名浜まちなか美食ホテル」をオープンさせたんです。5坪くらいの小さいところですが、飲食と物販を始めまして、とにかく12月の再開まで耐えしのごうと何とか生き延びてきました。

 

津波は本当に大きな災害ですが、津波よりも再開したあとの方が本当に大変でしたね。再開するための労力・努力というのはゼロではなくマイナスからのスタートになりますから、この苦労は半端ではないです。再開をするにしても、売り上げやお客様が以前より減ることは百も承知の上ですが、会社を実際に動かしてからが本当に災害の影響を痛感しました。

 

正直な話ですが、人生の縮図をこの震災後の1~2年間で味わったと思います。これは言葉では言い表せないですね。あの時何が起きたとか、大変だったとか振り返れるレベルの話ではないですよ。今後、経験したくても出来ないだろうし、世の中の厳しさも人様の優しさも十二分に味わいました。

 

――再開時のお客様の反応は?

 

鈴木 再開が12月だったんですが、年明けに帰省される方を中心にたくさんのお客様をお迎えして、素晴らしいスタートを切ることが出来たと思います。震災後、久々に帰ってきて、美食ホテルも含めて津波で休止していたアクアマリンとら・ら・ミュウの隣組3軒が、みんな顔をそろえて営業していることも評価して頂けたと思います。お客様からは「良かったね」とたくさん声を掛けて頂きました。

 

――今後の展望については?

 

鈴木 この時期にも業種によって景気のいいものも悪いものもありますが、我々観光業界はその中でも苦しい部門に入っていると思います。ただ待っているだけではダメですし、復興支援や特需で一時的にやってきた観光客を悠然と構えて数字を取ったとしても、いずれは衰退していきます。

 

だからこそ震災後のこの時代にマッチした新たなビジネスモデルを自分たちなりに作っていく必要があると思います。例えばこちらから県外に出向いて営業を展開することも当然でしょうし、食を切り口としてお客様に「あそこに行けばこんな良いものがあるんだ」と言って頂けるような商品のブランド化を進めていきます。その一つがSea級グルメ全国大会で優勝に輝いたオリジナル食品「カジキメンチ」の販売展開でもありますし、地域として盛大にイベントを開催し名物を作り、外部に情報発信をするなど新たなビジネスモデルを展開していきたいですね。

 

私は漁のマチ、小名浜の生まれなので少々口は悪いかもしれませんが、「手前さえ良けれりゃそれでいい」という考え方ではもうダメだと思います。地域に立脚して、地域の方々と連携してイベントの展開などを行い、商品がブランド化すれば同時に地域の知名度も向上していくような取り組みを明確に打ち出していきたいですね。(聞き手・丹野 育)

 

鈴木泰弘代表取締役社長略歴

 

昭和41年8月27日、いわき市小名浜生まれ。城西大学経済学部経済学科卒業後、平成元年にいわき商工会議所に入社。18年に㈱アクアマリンパークウェアハウスを創業し現職に就任。現在はいわき市で夫人、愛犬と暮らす。趣味は犬の世話。座右の銘に「探究無限」を挙げる行動派。

 

■企業 DATA

 

所在地:いわき市小名浜辰巳町43-9

 

事業内容:小名浜美食ホテル(ショッピングセンター)管理運営、販促イベントの企画運営業務、飲食店、物販店の経営

 

資本金:1億6,500万円

 

従業員:30人

 

http://www.bishokuhotel.com/

 

(財界ふくしま2013年5月号掲載)

 

 


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