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あの味この味 区切り

2013年4月1日

株式会社鈴弥洋行

売り切り型から
ストックビジネスへ

 

鈴木幸雄代表取締役

 

■バブル崩壊を契機に経営を見直す

 

――起業の経緯をお聞かせください。

 

鈴木 もともとは福島市内にある事務機器の販売会社に勤めており、昭和48年に開設された郡山支店の初代支店長として、郡山に赴任してきました。そこで、社員を現地採用で指導し顧客の新規開拓に励み、優良顧客を増やしておりましたが、昭和51年の第2次オイルショックから本社の業績がだんだんと悪化し、会社がメーカー管理となり実質的な倒産に近い形になってしまいました。メーカーが引き上げれば倒産し、顧客に保守サービスを提供することが出来なくなります。そのため、自分で開拓しお世話になってきた顧客に迷惑を掛けないよう昭和54年に独立しました。

 

――経営基盤を商品の売買利益から、保守サービスやシステムサポート契約などのストックビジネスにシフトさせたきっかけは?

 

鈴木 会社設立後はOA機器やオフィス家具の販売を中心に順調に経営を行っておりましたが、バブル崩壊が起きたことで、いままでのような人間関係を大事にした取り引きから、損か得か、安いか高いかが世の中の風潮になりました。そのため、商品の流通が変わって価格破壊が起こり、商品の売買利益だけでは内容のいい経営が難しくなったんです。

 

そういった流れに反発すれば、顧客視点からの満足を提供することに反してしまいます。必要なのは、他社よりもより良い製品をどこよりも安く、より感じ良く商売する会社に変革させることでした。当時、販売収入は粗利ベース構成比で7割ありましたが、売り切り型の「ご破算商売」からの脱却を図るため、労働対価による高利率の保守サービスやシステムサポート、そして販売後の消耗品が大きい情報機器やデジタル印刷機の販売に注力し、それら毎月安定しているストックビジネスでの利益構成比を上げ、商品の売買による構成比を下げることに努めました。
 

 

ストックビジネスとは、情報機器の保守料や消耗品の供給、システムのサポート料など毎月安定的に得られる収入のことです。例えば、ネットワークシステムのサポート契約を新規で5件契約したとします。サポート料が2万円として月10万、毎月同じ5件の新規契約を重ねると1年後には月120万になります。一つひとつの金額は小さいものかもしれませんが、積み重ねることで安定した収入になるんです。

 

――ストックビジネスの比率を上げる利点は?

 

鈴木 何と言っても、これによりお客様に商品を安く販売出来ることですが、こういったメンテナンスやサービスの強化を図ることで、顧客との接点が増えて結び付きが深くなることも挙げられます。保守料などのほかに、もう一つストックになるのが情報機器の買い替えですが、リース期間の終了前にほとんどのお客様からリプレースして頂いており、その数年後の機器の売り上げ見込みのストックにもなっています。

 

また、当社のストックビジネスの比率は6割強で、残りの4割は販売が担当していますが、こういったストックビジネスの比率を大きくすることで経営が非常に安定していきます。一般的に、損益分岐点を売上目標の9割ぐらいに設定している企業が多いのですが、バブル崩壊後は売上目標の7、8割しか届かないということもあり、損益分岐点を下回る危険が非常に多くなりました。

 

しかし、安定的な収入が会社全体の粗利構成比6割強、販売での粗利構成比が4割であれば、販売がたとえ売上目標の75㌫しか届かなくても、全体の4割の中の75㌫で3割となり、全体では1割減に留めることが出来ます。つまり、どんなに営業が悪い時でも売上目標の9割に到達し損益分岐点を下回ることはありません。ストックビジネスの比率を上げることで、営業実績のブレの影響を最小限に留めるが出来るんです。

 

■顧客、メーカーから信頼される会社に

 

――昨年8月に、経営情報誌「日経トップリーダー」(日経BP社)と東京商工リサーチが共同で全国約40万の中小企業を調査し「本当に強い中小企業ランキング」を発表しました。その中の小売業界部門で1位に選ばれています。
鈴木 自己資本比率と売上成長率の指標を基に、企業規模ではなく中身で評価して頂きまして、私自身も日経ビジネスの取材の電話で大変驚きました。当社は創業以来、一貫して「お客様に満足を頂く」商売を行って参りました。「損して得取れ」の考えを実践し、常に顧客満足価格で愛嬌と感じの良い商売を基本にお客様のご要望に応えてきました。それが、ここに来てようやく実を結んできているのだと思います。

 

顧客はどこよりも安く品質の良い商品を求めています。我々はバブル崩壊後、機器販売では儲けようとせず、出来るだけ安く品質の良い商品を提供して来ました。経営を良くすることは当然ですが、それは何も商品を高く売ることではありません。ストックビジネスの比率を上げることによって、経営が安定して機器の値段を出来るだけ低く抑え、安く販売することが出来るのです。

 

こうして経営基盤を強固にし、お客様から信頼されることで、各部門のトップメーカーの代理店を取ることが出来ます。当社は社員が30数人の小さな会社ですが、一昨年には東芝の情報機器の代理店として地元大手の他社さんとの競争の中で、郡山市の全中学校にパソコンとサーバーのネットワークシステムを納入することが出来ました。またオカムラ製品代理店として、震災被害での社屋建て替えで大手顧客からオフィス家具物件を相次いで受注を頂いております。これらは、顧客やメーカーに対して信用を大事にしてきた結果だと思います。会社の内容を良くしてメーカーから信頼をされることで、より良いメーカー製品を取り扱い、顧客からも信頼を得ることが出来るのだと思います。

 

顧客やメーカーから信用を得るには長い年月を要します。大事なことは、常に顧客視点に立つことです。夜7時、8時にクレームが来てもしっかり丁寧に応対する。創業以来、我々は常にその方向でやって来ました。それがいまに生きています。(聞き手・斎藤 翔)

 

鈴木幸雄代表取締役略歴

 

昭和25年7月15日、伊達市保原町生まれ。保原高校を卒業後、44年に福島市の事務機器販売会社に入社。54年に独立し現職に就任した。公職では、郡山西部地区商店会長、郡山市商店街連合会副会長を務めている。

 

■企業 DATA

 

創業:昭和54年

 

所在地:郡山市桑野4-7-6

 

事業内容:PCソリューション、情報システム機器、  オフィスシステム

資本金:1,200万円

 

従業員:31人

 

http://www.suzuyayoko.co.jp/

 

(財界ふくしま2013年4月号掲載)


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