【2026衆院選】福島2区 情勢分析
精力的活動の浸透で公明流失と参政出馬をしのげるか
△玄葉光一郎 61 中道前⑪
▲根本 拓 39 自民前①
丸本由美子 63 共産新
大山里幸子 52 参政新
遠藤 雄大 41 無所属新
有権者数:419,035人
▼郡山でも強さを見せた玄葉
福島2区は、立憲民主党から新党「中道改革連合」に参加した前職(11期)の玄葉光一郎(61)と、自民党の前職(1期・比例復活)・根本拓(39)、共産党の新人・丸本由美子(63)、無所属で新人の遠藤雄大(41)が立候補を予定しているほか、昨年の参院選で大躍進した参政党も、大山里幸子(52)の擁立を決めた。
郡山を地盤とする参政の大山は、昨年の参院選福島選挙区で善戦し、18万4,286票を獲得。得票率21.5㌫だった。福島2区で見ると、5万5,354票を獲得し、自民現職(8万6,605票)と立民新人(8万1,576票)に迫る勢いを見せた。選挙戦では神谷宗幣代表が福島入りしたほか、親交のある田母神俊雄元航空幕僚長らが応援演説に立ち、保守層や無党派層、更には野党系の支持層からも票を集めたといわれる。前回同様の実質的な一騎打ちと目されていた玄葉VS根本の構図は、立民&公明の新党結成や、参政候補の出馬で、急激な変化が生じている。
一票の格差を是正する目的で衆院小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法により、前回から本県小選挙区の定数が5から4に減少。郡山市を中心とした旧2区のうち二本松市・本宮市・安達郡が新1区に移り、残る郡山市と、旧3区のうち須賀川市・田村市・岩瀬郡・石川郡・田村郡が新2区に。白河市や西白河郡、東白川郡は会津地方を加えた新3区となった。
一昨年10月27日投開票で行われた前回は、立民の重鎮、玄葉が他候補を振り切り、11回目の当選を果たした。新たな区割りの下、当初、旧3区・田村市出身の玄葉と、旧2区・郡山市出身の根本匠(自民・9期)とのベテラン同士の初対決と目されていたが、同9月29日に根本が引退を表明。子息の根本拓が地盤を引き継ぎ、一気に追い上げを図った。共産も新人・丸本由美子を擁立し、三つ巴の戦いとなったが、玄葉が地元・旧3区の強固な後援会の組織力に加え、新たな選挙区・郡山市では、母校(安積高校)OBや岳父(佐藤栄佐久元知事)の地縁・血縁なども生かして支持を広げた。前回の得票数は、玄葉12万3,256票、根本9万2,616票、丸本1万2,594票。
根本拓は復興大臣や厚労大臣を務めた父・根本匠の引退を受けて、同10月に立候補を表明。「政治とカネ」の問題など与党・自民党へ逆風が吹き荒れる中、国際弁護士としての経験と世代交代の必要性を訴え浸透を図った。自民の組織力とともに、自身も企業経営者や学生との対話を生配信するなど、短期間での知名度向上に力を尽くし、立民ベテラン・玄葉に挑んだ。小選挙区では惜敗率75.141㌫で敗北したが、自民の東北比例、最後の1議席を手にした。
玄葉はその後、本県関係議員では故・渡部恒三氏以来、21年ぶりの衆議院副議長の要職に就任した。
▼精力的な活動で浸透図る根本
選挙区改変で、旧3区の玄葉は、5分の3以上が新しい有権者(郡山市)となった。旧3区で相手候補を寄せ付けない強さを誇ってきた玄葉だが、近年は自民の上杉謙太郎(2期)が精力的に支持基盤の拡大を展開し、令和3年の衆院選では、白河市・西白河郡・東白川郡で、上杉が玄葉より多くの票を獲得していた。白河地方で人気に陰りが見えていた玄葉。その敗北した地域が新選挙区から切り離され、勝利した地域のみが新2区に残ったことは、玄葉にとって好材料となった。更に、大票田の郡山市で地縁・血縁なども生かして支持を広げ、勝利を手にした。
令和3年の衆院選を新2区地域の票数で見ても、自民(根本匠&上杉謙太郎)が11万8,343票、立民(馬場雄基&玄葉光一郎)が12万7,095票で、立民の方が上回っていた。しかし、前回の結果と照らし合わせてみると、自民が新人・根本拓に緊急交代しても、旧3区ではほぼ変動がなかったことが見えてくる。根本匠や上杉が、社会資本整備など地域の期待に応えてきた姿勢が、与党議員への評価として根付いている表れといえるだろう。
遡れば佐藤栄佐久後援会が根本匠後援会に移行し、そして、根本匠から子息の拓へと代替わりした。一方、佐藤栄佐久元知事の娘婿の玄葉が新2区から立ったことで、郡山の構図も様変わりしている。
その結果が、前回の票数に表れたわけだが、選挙後、
「玄葉は前回がピーク。あとは根本拓がそれをどこまで切り崩せるかが腕の見せどころだ」
とある自民関係者は話し、加えて、
「匠さんが何十年も掛けて築き上げてきたところを、1年程度で歩けるわけはないです。前回の選挙戦は、時間が足りなかった。でも、拓さんの人懐っこくて可愛がられやすい姿は、会えば分かる。かえって、いままで玄葉さんしか知りませんでしたというような旧3区の人たちの方が、会えば変わるのではないか。将来性という意味でも、玄葉さんは将来、県知事に行くでしょうから、国政は拓さんに任せましょう、育てがいのある優秀な人物でしょうと」
と時間を掛けて浸透していくことに期待を寄せていた。
昨年10月に高市早苗自民党総裁が誕生。自民党支持率は伸び悩むものの、高市内閣の支持率は高水準を維持し、そして根本も自身の支持拡大に力を注いできた。根本支持者の一人は、
「拓さんは当選後のこの1年で、彼じゃなければここまで動けなかったよね、というぐらい精力的に動いてきました。例えば、看護師、介護士、保育士の皆さんとの対話集会のようなものを結構やってきて、比較的若い世代とコミュニケーションをとっていたので、それがどのぐらい票に出てくるか。だいぶ浸透してきましたので、前回とは全く違った戦いになると思っていますが、もっと時間は欲しかったですね」
と任期4年の半分にも満たない1年3カ月での解散総選挙に、悔しさもにじませる。
▼挑戦者・根本に公明票流失の試練
更に昨年の高市総裁誕生後、長年にわたり連立政権を組んできた公明党が離脱。今回の解散総選挙に当たり、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成し、玄葉も入党した。これまで選挙協力関係の下、小選挙区で自民候補に投じられてきた公明票が、中道候補に流れると目される構図へと変化した。
衆院選各選挙区ごとの公明票は、全国的に1~2万票と言われている。郡山市のある選挙通は、県議選郡山市選挙区の票数から、
「公明の今井(久敏)県議は約1万票だった。公明支持者が100㌫入れているわけではなく、自民系の支持者の中にも今井さんに入れている人がいると考えても、郡山市内の公明票は1万票前後。ただし、前回の衆院選で自民の根本にどのぐらい入ったかというと、その6割ぐらいではないか。今回、中道改革になったとはいえ、いままで『根本』と書いてきたのに、『玄葉』と書くのは抵抗があるという人も中にはいると思います。人と人との付き合いもしてきているわけですから」
と話し、公明票の動向は読み切れないともらすが、いずれにしても、玄葉を追い掛ける根本にとって、その票を失うのは痛手でしかない。
中道改革の結成については、田村地方の経済人から、
「立憲の票と公明の票を合わせたらどうのこうのとかオールドメディアは言っていますが、はっきりいって、立憲はかなり票を減らすのではないですか。オールドメディアの読みは、全然違うと思いますよ。SNSなどネット上では、申し訳ないけど立憲を相手にしていないですし、公明の政策を丸飲みですよね」
という批判も聞こえてくるが、
「ただ、玄葉さんは立憲票というより、玄葉党ですから、田村や須賀川など地元の根強い支持があるので、相変わらず強いのは間違いない」
と結論付けるように、玄葉票は党派を超えた玄葉個人の支持者で成り立っていることは、党派が変われど、対抗馬が変われど、衆議院議員11期と期数を重ねてきた強さからも明らかだ。
昨年の福島市長選の対応をめぐり、立民県連は支持母体である連合福島から「関係凍結」を通告された。急転直下の解散総選挙に、その労組票の行方が注目される中、5者協議会(立憲民主党県連、国民民主党県連、社民党県連、県議会会派県民連合、連合福島)は、玄葉をはじめ福島1~3区の立民現職3人を支援する方針を固めた。
根本陣営の関係者は、
「玄葉さんがかなり強いのは間違いないけれども、根本さんが玄葉票を切り崩し始めている感じはする。拓さんは東京大学法学部から東京大学法科大学院、ハーバード大学法科大学院を卒業した超エリートですが、本当にいい若者で、性格がいいですよね。素直な一生懸命さが伝わってくる。あれだけの学歴もあるから、支持者の間では、『福島から総理を出そう』というような雰囲気がある。父親世代は玄葉さん支持でも、息子世代は拓さん支持という変化が出てきている。若者世代の高市人気の高さと、拓さんの新鮮さで、浮動票をどれだけつかむことが出来るか」
「前回の75㌫なんて惜敗率では、絶対に上がれない。前回重複立候補出来なかった人も復帰してきますから、95㌫以上の戦いをしなければいけない。『今回も比例復活なら行けるかい?』と聞いてくる人もいますが、『いやいや、勝つ気で行きます』と言っています」
と気を吐く。
迎え撃つ玄葉陣営は、強固ながらも、
「玄葉さんは、新たな選挙区となった郡山市をはじめ、前回の選挙まで相当動いていましたけれど、いま副議長という立場にもある中で、少し動きが見えづらくなっているところはありますね」
と選挙通の一人は話す。また、過去には野党共闘で出馬を見送り立民候補に協力したこともある共産が、前回に続き今回も独自候補を擁立したことで、野党票が割れることは、自民・根本にとっては好材料となる。
▼参政出馬で利するのは…
小選挙区候補者擁立を模索してきた参政党は、1月21日の党本部定例記者会見で、福島2区から大山を公認候補として擁立すると発表。大山は翌22日に記者会見を開き、立候補を表明した。高市政権との親和性もあることから、今回の衆院選における参政の立ち位置や戦略が注目される中、神谷代表は21日の党本部定例記者会見で、中道改革連合の〝中道〟に異を唱えるとともに、
「結局、企業団体とか多国籍のグローバル企業の意を受けてやる旧来の自民党政治が続いていきそうだと感じているので、今回の選挙は自民党と正面からガチンコで戦う」
と宣言した。
大山自身は22日の記者会見で、「政治を他人任せではなく自分事として考えたい」という初心を大切に、前回の参院選での経験を踏まえ、県民の声を届けるために再び立候補することを決意したと話し、他党の動向などは意識せず、
「減税と積極財政を訴えていきたい。私は、県民の皆様に参政党の政策をただただ訴えていくだけ。皆さん一人ひとりにいま何が必要なのか、何を求めているのか、自分自身に問い掛けて頂きたい」
と選挙戦への思いを示した。比例重複となるか22日時点では発表がないが、同席した畠山勝彦参政党東北ブロック長は、
「影響力を行使出来る第三極を目指すというのが今回の目標になっています。まだまだ参政党は、多少は皆さんに知って頂きつつあるとはいえ、なかなか小選挙区で勝つのは難しいと思っています。東北はまだ(参政党の)国会議員が一人もおりませんので、東北ブロックの比例で何議席か、ぜひ東北で国会議員を誕生させたいというのが悲願です」
と党勢拡大について答えている。
選挙通からは、
「参政党が出馬すれば、自民党の保守票が削られて、根本拓は更に厳しくなる」
「(根本拓にとって)与党批判の受け皿として、玄葉に票を持って行かれるよりは、参政党に食われて分散してくれた方がいいが」
といった声が聞こえていた。ある自民支持者は、
「ただ、見方次第で…。昨年の参院選は、参政の大山が出てくれたお陰で、立民(石原洋三郎)から反自民票が切り崩されて、こちら(自民・森雅子)が勝てた可能性もなくはない」
とも振り返るが、保守色が強い高市総理の下、その高市人気から浮動票獲得も目論む今回の自民としては、支持層の重なる参政の出馬はマイナスとの見方が強い。高市総理による電撃解散からの短期決戦突入で、高市自民党に吹くのは神風か、隙間風か。(渡辺)




