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あの味この味 区切り

2018年9月1日

いわきユナイト株式会社

いわき初の地域商社として
食の価値と流通を創り上げる

 

田子哲也 代表取締役CEO

 

■結果的に6次化にする

 

――いわき市初の「地域商社」として平成28年に設立されましたが、具体的にどのような会社なのでしょうか。

 

田子 当社はいわきを中心とした県内の地域資源を活用して食の価値と流通をつくることを目的に、現在は地元の生産者や食品メーカーと連携した商品プロデュース・ブランディングをはじめ、出口ありきの「売れる商品」の開発支援と販路開拓、農林水産業の儲かるモデルの構築などに取り組んでいます。特にマンパワーに限りがある中小企業においては「社長兼営業マン兼工場長」といったケースも多く、そういった中で大変な労力となる商品開発に取り掛かることはなかなか難しいのが現状です。そのため、当社では食品メーカーと一緒になって会社の強みを生かした商品開発や既存商品の価値を高めていくとともに、商社として市内や首都圏を中心に販路開拓を行うなど、皆さんが生産に専念出来るようその助けとなる事業を行っています。

 

――出口ありきの商品開発とは?

 

田子 一般的に6次化というと、生産(1次)→加工(2次)→流通・販売(3次)という流れで進んでいくものですが、多くの皆さんは商品をつくったあとの〝出口〟の部分で躓いてしまうケースが多い。そのため、当社では販売から先行していく3次→2次→1次という逆からのアプローチをしているんです。

 

売れる商品を開発し、販売先に働き掛ける。そして、原料についても加工するのが地元メーカーであれば、〝最初は〟地元産にこだわっておりません。この方法では生産が一番最後になってしまうものの、商品をたくさん売り上げることで年間の生産量をしっかりと固め、結果的には生産者に安定した依頼をすることが出来る。私はこれを「結果的に6次化にする」と言っています。

 

――御社は田子さんと植松謙(代表取締役COO)さんとの共同代表で経営を行っていますが、それぞれの役割はお聞かせください。

 

田子 当社はもともとは中小企業診断士である植松が立ち上げた会社で、昨年9月にいわき信用組合さんなどが運営に携わる「岩城国地域振興ファンド」からの投資を受け、この地域商社事業が本格化しました。私が共同代表者として加わったのもその時で、いまもそうですけど私自身、市内で食品卸売会社を経営していたため、取引先だった信組さんから流通の専門家として参画して欲しいという話を頂いたんですね。現在は、事業内容の診断や補助金関係の手配、各種団体との連携などを担当する植松に対し、私は専ら営業マンとして商談等を担当しています。

 

■会社の強みを前面に出す必要はない

 

――御社でプロデュースした㈱いわき遠野らぱん(いわき市、平子佳廣社長)の「月色プリン」が大好評のようですね。

 

田子 いわき遠野らぱんさんはレトルト食品のOEM(他社ブランド商品生産)を得意とする会社で、その製造技術は全国でも高く評価されているのですが、OEMは自分で生産をコントロール出来ないため、売り上げの中心となる自社ブランドの開発に取り組んでいました。そういった中で当社に相談があり、これならばとプロデュースしたのが「月色プリン」だったんですね。

 

このプリンの一番の特徴は、常温で4カ月持ち、しかも食感がなめらかだったこと。ただ、それまで商談会では高い評価を受けていたものの、実際の売り上げには直結していなかった。なぜかというと、消費者にとってそれはあまり関係ないことだったからなんです。

 

そこで当社で行ったのが、原料に使っていた酪王牛乳さんに許可を頂き、パッケージに「酪王牛乳使用」という文言を入れるとともに、それまで微量に入っていた「コラーゲン」を1000㍉㌘まで増やしたことでした。いま話題の酪王牛乳とコラーゲンたっぷりという2つのワードを前面に打ち出すことで、消費者にとって魅力的に映るよう再ブランディングしたんです。

 

ただ、このプリンは1個400円以上もするため、たとえ欲しくなったとしても家に持ち帰ったり、人にあげる途中で傷んでしまったらとリスクの方を気にしてしまいますよね。その時にやっと強みとしていた「常温で4カ月持つ」につながるわけなんです。

 

――高級だからこそ、消費期限や冷蔵を気にせず安心して持ち帰られるのは大きな武器になりますね。

 

田子 ですから、強みは何でも前面に出せばいいかといえば実際そうでもなく、最終的につながればいいわけです。また、販売に当たっては 「手土産」をキーワードにサービスエリアを中心に販路開拓を進めていきました。普通のプリンと並べると高く感じてしまいますが、一方でサービスエリアで3個1200円で買えるとなると、手土産としては逆に安いと思えますからね。

 

月色プリンは、当社がプロデュースするまで1カ月で600個ぐらい売り上げていましたが、お陰様でいまは5000個にまで伸ばすことが出来ました。目標としては今年中に月1万個、最終的には2万個を目指しているところです。

 

――最後に今後の目標を。

 

田子 月色プリンとともに、当社でプロデュースしている地元産の野菜や果物を中心に使った和風ピクルス「おここさん」の更なる販売促進をはじめ、将来的にはパパイアプロジェクトを立ち上げる予定です。

 

本来、地場産品を外に発信するのが当社の目的なんですが、このプロジェクトでは市内で栽培したパパイアを外ではなく、地元で消費しようというものになります。「フラのまち」のいわきでは、南国のパパイアが食べられる。このパパイアをキーワードに、市内の観光業や飲食業などの異業種との連携を深めていきたいですね。

 

また、パパイアにはがんの抑制や健康に非常にいいとされる「パパイン酵素」が含まれています。いわきでパパイアの食文化を広めていき、将来的に原発事故があったけど、いわきには健康な人が多いねと言われるようになれればと思っています。(聞き手・斎藤 翔)

 

■田子哲也代表取締役CEO略歴

 

和44年3月9日、いわき市生まれ。四倉高校を卒業後、市内の㈱マルトに入社。食品メーカーに転職した後、平成24年に食品の卸売業を営む㈱T-Advanceを設立。29年8月に共同代表者として同社に参画した。現在、市内で夫人と子供3人の5人暮らし。趣味はトランペット。

 

企業 DATA

 

設立:平成28年8月

 

所在地:いわき市平字田町120 LATOV6F P3

 

事業内容:いわきを中心とした県内の地域資源を生かした商品のブランディング・プロデュース、農水産物・農水産加工品の卸売・小売、企業・店舗に対するコンサルティング

 

資本金:1,100万円

 

従業員:3人

 

(財界ふくしま2018年9月号掲載)


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