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あの味この味 区切り

2016年6月1日

東北協同乳業株式会社

「11/19-B1乳酸菌
ヨーグルト」で福島の酪農再生へ

 

 

今長谷 浩 代表取締役社長

 

 

■独自の放射能検査を徹底

 

 

──まずは、御社の理念や経営方針について伺います。

 

 
今長谷 当社は昭和41年12月に協同乳業㈱と安達太良酪農業協同組合が共同出資をして設立し、その後、安達中部酪農業協同組合と耶麻協同乳業組合が資本参加しており、まさに生産者がつくった会社であります。平成17年3月には、JA全農が協同乳業より保有株式を譲り受け、100㌫の株式を取得しました。会社理念の酪農乳業を通じ地域社会に貢献するため、地元生産者の方が絞った生乳を安定的に使用(購入)することで、生産者の安定的な経営に寄与します。更には、常に品質向上に努め、「安全・安心」な商品をお届けし、安全で安心な牛乳や乳製品を安定的に供給することで、健康的な食生活に貢献し、全社員一丸となって夢と希望に満ち溢れる会社を目指すことを理念に掲げています。

 

 

 
──震災及び原発事故の影響は?

 

 

 
平成21年度の売り上げは53億円でしたが、震災後は原発事故の影響を受け約2割程度減少しています。商品数は約100品目ありましたが、震災後は57品目に減らしました。工場の機械設備は甚大な被害を受け、修理に約1億円以上掛かり、全品目が製造を再開するまでには、4カ月掛かりました。

 

 
瓶牛乳については、機械の老朽化に加え、震災の被害も大きかったため製造再開を諦めざるを得ませんでした。震災当時、牛乳を優先的に再開しようと従業員は不眠不休で復旧作業を行い、3月20日に牛乳を製造出来るようになりました。ところが、放射能汚染により生乳そのものに出荷制限が掛かり、製造を断念せざるを得ませんでした。

 

 
出荷制限が解除された3月28日に製造を再開し、まだ復旧していない牛乳の製造会社もあったことから、地元スーパーを中心に売れ行きが好調でした。その後、他社が製造を再開し、道路網が復旧すると原発事故の放射能汚染による風評被害もあって、売り上げも落ち込み、当社の主力商品である牛乳の売り上げは、現在も震災前の約4割程度となっており、回復の兆しが見込まれず、いまだに下がり続けています。一部のスーパーでは、風評により福島県産の生乳を使用している当社の商品を取り扱ってもらえなくなってしまいました。基礎食糧である牛乳は、毎日飲む家庭が多く、特に小さなお子さんがいる家庭では、福島県産という点から遠慮されてしまいがちにあります。当社としましては、2000万円を投資して、ゲルマニウム半導体放射能検出器を導入し、独自に全品目の放射能検査を徹底して行っています。

 

 
──そういった中、震災後には「11/19-B1乳酸菌ヨーグルト」を開発されました。

 

 
今長谷 前述の通り牛乳の売り上げが震災後は伸び悩んでおりますが、発酵乳は震災以前より増えており、大きな要因として、震災後に開発した「11/19-B1乳酸菌ヨーグルト」の影響が大きいです。

 

 
いまから3年前の平成25年1月に、東京大学大学院薬学系研究科・薬学部の関水和久教授から、新種の乳酸菌「11/19-B1株」を使用して震災復興と福島県民の健康に役立てたいので、当社と共同開発するご提案を頂きました。資金面で悩まされた部分もありましたが、関水教授の思いや親会社の全農から後押しされ商品開発を始めました。乳酸菌は、通常の乳酸菌と比べて発酵の温度帯が低い上に発酵時間が非常に長く、試行錯誤の結果、平成26年7月に発売開始することが出来ました。

 

 
地元の生乳をふんだんに使用し、口当たりが滑らかで、酸味を抑えたのが特徴です。また、便通やアトピーの改善に効果があるという報告も届いています。いまでは、主力商品の「農協牛乳」とともに当社の柱の商品になっております。

 

 
──販売開始から間もなく2年が経過しますが、手応えは?

 

 
今長谷 少しずつ県内での認知度も上がっていると感じており、製造面で手間も掛かることからネット販売や宅配、JAの直売所、道の駅、高速道路のサービスエリアなどで取り扱っており、病院、学校、幼稚園、老人ホームでも採用されています。ほかにも、県内外のイベントに参加して、直接お客様に購入頂けるような取り組みも行っています。

 

 
■地域と支え合って半世紀

 

 
──乳業界の現状について伺います。

 

 
今長谷 牛乳については、少子高齢化の影響でピークの平成6年ぐらいから少しずつ消費量が右肩下がりになっています。しかし、ヨーグルトは健康志向が高まっていることから伸びており、特に機能性ヨーグルトの割合が大きく、力を入れている乳業者が多い状況です。今後は、当社の機能性ヨーグルトである「11/19-B1乳酸菌ヨーグルト」のドリンクタイプや無糖タイプを発売しようと考えているところです。

 

 
更に、機能性ヨーグルトとしての科学的根拠を確立するため、昨年から福島産業応援ファンドの補助金を使用して福島県立医大での臨床試験を行っております。おいしさはもちろんですが、機能性も追求し、更に認知度を上げたいと思います。

 

 
酪農家の集会に参加させて頂いた際には、「『11/19-B1乳酸菌ヨーグルト』は福島の酪農再生のシンボルだ」とおっしゃって頂き、当社としては酪農家の協力を得ながら、より販売量や販売箇所の拡大を図っていき、風評払拭につながることを期待しております。4月11日からは東京の日本橋にある福島県の情報発信拠点「日本橋ふくしま館 MIDETTE」での販売を開始し、埼玉の森乳業㈱でも取り扱って頂くなど、他社の協力も得て販路を拡大しています。

 

 
──今年12月に創業50周年を迎えるに当たり、思いや今後の展望を。

 

 
今長谷 まずは酪農家や消費者、社員をはじめ多くの人に支えられて半世紀を迎えられることに感謝致します。利益を出すために経営基盤を確立させることで、地域に貢献し、次の50年に向けて今後も地元に根差した経営を行い、地元に愛され続ける企業を目指していきたいと思います。(聞き手・作間信裕)

 

 

 

■今長谷 浩代表取締役社長略歴

 

昭和33年7月15日、福岡県生まれ。九州大学農学部を卒業。JA全農酪農部次長から平成24年6月に現職へ就任。現在は本宮市に単身赴任中。趣味はランニング。

 

 

 

■企業 DATA

 

 

創立:昭和41年12月

 

所在地:本宮市荒井字下原14

 

事業内容:牛乳、乳製品の製造・販売

 

資本金:2億円

 

従業員数:76人

 

http://www.tk-holstein.com

 

 

(財界ふくしま2016年6月号掲載)

 

 

 

 

 


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