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あの味この味 区切り

2015年11月1日

有限会社カトウサインテック

ニッチな大型看板の製作に

特化させ、業績を拡大

 

 

加藤淳志 代表取締役

 

 

■供給が追い付かない大型看板需要

 

――まずは業務内容について伺います。

 

加藤 当社では、看板の設計から製作・取り付けを基本としています。主に看板を形作るフレーム製作が多く、板金や鉄骨、ステンレスといった堅い素材を加工し、ビルや店舗などに設置する数㍍から15、16㍍ぐらいのまで比較的大型の看板制作を手掛けています。また、営業エリアは福島市はもとより県内全域、東北、関東エリアと幅広く、県内と県外で大体1対1の割合で仕事を頂いています。

 

――県外受注のウエートが大きい理由は?

 

加藤 同業者は市内だけでも120社ほどあるのですが、我々のような大型の看板を製作するところが全国的にも珍しいからだと思います。この業界は、そもそも工場を持っていない個人事業者が多いのが特徴で、我々のように工場を構えて、金属の曲げ機械や溶接機などを使う金属加工に特化したところは少ないんです。工場を持っている同業者の中でも、市内では当社が一番設備が充実していると思います。もちろん他県にもそういったところはあるのですが、それだけでは供給が追い付かず、大型店舗から施工を依頼されることもありますね。

 

金属加工を始めたのは割りと最近のことで、私が家業に就いた平成9年ごろになります。当社は父(武夫氏)が昭和44年に設立したのが始まりで、私はその2代目になりますが、父の時は筆で文字を書く、昔ながらの手作業で製作を行っていました。

 

私は高校を卒業後、市内の同業者の方で3年間修業したあと、家業に就いたのですが、その時はバブル崩壊後の不景気真っ只中にありました。もちろん当社もその煽りを受けており、仕事も縮小傾向にあったわけです。大変苦しい経営環境にあり、私が家業に就いた時は父からも「同じことやっていても将来性はない」と言われましたね。そこで、考えたのが大型看板を製作するいまの会社です。

 

大型看板は現在、当社が東北から関東まで仕事を頂いているように、昔から一定の需要があります。ただ当時、同業者の中でそれらを手掛ける設備を持っていたのは、市内でも2、3社ほどしかおらず、そこに仕事が集中していました。需要は確かに存在するものの、供給が間に合っていなかったんです。ただその一方では、たとえ設備を導入しても毎回仕事が来るとは限りませんから、設備投資をしてまでやろうというところは、ほかにありませんでしたね。

 

そこで私はこの分野で勝負をしようと、銀行から融資を受けて設備を導入し、いままでの手作業から金属加工に特化した生産体制に移行することにしたんです。大変な決断になりましたけど、それからは極端なこと言えば自ら営業を掛けないまでも、自然と仕事量は増えていきましたね。

 

いままでは両親と私だけでやっていたのですが、それだけでは仕事が追い付かず、従業員も雇うようになりました。また、父の時代には市内がメーンだった営業エリアも、県内、東北、関東と次第に広がっていきました。

 

あと、現場の取り付け作業を増やしたことも営業拡大につながったと思います。

 

――取り付け作業を行うことは、業界内では珍しいことだったのでしょうか?

 

加藤 やらないというよりは出来ないんです。作業自体は専門的な技術を必要としませんが、体力仕事なものですから、若い時は出来ても年を取るに連れ次第にそれが難しくなっていきます。我々の業界は多くが個人事業者ですから、看板製作と取り付け作業を1人でやる方も多い。ですので、看板製作の職人が少なくなっている一方、それ以上に現場で作業する人材も少なくなってきているのが現状なんです。

 

顧客からしたら、せっかく作ってもらっても、そこからの取り付けはまた別の業者に頼まなくてはなりません。その意味では、製作から取り付けまで一貫していることは大きな強みだと思っています。

 

■人材の確保と技術の継承に注力する

 

――今後の経営目標を伺います。

 

加藤 バブル時とは別ですが、巷でたくさんの看板を見るように、我々の業界は常に一定した需要があり、あまり景気の波に左右されることはありません。良くいえば極端に需要が減ることもなく、悪くいえば現在の建設業のように急に増えたりすることもない。

 

ただ震災後、被害を受けた看板を新しく建て替える時に、顧客からは以前と同じ大きさではなく、縮小した形で建てて欲しいと依頼されることが多かった。建物であればどうしても元に戻さなくてはいけませんが、看板の場合は前より小さくてもいいだろうと。ですので、市場全体がそう変化しないことに加え、顧客のニーズが多様化していく中、当社でもいずれかの時期に工場の拡張や設備更新を進めていければと思っています。

 

また、それ以上に重要だと思っているのがやはり人材です。先ほども申し上げたように、いま業界内では高齢化が進んでおり、特に現場で取り付けをする作業員は50、60代が多い。幸い当社の従業員は若く、全員が製作と取り付け両方を出来ますが、将来的に彼らが現場に行けなくなった時のことを考え、若い人材を確保し、取り付け作業はその若い従業員にやってもらうなど、業務の分業化、効率化を進め、人材の確保や技術の継承に努めていきたいと思っています。

 

モノづくりの面から言えば、我々のような小さいところは、大手や中国をはじめとした海外と真っ向から勝負することは出来ません。ただモノを作って渡すのではなく、自ら企画を出して製作・取り付けを出来るような人材の育成に力を入れていきたいですね。

 

今後は更なる営業拡大を目指し、都市部に注力していきたいと考えています。仙台にも需要があるのですが、ここは業者も多いのですので、特に関東に注目しています。(聞き手・斎藤 翔)

 

 

 

 

■加藤淳志代表取締役略歴

 

昭和51年3月17日、福島市生まれ。県立福島高校を卒業後、市内の看板製作会社で3年間修業する。平成9年に家業に就き、16年から現職に。現在、市内で夫人、娘と3人暮らし。公職では福島商工会議所青年部副会長を務めている。

 

 

 

 

■企業 DATA

 

創業:昭和44年

 

所在地:福島市上鳥渡利字永作12-1

 

事業内容:看板の製作・設置・施工

 

資本金:300万円

 

従業員:3人

 

(財界ふくしま2015年11月号掲載)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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