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あの味この味 区切り

2014年12月1日

株式会社什一屋

故郷・富岡町への帰還を
目指し新天地で再起する

 

早川恒久代表取締役

 

■県外へ避難も再開の意思は消えず

 

――今年8月よりいわき市で新ホテル「サンラインズインいわき」を再開し、およそ3カ月が経過しました。まずは再開までの経緯を伺います。

 

早川 もともと、私たち什一屋は平成5年から富岡町で「サンライズインとみおか」を運営していました。富岡町は福島第一原発と第二原発の間に位置し、ホテルもJR富岡駅から約200㍍の高台にあって、原発関係のお客様を中心ににぎわっていたんです。

 

ですが、23年に東日本大震災とそれに伴う原発事故が発生し、富岡町は全町が避難区域に指定され、事業の継続が困難になりました。

 

震災当日はお昼過ぎでお客様も仕事に入っていたこともあって、館内にはほとんど人がいませんでした。ただ、夜勤のお客様がホテルに残っていたこともあり、すぐ避難誘導を行いました。あれだけ大きな地震だったので、うまくいかない部分もあったのですが、宿泊したお客様を外に出して安否の確認を行いました。当時は電気や水も動いていない状態で、お客様も知り合いの元に行こうとする方や、第一原発に入ったきり戻れなくなってしまった作業員の方などがいて本当に大変でしたね。

 

翌日の12日には第一原発で水素爆発が発生し、原発から3㌔圏内で避難指示が出されました。ただ、避難しようにも地震で交通機関がマヒしている状況で、身動きの取れない方が30人ほどホテルにいらっしゃったんです。既に満室の状態だったんですが、春先なのに気温も低い中で、困っている方を見過ごすことは出来ませんし、無料で泊まって頂くことになりました。私たちも避難指示の翌日には川内村に避難することなり、車をお持ちではないお客様もいらっしゃったので、私の車で一緒に避難しています。当時はガソリンも入ってこない状態でしたが、たまたま私の車には残っていました。

 

妻が千葉県出身だったこともあり、そちらに1カ月ほど避難していました。最初のころは「すぐに町に戻れるようになる」と思っていたのですが、時間が経つにつれ事故の状況が明らかになり、事の深刻さも痛感することになりました。富岡町のホテルも規模が大きいこともあって、それなりに借金もありましたし、営業の再開の目途も付かない状態で本当に不安でいっぱいでしたね。

 

それでも、何もしないのはダメですから、介護施設を経営している方から半年ほど事務などの仕事を紹介してもらうことになったんです。仕事の最中にも、営業損害や建物に関する賠償の話し合いを続け、再開に向けて動くことが出来るようになったのは震災から半年以上が経過したころですね。もちろん富岡町で再開したかったのですが、状況が状況なので2号店のような形で土地探しから始めることになったんです。

 

■再オープンまでの道のりは苦労の連続

 

――ホテルの候補地にいわき市を選んだ理由は?

 

早川 いわき市の宿泊業は震災による特需の影響もあり好調が続いており、原発関係の作業員の方が宿泊していたこともあって馴染みのお客様を獲得出来る期待がありました。ただ、いわき市は震災の影響で土地・建物の需要も逼迫していて、「サンライズインいわき」の場所を見付けるにも1年近く時間が掛かりました。この土地にしてもホテルの前は一軒家が建っていたほどの広さしかなかったので、富岡町のホテルを建てた業者に相談し、1階に駐車場を作り、フロントなどを2階に押し上げるなど工夫して必要な面積を確保しました。また、資金面でも賠償金はすべてこのホテルに投入し、足りない部分に関しては金融機関に相談したり、国のグループ補助金を活用するなどして何とか必要な額を集めることが出来ました。

 

当初は鉄筋コンクリート造りで見積もりを取り、いまより安い値段で進んでいたんですが、除染や復旧事業の余波あり、人件費や資材の価格が高騰して鉄骨造りに変更することになりました。それでも資材の高騰が続き、結局、見積もりよりも高い値段になってしまって、資金集めには本当に苦労させられましたね。震災前と比較して、鉄筋コンクリート造りのものを建てるより高くなったと思います。

 

――オープンから3カ月が経ちましたが、今後の課題と目標は?

 

早川 いわき市の宿泊施設が逼迫していることもあり、幸いなことにほぼ満室が続いています。震災後のいわき市の宿泊施設は法人関係の長期契約が盛況で、私たちにもホテル全館を使うようなお話が来ることもありました。ただ、ビジネスホテルとしてオープンしたことで、なるべく多くの方にご利用して頂くのが本分ですから、長期の方はなるべく入れないような形にして頂いています。

 

震災後のいわき市で営業して感じることは人口の変化ですね。30万都市といわれたいわき市ですが、双葉郡からの避難者に加えて、原発・除染関係の作業員が流入し、実際に滞在している人口は以前と比較にならないほど増加しています。渋滞や医療機関の混雑などもあり、もともといわき市にお住まいの方は大変迷惑な話でもあるとは思いますが、小売・サービス業の活性化など人口増が経済にプラスの影響を与えている面も無視出来ないと感じます。

 

現在は多くのお客様にご利用して頂いていることもあって、好調ではあるのですが、接客サービスに関しては徹底出来ていない部分があります。先々のことを考えればCSの向上は不可欠ですから、ほかのホテルに負けない接客サービスを構築していきたいですね。いわき市には全国チェーンのビジネスホテルや高級ホテル、旅館など様々な宿泊施設がありますから、殿様商売になってしまっては絶対にダメなんです。

 

ただ、サービス面では人手不足の影響も大きいですね。私たちもオープン前に予定の人数が集まらず、仕事の負担料が大きくなってしまいました。いまは予定の人員を確保し、従業員も仕事に慣れてくるこれからが勝負だと思っています。サービス業の人手不足は本当に深刻な状況にあるのですが、人材教育を怠らず、次のステップにつなげていけるようにしていきたいですね。いずれは富岡町でホテルを再開出来るよう頑張っていきます。(聞き手・丹野 育)

 

 

■早川恒久代表取締役略歴

 

昭和43年12月5日、双葉郡富岡町生まれ。専門学校東京スクール・オブ・ビジネスのホテル学科を卒業後、東京のホテルでの修業を経て、双葉町の同社に入社し、今年7月より現職に就任。現在はいわき市に単身赴任中。24年には富岡町議選に初当選し、総務常任委員会副委員長、議会報編集特別委員会などを務めている。座右の銘は「継続は力なり」。

 

■企業 DATA

 

設立:平成5年4月

 

所在地:いわき市平字十五町目20-3

 

事業内容:宿泊業

 

資本金:1,000万円

 

従業員:16人

 

http://www.sunrise-iwaki.com/

 

(財界ふくしま2014年12月号)


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