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あの味この味 区切り

2013年9月1日

有限会社高橋工業所

人材育成に力を入れ
事業拡大を図る

 

 

高橋拓美代表取締役

 

 

■企業立地補助金を活用し新工場を建設

 

――自動車などに使われているオイルシールの金型製造は、県内でも数少ない業種だと伺っています。

 

高橋 オイルシールとは潤滑油などの漏れや外部からの異物侵入を防ぐ装置のことで、当社ではお客様から要請を受けて手のひらサイズのものから、重機用の両手で抱えるほどの大きなものまで様々な種類のオイルシールの金型を手掛けています。

 

この金型を製品化するまでには、旋盤加工やフライス加工、熱処理、研磨といった様々な工程があり、多種多様な機械設備と熟練した技術力を必要とします。そのため、昔からこの分野に参入してくる企業は少なく、県内でも数社のみが行っている珍しい業種でもあります。

 

――県の「ふくしま産業復興企業立地補助金」を活用して新工場を建設するとのことですが、それに至った経緯をお聞かせください。

 

高橋 我々の仕事はオイルシールに特化した特殊な金型業ですので、震災やリーマンショックといった大きな波風はあまり影響を受けず、常に安定した需要を確保しています。ただ、数十年前に建てた現工場はキャパシティーが狭く生産体制に限りがあるため、依頼された仕事をうまく消化出来ず納期に遅れが生じているのが実情です。現在は従業員にお願いをして残業や休日出勤などで対応していますが、新たな工場を持たない限り抜本的な解決にはつながりません。

 

これは祖父の代から続いている問題で、20数年前にも新工場建設に向けて動いたことがありましたが、折しもバブル崩壊の時期と重なったため、計画を断念した経緯があります。そういった中、今回、地域経済の復興再生を目的とした「企業立地補助金」の制度を耳にし、申請することにしたんです。

 

――新工場はどれぐらいの規模になるのでしょうか。

 

高橋 昨年11月1日に福島市と立地協定を結び、佐倉西工業団地の土地にいまの2倍の広さを持つ第2工場を建設することが決まりました。1500坪のうち500坪を工場とし、残りは社員用の駐車場や大型トラックの積み込み場所として活用します。いまの工場から機材を半分ほど移すほか、加工能力が優れている「5軸加工機」などの大規模設備を新たに導入することで、生産性を向上させたいと考えています。今年8月に着工し、完成は来年の2月、操業は4月1日を予定しており、現在、新たな生産体制の構築に向けて準備を進めているところです。

 

また、操業に向けて新たに人材も必要になるため、今年4月には5人の新入社員を採用しました。来年度以降も毎年2人ずつ新規雇用していき、事業拡大に対応するとともに地域雇用にも貢献していきたいと考えています。
現状に甘えず新しい分野に挑戦する

 

――少子高齢化が急速に進む中、特に製造業においては職人の高齢化や後継者不足が問題となっています。

 

高橋 人材の育成については当社でもだいぶ力を入れているところで、私が家業に就いてからは毎年必ず若い人を採用するようにしています。いくら経営が苦しくても、これまで培ってきた技術力が失われる方がデメリットは大きいですからね。
 毎年入ってくる新入社員にはベテランの職人がマンツーマンで指導することで、技術の継承と連帯意識の強固を図っています。当社の社員は40、50代が空洞化しており、60代と20、30代が中心を占めているのですが、祖父と孫の関係に近いものがあっていい関係が築けていると思います。一人前の技術が身に付くには数年を要しますが、人材育成のシステムがうまく回っており、毎年優秀な社員が生まれ活躍しています。

 

また、いま精度の高い機械を導入し自動化を進めているところですが、この分野に関しては若手に一任し新しい技術の向上に取り組んでもらっているところです。繊細さを伴う工程では、どうしても職人の技術が必要になる時もありますが、彼らには出来るだけその技に頼らず、なるべく自分でまとめられる力を身に付けて欲しいと言っています。技術力を継承することも大事ですが、新しい技術を自分の力で磨き上げていくことも重要なんです。

 

――今年7月から電気料金が値上げされましたが、省エネや効率化にはどのような取り組みをされていますか?

 

高橋 今回の値上げは電気を使う製造業にとって大変厳しいものがあり、当社では東北電力から10数㌫値上げの通知が届いています。蛍光灯やクーラーなどの節電は当然しているのですが、機械設備の電力とは到底比べ物にはなりません。ただ機械を部分的に止めるわけにはいきませんので、時代と逆行しているかもしれませんが、いかに効率的にラインを決めて生産性を上げるかに腐心しています。

 

――今後の展望をお願います。

 

高橋 我々製造業は、常に〝海外製品〟との戦いに晒されています。当社の仕事は特殊ですので、いまのところ海外勢の進出はあまりないのですが、いずれその時が来ることは分かっています。安価な海外製品に対抗するには質の高い製品をしっかり納品出来る体制を築くことが重要です。当たり前のことですが「報・連・相」を徹底し、報告漏れ、加工漏れといったミスを出来るだけ少なくする。急な要請にもすぐに対応出来る体制づくりが今後求められてくるのだろうと思っています。

 

また、いずれ海外に仕事が流れてしまうこと考え、新しい分野への進出も視野に入れなければいけません。具体的には、今後伸びると言われている航空機や医療産業を考えています。現在の仕事とノウハウは全く別ですので一から勉強していかなければいけませんが、いまの設備と技術力を生かせればと考えています。もちろん、新規参入はハードルが高いことなのですが、そこまで考えていかないと会社を維持していくことすらも難しいですからね。

 

当社に入ってもらった従業員が定年まで安心して働ける環境をつくるためには、数十年先のことも考えなければいけません。いまの現状に甘えることなく、チャレンジすることで会社としても成長していきたいと思います。(聞き手・斎藤 翔)

 

 

高橋拓美代表取締役略歴

 

昭和46年12月15日、福島市生まれ。学法福島高校、函館大学商学部商学科を卒業後、三春町のフガク工機㈱に入社。2年ほど修業したあと、平成6年に家業に就いた。18年に専務取締役に就任し、昨年4月に現職に。現在、市内で娘と暮らしている。趣味はゴルフで、ホールデビューに向けて練習の日々を送っている。

 

 

■企業 DATA

 

創業:昭和32年11月

 

所在地:福島市泉字仲田8-7

 

事業内容:機械器具及び金型製造加工

 

資本金:1,000万円

 

従業員数:27人

 

(財界ふくしま2013年9月号掲載)

 


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