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あの味この味 区切り

2012年7月1日

有限会社渡辺宗太商店

会津のおいしい酒を消費者目線で紹介していく 

 

渡辺宗喜代表取締役

 

■卸流通業界を先読みして個性的な酒販専門店に

 

――創業の経緯からお願いします。

 

渡辺 会社組織にしたのが昭和28年になりますが、商売を始めたのは大正元年だと聞いています。私は3代目で、創業者は会社名と同じ渡辺宗太です。戦前はお菓子の製造・卸で、戦後は問屋をしていました。

 

私は高校を卒業してから40年以上働いてきましたが、現在のようなお酒の専門店になるとは、当時、夢にも思っていなかったです。昔は酒、たばこ、塩は免許制でしたからね。

 

――現在のような地酒専門店の構想は、いつごろから練り始めましたか。

 

渡辺 構想自体はかなり前からです。12年前の(会津若松駅前周辺の)区画整理を機に、現在の業態を具体化させました。店舗は古民家の移築ですが、その建物も20年以上前に譲ってもらえるように約束していたものです。
新しい商売の切り口は「会津へのこだわり」です。コンビニやスーパーと競争してもかないません。そこで、「県外からお金を集めて地元会津に支払う」というコンセプトを考えたのです。以前の卸は、会津からお金を集めて仕入れ先に支払う、つまり集めたお金は県外に行ってしまいます。そこで、地元会津にこだわりながら良い商品をそろえてインターネットや観光客に買って頂く。そうなれば、多少なりとも地元への貢献になります。それが基本です。

 

もちろん、コンビニ、スーパーにも地元のお酒が置いてあります。しかし、大手の流通業は商品の知名度で取り扱います。皆さんよく知っている商品を安く提供します。それで、また知名度が上がります。ですから、しっかりと商品を作っていても小さな蔵元はなかなか有名にはなりません。商品を販売するにも、お客さんに試飲を含め丁寧に説明をしなければいけません。良いものをお客さんに満足して頂ける価格で販売する、そして喜んで頂く。

 

ですから、当店では大手メーカー製の全国流通しているようなビール、甲類焼酎、ウイスキーは販売しない。会津は蔵元がたくさんある全国でも特異な地域です。これだけ蔵元があって地元が潤う、それが理想でしょう。

 

■蔵元と一体になり、より良い商品を消費者に

 

――蔵元との連携も大切です。

 

渡辺 蔵元には具体的な提案もしています。もともと、私はお酒が大好きなので、卸業をやっていたころも蔵元を回るのも好きでした。そこで、いろいろとお話をしてきたのですが、お話やアイデアを出すと蔵元もいろいろと考えるようになります。それをずっと続けてきたので、小さな蔵元でも立派な商品が出てくるようになりました。それから、蔵元には「商品を置くところも選んだ方がいい」とお話しています。商品を置きたいというお店、飲み屋さんに行ってみる。管理をしっかりとしているか、お店の経営者と直接お話をし、お店のポリシーがしっかりしているかを確認する。せっかく伸びてきた蔵元があっても、管理が悪いお店で買ったお客さんが飲んでみたら「この程度の酒か」となってしまいます。そうなるとその商品の信用が落ちてしまいます。しっかりと販売、提供してくれるお店に置くことで量が少なく希少価値のある大変良い商品となります。最初から素晴らしいものはなく、素晴らしい商品にしていくのです。卸業を40年やってきましたので商品をどのようにすれば売れるのかは、経験で学んでいます。その経験も蔵元にもざっくばらんにお話しています。

 

――会津の地酒自体は評価が高いです。

 

渡辺 会津坂下町に大変有名になった蔵元がありますが、それは、東京で有名になって地元でも有名になった通称ブーメラン現象と呼ばれるものです。ブレークはテレビの影響だと思います。ダメになりそうな蔵元を跡継ぎが頑張って立て直す。お酒の銘柄だけで跡継ぎがひたむきに作るお酒だというストーリーも出来る。

 

しかし、蔵元にもいろいろあります。売れないころからお付き合いをして、ようやく会津を代表する蔵元になったところもあります。そちらは20年前ぐらい前からお話をしていますが、東京で有名になるブーメラン現象を狙うよりも、地元の人に認めてもらう商品を作るように伝えてきました。10のうち8割方を地元で消費してもらい、2割程度を東京で販売する。そうすると、仮にブレークし、ブレークが終わってしまっても地元でしっかりと売れていれば会社としては安定してくるでしょう。地元で定着すれば銘柄の知名度も上がり、その銘柄を置いていること自体で飲み屋さんのグレードが上がるような商品が出来れば、蔵元も最高でしょう。

 

また、なくなっていく蔵元も減ってきました。会津には蔵元がたくさんありますが、ほとんどで跡継ぎがしっかりと決まっていることもあるかもしれません。そのお陰か会津のお酒のレベルも高くなっています。とはいっても、一気に売れなくてもいいと思います。毎年少しだけ伸びていくのが理想でしょう。一気に売れると反動もすごい。自然にじわりと伸びたものはそう簡単には崩れません。

 

――一方、たくさんあったお酒専門の小売店は、会津でも数軒になってしまいました。

 

渡辺 免許に守られていたからです。小泉改革で規制緩和があり、いまではスーパーやコンビニでもお酒を売っています。ですから、免許だけで工夫なしでやってきたところはあっという間に淘汰されました。規制緩和もいろいろと問題があると思いますが、私の場合は良かったです。

 

ただし、規制緩和だけではないのです。昭和40年ごろから安売り店の進出、流通業界も変わってきたので、そのころからいま起きていることは予測出来ることだった思います。当時は私もいろいろな商品を扱っていましたが、たまたま私はお酒が大好きなのでお酒専門にする。そうすれば、お客さんの目線で商売が出来ます。自分の金儲けに専念すると一時は良くても長続きはしない。商人は人の役に立ってこそご飯を食べていけます。ですから、信用第一で本物を良心的に販売していく。これを基本に、今後もお店を続けていきたいと思います。

(聞き手・磯貝 太)

 

 

渡辺宗喜代表取締役略歴

 

昭和22年2月1日、会津若松市生まれ。若松商業高校を卒業後、同社に入社し、60年4月から現職に。趣味は健康管理も兼ねたサイクリング。休みの日は1日60㌔以上走行する。お酒が大好きで、お客と一緒に試飲する「飲みニケーション」も楽しみにしているとのこと。

 

企業 DATA 

設立:昭和28年(創業:大正元年)
所在地:会津若松市白虎町1
事業内容:会津の地酒販売
資本金:300万円
従業員:4人
http://www.hechima.co.jp/~souta/

(財界ふくしま2012年7月号掲載)


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